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2024年07月10日

鈴木ひろ子区議が賛成討論を行いました
請願第7号「国に対して訪問介護の基本報酬引き下げの撤回を求める意見書の提出を求める請願」に対する賛成討論を行いました。

2024.07.10 鈴木ひろ子 区議

 日本共産党区議団を代表して、請願第7号「国に対して訪問介護の基本報酬引き下げの撤回を求める意見書の提出を求める請願」に対する賛成討論を行います。

 本請願は城南保険生協から提出されたもので、今年4月から訪問介護の基本報酬が2~4%引き下げられたことに対して、国に向け、引き下げの撤回と基本報酬引き上げを求める意見書提出を求めるものです。

 6月5日、衆議院厚生労働委員会は、「介護障害者福祉事業者の処遇改善に関する決議」を全会一致で議決しました。その決議は自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、日本共産党、国民民主党、有志の会などが共同で提案したものです。決議では、今年度の訪問介護の報酬引き下げの影響を速やかに検証し、その結果に基づいて必要な措置を講じるよう訴え、検証を行う際は、基本報酬を引き下げられた訪問介護の事業者らの意見も聞くべきとクギを刺しました。

 政府が行った介護報酬引き下げに対して、政権与党も含めて全会一致で見直しを求める決議が国会から上がるという異例の事態となったのです。在宅の高齢者の方々にとってヘルパーさんが命綱であり、日々の生活が訪問介護によってどれほど救われているか、そのヘルパーさんが人材不足で介護事業者がどれほど苦労しているか、切実な訴えを直接聞いているのが私たち地方議員です。訪問介護の基本報酬は引き上げこそ必要で、引き下げなど言語道断です。品川区議会でも多くの議員が介護職員の処遇改善を求める質問を行ってきました。国の決議を後押しし、一日も早い報酬引き下げ撤回へ、請願を採択し意見書の提出を心から呼びかけます。

 介護報酬引き下げの問題点を3点述べます。

 1つ目に、厚労省が引き下げの理由とした「訪問介護の収益率は7.7%の黒字」が実態を反映していない問題です。実際はサービス付き高齢者住宅併設など集中的にこなせる大手の事業所が平均利益を押し上げているだけで、厚労省のデータでも約4割が赤字という実態です。区内の事業者も赤字続きでほかの事業から補填しているがいつまで続けられるかと切実に訴えています。東京商工リサーチの調べで、昨年の訪問介護事業者の倒産・休廃業は、過去最多の427社に上ります。

 2つ目に、介護職員の賃金は全産業平均を月額約7万円下回っており、改善こそすべきなのに逆行するものです。物価は2020年から8.1%上昇、物価高騰対策や感染症対策、処遇改善を考えれば、10%以上の報酬引き上げが必要です。国は、処遇改善加算をつけたと言いますが、段階ごとに様々な要件が課せられ、手間もかかるため現場に多大な負担を強いる上に、どの事業者も最高段階の加算が取れるものではありません。

 今年度、東京都と品川区が居住手当の支援を行います。国が報酬を引き下げる中、評価するものですが、これは手当であり、基本給をあげるものではありません。しかも平均7万円も低い賃金を全産業平均まで引き上げるには程遠いと言わざるを得ません。厚生委員会では、「会派で議論した結果、国に意見書を出すのではなく、区として支援策に取り組んでいくべき」と不採択の態度表明がされましたが、国が基本報酬を引き上げない限りは根本的な解決にはつながらないのです。

 3つ目に、今介護の現場は深刻な人手不足であり、人材確保のために使わざるを得ない紹介会社に支払う紹介料が、厳しい経営をさらに圧迫する事態となっています。今回の介護報酬引き下げは、この異常な状況を助長するという問題です。

 あるヘルパーステイションの責任者の方に伺いました。「人材確保はハローワークや求人広告では一切応募がなく、すべて紹介会社を使わざるを得ない。紹介料は年収の30%かかり、3カ月働くと戻ってこない仕組み。先日4か月目に連絡もなく来なくなり、電話しても出ず、事件に巻き込まれたのではないかと心配で自宅に行ったり、警察に届けたりした。すると電話でひと言「やめます」と連絡あり、紹介料70万円は戻らなかった」と言います。もはやモラルハザードです。人材確保に高い紹介料を払わなければならないという異常な事態の根本原因は、介護職員の労働条件が劣悪だからです。処遇改善は待ったなし、そのための介護報酬引き上げが必要なのに、逆に引き下げ。これでは、この異常な事態をさらに悪化させることになります。
今回の訪問介護の基本報酬は、食事の介助やおむつ交換などの身体介護も、掃除や買い物、調理など生活援助も2~3%の減額です。訪問介護、夜間訪問介護、定期巡回型訪問介護すべて削減されました。訪問介護は高齢者の在宅を支える要です。現場が疲弊し、待遇の悪さに人手不足が深刻化、コロナ禍の下で倒産や休業が相次いだ実態を踏まえれば、今回の訪問介護報酬マイナス改定はあり得ません。必死に頑張っている訪問介護事業者を崖っぷちから政府の手で突き落とすような暴挙と言わざるを得ません。ヘルパーさんたちは訴えます。「利用者の個別のニーズに合わせたサービスを提供するという課題にこそ、訪問介護の存在価値があり、望む限り自宅で生活する権利を保障する。この仕事に誇りを持っている」しかし、「もうやりがいだけでは頑張れない。でもこの仕事が好きだからやめたくない」「この声が国や行政に届かないのが悔しい」「加算ではなくベースアップをしてほしい」この声に応えることこそ、区議会に求められているのではないでしょうか。

 請願を採択し、区議会として国に対して、訪問介護報酬引き下げ撤回と引き上げこそとの意見書を提出していこうではありませんか。心から訴えて、賛成討論を終わります。