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菊池貞二 菊地貞二ニュース 2002年8月4日発行
第171号

 

杉並区は条例を制定し個人情報保護へ
総背番号制で国民を国家管理
 施行予定の8月5日を前に、個人情報保護法制が未整備のままでは、情報漏えい、プライバシー侵害の危険があるとして、実施凍結を求める声が広がっています。「朝日」の世論調査(22日付)によると、76%が稼働の延期を望んでいます。

住民基本台帳ネットワークの問題点は?

 住民基本台帳ネットワークの実施の是非が論議されています。品川区でも明日(8月5日)から業務が開始されますが、いくつかの自治体では、個人情報漏洩の危険があるとして開始を遅らせるなどの決定をしています。

杉並区のホームページでは、住基ネットに対する疑問符が掲載されています。(一部抜粋)

 8月5日から、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が稼働する予定です。
 国は、「住基ネット」には住民負担の軽減や行政サービスの向上等のメリットがあると説明しています。これに対しては運用上、技術上、法制度上、万全のプライバシー保護措置が講じられないまま稼働することは問題であり、稼働を凍結・延期すべきであるとの指摘もなされています。
 杉並区では、このような状況の中で今後どうすべきかを検討するための参考として、杉並区公式ホームページ上でも区民のみなさんの意見をお伺いすることにいたしました。

 すべての国民に11桁のコード番号を付け、氏名、住所、性別、生年月日の四つの個人識別情報とその変更情報を、総務大臣指定の「指定情報処理機関」が一元管理する住民基本台帳ネットワークシステムが、個人情報保護が未整備なために、8月実施の中止・凍結を求められています。

長野県でも「住民基本台帳法に基づく本人確認情報の保護に関する条例案」

 このシステムは住民票の広域発行や国・自治体への申請手続き簡素化に役立つなどとされますが、「指定情報処理機関」の情報が国に提供されるため、全国民の個人情報が国に管理されます。国家による個人の全人格的管理につながるとの、ドイツの違憲判決もある制度です。
 また・・・
■個々の自治体で管理していた情報が全国的オンライン化で広範囲からアクセス可能となり、情報流出・漏えいの危険もいっそう高まる。
■現在、日本には、すべての国民に番号をつけて管理する総背番号制導入への、国民の合意もない。
■自己の個人情報をコントロールする権利も未確立。自分の個人情報の開示請求権や違法な情報利用の中止請求権、不服申し立て手続きなどが未整備では、行政の一方的な情報利用になすすべもない。
・・・など大きな問題をかかえています。
 そのためシステムを導入する住民基本台帳法「改正」案の審議では、当時の小渕首相が、実施には「個人情報保護の法整備が前提」と答え、同法に「個人情報の保護に万全を期するため、所要の措置を講ずる」との条項を加えました。

改悪された医療制度や住基ネットでも公約を投げ捨てる公明党

 ところが、今国会で政府が提出した個人情報保護法案は、かんじんの行政が個人情報を目的外に使うことに罰則がないなど極めて不十分で、逆に報道機関などを規制対象にし言論・表現の自由を侵すなど、個人情報の保護法の名に値しません。本当に個人のプライバシーを守る実効ある個人情報保護法制がない段階では、住基ネットは凍結するほかありません。
 小泉内閣は、導入を決めた1999年の住民基本台帳法「改正」の審議のときの「個人情報保護の法整備が前提」という小渕首相(当時)の答弁を投げ捨て、8月5日実施の方針に固執。これを後押ししているのが、当時「個人情報保護が前提」と繰り返し公約していた公明党です。
 当時、政権与党入りを前に“なんでも賛成”の立場に転じた公明党は、「個人情報保護の法整備が前提」という首相答弁などを条件に、与党とともに住基法「改正」を強行。住基ネットは「包括的な個人情報保護法が制定されるまでは動きません」などと大宣伝しました。
 ところが、今国会で個人情報保護法案の成立が困難となるやいなや、「政府は従来から、個人情報保護法案の提出は政府の責任でやる必要があるが、住基ネットの施行と個人情報保護法の成立までがセットではないとの考え方に立っている」(神崎武法代表、公明新聞7月4日付)と政府の立場を擁護。「個人情報保護法案が成立するしないを問わず、住基ネットは予定通り実施するのが基本だ」とこれまでの態度をひょう変させました。
 自民党内からさえ凍結論が出るなかで、実施強行に固執する突出ぶりです。