侵略戦争を正当化の｢つくる会｣教科書
子どもに押し付けるな

品川区教育委員会は今月19日、来年から使用する中学生の歴史と公民の教科書を決定します。文部科学省はかつての侵略戦争を｢正しい戦争だった｣と教える｢新しい歴史教科書をつくる会｣の教科書を検定に合格させました。しかし、こんな教科書を子どもたちに押し付けてはなりません。

侵略戦争を美化する教科書は「新しい歴史教科書をつくる会」メンバー執筆による扶桑社発行の中学校の歴史教科書。最大の問題点は日本による東南アジアへの侵略戦争を｢アジアの解放｣だったと事実をあべこべに描いていることです。特に象徴的な二つの記述を紹介します。

（1）｢米･英･中･蘭の４カ国が日本を経済的に追い詰め、追い詰められた日本が戦争に打って出た｣、「日本は米英に宣戦布告し、この戦争は『自存自衛』のための戦争であると宣言した」

（2）｢日本の緒戦の勝利は、東南アジアやインドの人々に独立への夢と勇気を育んだ｣

これらの記述は、欧米に替わって日本が東南アジアを植民地支配するという戦争の狙いを隠し、日本の自衛の戦争だったと主張しているのです。

結局、同会の歴史教科書は日本の侵略と加害の事実に目をふさぎ、｢日本は正しい戦争をした｣という論調で塗り固められており、侵略戦争への反省はかけらも見ることはできません。かつての侵略戦争を合理化するとともに戦争への反省そのものを否定する教科書といわなければなりません。さらに、同会の公民教科書は改憲論を強調する内容が目立っており、戦争のない平和な日本と世界を求める人類への挑戦です。文部科学省がこんな教科書を検定に合格させたことは大問題です。

つくる会が｢現教科書は敵国のプロパガンダ｣と攻撃

新しい歴史教科書をつくる会は、設立総会の趣意書で

と述べています。

世界から相手にされない日本になってしまう…

中国１千万人、朝鮮20万人、台湾３万人、ベトナム２百万人、インドネシア４百万人、フィリピン１１１万人…など、日本の侵略戦争によりアジア諸国に与えた犠牲者数は｢つくる会｣の歴史教科書には記載されていません。原爆による広島14万人、長崎７万人の犠牲者数の記載さえないのです。

かつての戦争を正しい戦争だったと思い込まされたら、日本の子どもたちは世界中から相手にされなくなるのではないでしょうか。｢つくる会｣教科書を子どもたちへの押し付けは許されません。

さらに問題なのは、こうした教科書を子どもたちに押し付けようとしている勢力が憲法９条改悪と小泉首相の靖国神社参拝を後押ししていることです。侵略戦争で被害を受けたアジア諸国が反発するのは当然です。中国や韓国で反日デモ相次ぎました。いかなる理由があっても大使館や民間企業への襲撃は正当化できませんが、そうした背景に｢日本の軍国主義復活の動き｣に対する不安と反発が広がっていることを、私たちは見逃してはなりません。