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菊池貞二 菊地貞二ニュース 2005年10月30日発行
第289号

 

公的責任を放棄し「小さな自治体」へ
民間企業に市場開放

地方自治法の改正により指定管理者制度が導入され、住宅やお年寄りの施設、子どもの施設や文化センター、など等、すべての管理について民間企業まで参入が可能となりました。

条例改正に反対した3つの理由
不安の残る指定管理者制度

私が今回の条例改正で反対を表明したのは、これまで業務委託のみをおこなっていた区民・区営住宅を、管理から運営までのすべてを指定管理者(株式会社)に委任をするというものですが、多くの問題点をかかえています。

指定管理者に三井不動産

第一に、株式会社が参入する問題です。

区営住宅は、住宅に困窮する区民に住まいを提供し、必要最低限の生活を営むことが出来るよう設置されたものです。その公的住宅の管理運営のすべてを株式会社に委託することは、公的責任を放棄することにつながります。

株式会社は、手をつけるひとつひとつの事業において、いかに利潤を生み出すかが最大の目的です。建設委員会の質疑のなかでも「努力をしてがんばって収入があがったというのであれば、委託料のなかに反映できる仕組みを考えていきたい」と答弁がありました。

参入企業がいかに少ない人員で管理運営業務をおこなえるか、あるいは低賃金で労働力を確保し、結果としていかに居住者サービスを削減するか、また、修繕に関わる企業は、指定管理者の息のかかった事業者に集中をさせるなどしない限りは、利潤を生み出すことが出来ないはずです。まして、区民住宅の指定管理者に予定をされている三井不動産は、区内の再開発事業で補助金を受け莫大な利益を上げ、単独開発では近隣の居住環境を悪化させるなど、公的住宅の管理運営にもっともふさわしくない企業といえます。

官・民癒着の温床へ

 第二に、選定委員会の不透明さがあります。

指定管理者選定委員会は、まちづくり事業部長を委員長とし、数名の課長によって構成されるとしています。また質疑のなかで、利用者、学識経験者、議員などが委員会の一員になることは今後の課題だとしています。しかし、行政改革特別委員会に指定管理者の選定に関する考え方、候補となる企業・団体は、9月1日の時点で示されています。十分な検討期間がありながら本条例案と直結する指定管理者選定に関わる体制が検討課題とするのは理解できません。

戦後、国や地方自治体で生まれた数々の汚職と腐敗の政治は、官・民の癒着によって生み出されたものです。

足立区の保養所汚職事件では、運営業者の選定基準を漏らした元足立区地域振興部長が、業者の選定方法を競争入札からプロポーザル方式に変更したことについて、選定実績のない企業を土俵に乗せるためであったと証言しました。

区民住宅の管理運営をおこなっている三井不動産およびベニーエステートはプロポーザル方式によって選定され業務委託をおこなっています。答弁のように事業部のみで指定管理者を選定することは、企業との癒着を生み出す温床ともなりかねません。利用者をはじめとする区民参加があってこそ必要な論議のもとに透明性が確保できるものだと考えます。

情報公開が大きな課題

第三に、情報公開の問題です。

指定管理者がおこなう事業内容は、日々の管理日誌から苦情に関するものまで公的住宅の管理に関わるすべてが公開されなくてはなりません。

建設委員会の質疑では「行政情報なので当然公開出来る」との答弁でした。しかし、先の決算委員会総括質疑で明らかとなったように、区が持つ情報を議会に示すことさえ拒むという異常な情報隠しがおこなわれているではありませんか。まして民間企業のノウハウだといって、必要最低限の情報さえ区民や議会にも示さない、区も指定管理者に情報を要求しないという事態が生まれてくることは容易に想定されます。また、アルゼンチン債問題でも議会質問に答弁を拒否するなど情報をひたかくしにする隠蔽体質です。

区民が必要とする日々の情報を指定管理者に提出するよう求め、請求に応じてすべてを開示することなしに管理運営を民間企業に委託することはできません。