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安藤たい作が賛成討論を行いました
「適格請求書等保存方式(インボイス制度)で新たな負担を受ける事業者に対して区独自の支援策を求める陳情」に対する賛成討論

2023.10.24 安藤たい作 区議

  日本共産党品川区議団を代表して、陳情第35号、適格請求書等保存方式(インボイス制度)で新たな負担を受ける事業者に対して区独自の支援策を求める陳情に対する賛成討論を行います。

 本陳情は、10月から実施されたインボイス制度により新たに税負担、事務負担を受ける品川区内の小規模事業者に対して、品川区が小規模事業者の負担軽減につながる独自の支援策を講じることを要望するものです。

 インボイスとは、事業者間で消費税が課税される商品やサービスの取引をした際に品物などを販売した側の業者が発行する請求書のことで、これがないと課税業者は消費税を納める際に仕入れにかかった消費税を納税額から引くことができなくなります。一方、課税業者でない売上げ年間1,000万円以下の免税事業者は、インボイスによって選びようのない2択を迫られることになります。インボイスに登録せず、インボイスを発行してくれない事業者と見られれば、事実上、取引から排除されることになります。

 では、登録したらどうなるか。売上げが1,000万円にも満たないのに消費税10%を支払う課税業者になることになります。財務省の試算では、インボイス導入で新たに納税業者となる事業者の平均年間課税売上げは550万円で、平均年収は154万円。こうした方々から15万円もの消費税を新たに徴収する極めて弱い者いじめの税制、応能負担・生計費非課税の税の原則を一層踏みにじるのがインボイスという制度なのです。

 また、新たに課税業者になるのは、個人、法人合わせて161万者とされ、合計2,480億円の増税になると試算。しかも、この試算にフリーランスは含まれておりません。実際は雇用契約によらずにフリーランスの形で働く人も広く対象となるため、総数は1,000万人前後になるとも言われています。

 その影響業者は、皆さんの周りでもすぐに思い浮かぶ身近で幅広い業種に及びます。いわゆる事業者では、飲食店、町工場、理美容店、一人親方の大工、社労士、個人タクシー、貨物配送業、貸店舗経営者など、フリーランスで言えば、フードデリバリー、漫画家、イラストレーター、フリーライター、画家、俳優、塾講師、インストラクター、バーのホストやホステス、ヤクルト配達員、電気・ガスの検針員などです。こうした方々がインボイスによって廃業覚悟に登録して新たに重い消費税を支払うか、登録せずに仕事を切られ廃業に追い込まれるかの地獄の2択に追い込まれている可能性があります。

 なお、一部に、消費税は預かり金だから払うのは当たり前、免税業者が消費税を納めていないのはピンはねではないかとの主張がありますが、裁判の判決でも、財務省自身の国会答弁でも、消費税は預かり金ではないと答弁があり、決着はついています。免税業者である小規模事業者は、取引先との関係では、大手業者との競争があり、値引き販売をせざるを得ず、お客さんとの関係では、増税分を価格に転嫁できません。身銭を切っているのが実態です。消費税は預かり金ではなく対価の一部です。公認会計士、税理士であり、品川区の監査委員も務めている森井じゅんさんはじめ、多くの税の専門家が説明しているとおりです。

 政府は、食料品などの軽減税率の導入を口実に、仕入れの税率が複数になったので正確な控除額の計算のためには必要だと、インボイスを導入しました。しかし、インボイスは、もともと中曽根売上税で、国民の批判を受け廃案となった仕組みでした。そのため、竹下消費税は、インボイス方式を導入できず、現在の帳簿方式で消費税を強行しました。

 財務省、政府税調は、税率引上げを視野に入れて、消費税の導入直後からインボイス制度に執着していました。インボイス導入の第一の目的は、今後の消費税率をヨーロッパ並みの20%まで引き上げるためです。税率を上げるためには、今回の8%のように、さらなる複数税率をつくってごまかそうとするでしょうし、そうなれば、複雑化する納税額の計算のためにインボイスも必要となってきます。つまり、インボイスは、岸田政権が狙うさらなる消費税率アップのために必要不可欠な地ならしなのです。

 異常な物価高騰の今、必要なのは消費税の5%への緊急減税です。5%に戻せば、軽減税率もなくなるので、インボイス導入の口実もなくなります。そもそも消費税は、増税分を価格に転嫁できない小規模事業者に身銭を切った納税を迫る営業破壊税です。社会保障のためと言いながら、法人税や資産家の所得税の穴埋めに消えていきました。自公政権の下、社会保障は充実されるどころか、ここ10年間だけで年金削減や生活保護の削減など6兆円もの改悪も行われてきました。消費税は社会保障のためというのはごまかしです。消費税の5%への減税と併せて、インボイスは中止すべきです。

 以上の点を踏まえ、最後に賛成理由を具体的に2点述べます。

 1点目は、区は、インボイスで打撃を受ける区内の中小零細事業者とフリーランスの皆さんの暮らしとなりわいを守るべきだからです。区内のあるイラストレーターの方にお話を聞きました。この方はインボイスの登録を見送りました。10月末に支払い予定の仕事の話があったが、10月に入り、プロダクションとの連絡が取れなくなった。先方が倒産してしまったか、仕事を打ち切られたのかのどちらかだと言います。また、あるほかの方は、仕事をくれる取引先のほとんどがインボイス登録の有無を尋ねてくる。その後、値下げを提案してくるか、何も言わず取引が続いたとしても、いつ打ち切られるのではないかとの不安がついて回ると話します。私の周りでも、長引く消費低迷に加えて、インボイスを機に店を畳んだという飲食店の方がいました。区内の業者には既に大きな影響が出ているのです。地方自治体の使命は、住民福祉の増進、住民の暮らしを守ることです。行政は、政治は、何のために、誰のためにあるのでしょうか。弱肉強食の社会なら政治は要りません。政治は弱い立場の方々を守るためにあるべきです。

 2点目は、品川区にはその影響を受ける方がたくさん住んでいらっしゃるからです。身近な生活インフラの1つである商店街、町工場、一人親方の大工さんが集う地元建設業界の皆さん、シルバー人材センターで働く皆さん、そして、ソニーやIMAGICAなどの映像制作会社があることなどに由来して、映像クリエーター、イラストレーター、ウェブデザイナーなど、様々なクリエーターの皆さんがここ品川に住んでいます。かくいう私も、最近のひそかな生きる元気の1つは、連日テレビ欄をにぎわす一連のアニメ番組です。こうした文化を支えているのは、ルームシェアで、1月5万、10万円の収入で、それでも好きなアニメのためにと腕を磨き続けるアニメーターの皆さんだと知りました。日本の映像文化やものづくり、地域の活力を生み出している源泉がまさにこれらの皆さんです。こうした方々が多く住み、活躍する品川区だからこそ、その影響を直視して、国で議論すべきことだとか、国の制度を案内しているとか言わないで、できる支援を行って、国に直言する、その必要があるのではないでしょうか。

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