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安藤たい作区議 第1回定例会
「請願第6号リニア新幹線の中止を求める請願」への賛成討論

2022.03.25 安藤たい作区議

 日本共産党品川区議団を代表して、請願第6号、リニア新幹線の中止を求める請願への賛成討論を行います。
本請願は、区に対し、リニア中央新幹線事業の中止の決断を行うようJR東海と国に求めるとともに、町域毎の教室型説明会を開くよう求めるものです。

 リニア新幹線は、北品川から戸越公園の下を通り旗の台まで区内4.6キロメートルの地下を直径14メートルのトンネルが貫くもの。2000(H12)年に作られた大深度地下法に基づき、国が2011(H23)年に整備計画を決定しました。2016(H28)年4月に北品川非常出口と変電施設の工事が着工され、2018(H30)年10月には第一首都圏トンネル36.9キロ区間の大深度地下使用が認可。しかし、本掘進に入る直前の2020(R2)年10月、東京外環道のトンネル工事により調布市の住宅地で陥没事故が発生。リニアと同じ大深度地下法に基づくシールドマシン工法、全く同じ工事で起きた事故により、リニアも本掘進に入ることができなくなりました。しかしJR東海は、事故を受け説明会を昨年6月一回開いたのみで「理解してもらった」と強弁し、8月下旬の工事説明会を経て、10月14日からは調査掘進の開始を強行しました。調査掘進と言いますが、JR東海の資料にはその範囲について「シールドマシンの後ろに繋ぐ一連の設備を納める横坑」と説明しており、本質は調査が主眼ではなく、本掘進のための準備そのものです。
以下、請願に賛成の理由を3点述べます。

 1点目は、陥没事故の危険があることです。

 東京地裁は2月28日、外環道トンネル掘削工事の一部区間の差し止めを命じる決定を行いました。事業者が地盤補修範囲をトンネル直上だけと限る中、決定は、トンネルの真上でない住民についても地盤の緩み、空洞、陥没の危険があることを認め、「差し止めを認めるのを相当とする違法性が認められる」と判断しました。決定を受け、訴訟弁護団は「リニア新幹線トンネル工事差止訴訟にも影響を与えることは必至」とコメント。重く受け止めるべきです。

 大深度地下法は「通常使用しない空間だから」「大深度地下だから」との理由で権利を「調整」し、地権者の同意も補償もなしに工事による土地使用を認めるものです。地上への影響を与えないことが大前提の法律でした。事実、外環道では、事業者であるネクスコ東日本と国交省は住民へ「トンネル工事はシールド工法を採用しており、地上への影響は生じないと考えている」と説明していました。が、陥没が起こり、シールドマシンが通過する前後にすでに住民からは振動や騒音、低周波など、様々な苦情があがっていました。そして事故が起こりました。実際には地上に大きな影響があったのです。

 リニアにおいてもそれは同様です。JR東海は「地上へは影響ない」と説明し続け、陥没事故を受けこれまでやるとは言わなかった調査掘進や家屋調査の実施を決めた。そのこと自体が地上へどんな影響があるか分からないと認めるものです。

 前提が崩れた悪法・大深度地下法は廃止すべきであり、それに基づく認可を受けたリニア新幹線の危険性は明らかで、中止すべきです。

 いま、陥没事故が起こった調布の地域住民はどんな状況におかれているか。地盤の緩みや地表の家屋の損傷が今も進行。事業者であるネクスコ東日本は地域住民の集団交渉を拒否し、その意向を無視し、自らの都合で住宅の立ち退きを強いて地盤補修工事を強行しようとするなど、街壊しが一層進行しています。事故により安心な平穏な暮らしは一瞬にして奪われたのです。品川で行われるリニア新幹線工事も、全く同じ工法、同じ住宅地の真下での工事であり、当然他人事ではありません。JR東海も品川区も、何の根拠もなく事故は起きないと説明を繰り返すのはやめるべきです。議会の責任も問われています。その点、請願審査における自民党の「国が許可をして民間が進めている事業というのがまず第一」、公明党の「安全神話という言葉はあるが、絶対に無事故で、事故を起こさないのだとの不断の努力で勝ち取るもの」、自・無の「国から許可がおろされた事業。安全性、工事に対するしっかりとした認識ができていると考えた」などの発言は、何の根拠もなく安全だと決めつけるものです。万が一、事故が起きた場合、一体どうやって責任を取るのでしょうか。あまりに無責任です。

 2点目は、そもそもリニア新幹線は必要性がなく、やめるべき事業だという点です。

 区は請願審査でリニア新幹線の目的について東海道新幹線の経年劣化、将来の地震災害に備えた対策だと述べましたが、大半が地下でいざという時の避難にも大きな障害があり、かつ無数の活断層を貫くリニアがどうして地震対策になるのか。東海道新幹線の耐震化など老朽化対策こそ進めるべきです。

 そもそもリニアは、単独では採算が取れないとJR東海自身も認めていました。その上、コロナ禍がJR東海の収益悪化に影響し、総工事費は1.52兆円増額され7.04兆円に。事業を継続させればさらに膨張することは避けられず、既に投入された3兆円の財政投融資の償還さえ危うい事態に直面しています。

 進める必要性がない上、環境負荷など問題は山積み。南アルプストンネル工事により、現状でも渇水が頻発する大井川の水量が激減し流域住民の命の水が奪われます。建設残土は5680万msに及び、昨年7月に熱海市で起きた産廃残土盛り土の土石流5万m2の1000倍に相当、まだ3割以上の行先が決まっていません。新たに新幹線の4倍の電力を消費するリニアを整備することは、温暖化対策にも逆行します。

 以上の点から、必要性もなくかつてない環境破壊を招くリニア新幹線事業は中止を決断させるべきなのです。
3点目は、住民への説明についてです。

 外環道・陥没事故を受け、JR東海が開いた説明会は、6月8日の「シールドトンネルにおける安全・安心等の取組みに関する説明会」1回のみで、JR東海は8月末に工事を進めるための工事説明会を行い調査掘進に入りました。6月の説明会は、品川・大田・世田谷の3区の全区民が対象にも関わらず、会場はきゅりあん一カ所、参加者は合計で300人余りに過ぎませんでした。しかも、多くの質問者がまだ手を挙げているにも関わらず説明会は打ち切られました。しかし参加した区の評価は「コロナの制約があり、その中でJR東海は時間を延長して、精いっぱいやったと見ていた」というもの。あまりに露骨なJR東海擁護姿勢です。今後の区民生活に大きな影響を与えかねない事業であり、ルート直上でもまだまだ知らない人もたくさんいます。しかも、今後の説明についても、パネル展示で個々の問い合わせに対応するオープンハウス型説明会のみで済ませようとしてます。これは羽田新ルートで取られた手法で、住民同士の意見交流を避け、反対世論が広がることを抑えるための手法です。町域ごとの教室型説明会の開催の要望は、当該地域の町会長からも説明に来たJR東海にも直接出されており、この声を真摯に受け止め、オープンハウス型だけでなく、地域毎の教室型説明会の開催を要請するのは当然区がやるべきことです。

 以上が請願に賛成の理由です。本掘進の前の今こそ、中止を決断すべきです。議会は1800人を超えて寄せられたこの区民の願いに寄り添うべきです。議場の皆さんにも賛成を呼びかけまして、討論を終わります。

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