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生活安全条例に関して「非常勤職員の報酬および費用弁償に関する条例の一部を改正する条例」の反対討論

南恵子議員(共産党)

私は、日本共産党品川区議団を代表して、第39号議案「非常勤職員の報酬および費用弁償に関する条例の一部を改正する条例」の委員長報告に対し反対する立場から討論を行ないます。

本条例は、生活安全条例および歩行喫煙および吸い殻・空き缶等の投げ捨ての防止に関する条例の趣旨を具体化するというために、警察OBを生活安全指導員として採用します。報酬は月額27万円、一日8時間で二交代、月16日勤務、仕事内容は防犯活動に関する相談・パトロール、歩行喫煙に対する過料処分の執行などです。

区は、区民生活事業部のなかに生活安全担当課長と係長を配置し、生活安全に関わるものは地域巡回と地域センターでの防犯等の相談業務、ポイ捨てに関する事務は歩行喫煙とポイ捨ての取締りを実施します。

6年前、いわゆるポイ捨て条例を制定しましたが、ポイ捨てをなくし、きれいな町にしていくとすくなくとも昨年までは説明していました。ところが、今年の10月1日から過料徴収をすると区の姿勢を変更しました。その理由は、区民から投書や要望が多く出てきたからといいます。また、生活安全に関する問題も犯罪の多発で緊急課題だとして、年度途中の10月から警察から課長職を派遣し生活安全推進課長職を設置しました。この点で問題を指摘します。

まず第一は、防犯・取り締まりは警察の仕事そのものなのに自治体の中に警察の仕事を持ち込み、警察主導の事業とすることです。

区はこれまで、「区民のモラルに訴え厳しい対応をしなくてもすむものならそういう形でやりたい」と繰り返し説明してきました。今回、警察OBを採用してパトロールに当たらせることは、自治体の仕事を超えるもので、警察主導にならざるを得ません。地域センターで警察OBが防犯相談を受ける体制にするといいますが、町の中に点在している交番に警官を配置して地域住民が気軽に相談にいけるように改善を求めることこそ急務です。

区がやるべきことは警察の人事権・指揮権を握っている国に求めるべきです。

第二は、監視社会への誘いとなる点です。

区はパトロール中のさまざまな問題に対処できるように過料徴収基準を作成しました。しかし、この内容をみると、「氏名・年齢を名乗らず処分を拒否した場合・・・相手の人相(一見何々風など)年齢、着衣、特徴、性別、立ち去り方向などを記載し、以後の取締りの参考資料とする」などとかかれています。行政がここまで住民の特徴を記録したり、参考資料として蓄積する必要があるのでしょうか。住民を監視するものであり自治体のあり方を根本から変えてしまうのではないかと重大な危惧を抱きます。

94年の警察法「改正」で生活安全局が新設されました。これによって住民が住民を監視する社会体制をつくる一歩になりました。それ以降、警察と防犯協会による自治体への働きかけが強まり「生活安全条例」を制定する自治体が増えました。品川区もその流れの中で制定したものです。

たしかに、今日の犯罪の凶悪さは深刻なだけに、大切な子どもを守るための自衛手段としてPTAが地域を巡回しています。安心安全な暮らしを求める声は当然であり早急な対策が求められます。

もともとある警察の組織と防犯協会の連携の下で防犯対策を進めるべきです。区は、新しい仕事を立ち上げるときのノウハウとして必要だから警察OBを採用したといいます。しかし、区民生活に密着している保育園や学童保育クラブ廃止で職員を削減する一方で、突然、長期基本計画にもない部署を新設し警察行政を区役所に持ち込むのは自治体として逸脱にならないでしょうか。質疑のなかで他会派からも「行き過ぎではないか」との意見が出されたことも紹介します。

しかし、一方で、住民基本台帳ネットワークサービスの開始で個人情報やプライバシー保護を求める住民意識も大きく高まっています。プライバシー侵害に対する住民の不安感は、同時に監視社会になる危険性に対する不安感でもあります。2002年2月に、新宿歌舞伎町に50台もの防犯カメラが付き、24時間通行者をチェックするようになりましたが、カメラの設置で本当に犯罪が防げるのかという疑問が出されています。設置当初は犯罪の発生は減ったものの、今年の8月には設置以前よりも増加しています。犯罪捜査能力の衰退や、モニター側の恣意的な運用の危険も先進国では出ているといいます。

犯罪は不況などの経済情勢や社会的不安と深いかかわりがあります。1980年代以降の失業率と犯罪率を比較した場合、失業率の低いときは犯罪率も低く、失業率が高くなれば犯罪率も上昇することが判明しています。不況が深刻になってきた90年代をみても失業率と犯罪率は過去20年の間でもっとも高い水準です。不況など社会不安の解消こそ最優先で解決を図るべきだということを強調して反対討論を終わります。

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