スマホで表示する画像

2025年03月26日

鈴木ひろ子区議が「国に対して訪問介護の基本報酬引き上げを求める意見書の提出を求める請願」への賛成討論を行いました。

2025.03.26 鈴木ひろ子 区議

 日本共産党品川区議団を代表して、令和7年請願第6号「国に対して訪問介護の基本報酬引き上げを求める意見書の提出を求める請願」に対する賛成討論を行います。

 この請願は、東京商工リサーチの調べで、2024年の介護事業所の倒産と休廃業は過去最多の784件にのぼり、うち休廃業・解散612件の7割が訪問介護事業所であったとの深刻な数字を示しながら、その大きな要因は、昨年4月の訪問介護報酬の引き下げであり、この事態を引き起こした国の失策と断じています。国は、一刻も早く引き下げた介護報酬を引き上げるべきとし、国と関係機関に対する意見書提出を求めています。

 同趣旨の請願は、昨年の2定と4定に続き、今回で3回目となります。

 以下賛成の理由を4点述べます。

 まず第1に、いくつもの事業所が全国で、そして区内でも廃業・閉鎖に追い込まれており、このまま介護報酬を引き下げた状態を放置すれば介護崩壊につながりかねないということです。

 品川区の訪問介護事業所は53か所ですが、区内で閉鎖した事業所がこの5年間で12か所に上ります。加えてこの3月末閉鎖の事業所が複数あります。全国では、訪問介護事業所がない自治体が昨年12月時点で107町村となり、事業所が残り1か所となった自治体は272市町村。事業所ゼロと残り1の自治体を合わせると379自治体で、全自治体1741市区町村の5分の1を超えます。

 品川のような都市部では、大手事業者が出店する一方、地元で長い間高齢者を支えてきた小規模事業所が廃業に追い込まれています。これまでぎりぎり頑張ってきた事業所が報酬引き下げによってとどめを刺されたという状況ではないでしょうか。実際、県として訪問介護報酬引き下げ影響調査を行った長野県では、減収になった事業所が47%を占め、43%が理由に報酬改定をあげ、85%の事業所が報酬単価の引き上げを求めています。

 3月末閉鎖する事業所に話を伺いました。利用者に寄り添った介護を実践したいと十数年頑張り続けてきたが、需要はあるのに、人材不足で職員が疲弊した状況に限界を感じやむなく閉鎖を決断したといいます。これを放置すればさらに倒産・廃業が増え、在宅の要である訪問介護から介護崩壊につながりかねない深刻な状況です。

 第2に、介護現場の人材不足に拍車をかけたのが介護報酬引き下げだということです。

 自民党も国も区も、事業所廃止の原因を「人材不足と高齢化」と言い、介護報酬引き下げが直接的な原因ではないかのように述べますが、今回の介護報酬引き下げが人材不足を助長したことは明らかです。全産業平均賃金より月額6万円も低い介護職員に対して、基本給を抜本的に引き上げ、社会的地位をあげることが必要なのに、事業所の経営を追い詰め、介護職員の社会的地位をさらに下げることになったのが報酬引き下げでした。

 現場でぎりぎり頑張ってきた介護職員は「これだけ頑張っているのに認められない」と介護職員としての誇りを傷つけられ、モチベーションが下がったといいます。介護報酬を大幅に引き上げ、ヘルパーさんの労働をきちんと評価し、社会的地位を上げることこそ人材不足の解消につながります。

 3点目は、報酬引き下げの影響調査との国のアンケート調査は、品川の実態を反映する期待はできないということです。 しながわ未来から請願に反対の理由の一つに「国の調査結果を注視する」がありました。

 また、自民党も前回の審査時、反対の意見として「意見書より国が行っているアンケート結果を待つべき」と述べました。

 しかし、厚労省への問い合わせで、アンケートは品川の実態を反映しないことが分かりました。国のアンケートは訪問介護事業所3万4500か所中約1割弱の3300か所を対象に送付。 しかし、3回も回答期限を延期しても回答は4割程度。つまり全事業所の4%の事業所でしか回答していません。品川の事業所53か所中わずか2か所の回答ということです。しかも今回も多忙な小規模事業所は回答できていないだろうと言われています。これで閉鎖せざるを得ないほど追い込まれた事業所の実態がわかるでしょうか。

 さらに、その分析・検証も遅れており、2月予定だった社会保障審議会もいまだ開かれていません。国の調査結果待ちでは現在苦境に立たされている事業所を救うことはできません。野党が共同で法案を提出し、次期改定の2027年度を待たずに期中改定を行うこと、それまで公費による補助金を交付することを提案しています。

 しかしそれを通すためには世論の後押しがポイントだとマスコミが指摘しています。区議会の意見書が大きな力になるのです。

 4点目は介護崩壊にさせないためには、介護報酬引き上げと国の負担割合の引き上げこそ必要だということです。

 国は、新年度訪問介護報酬引き下げの撤回をしないだけでなく、さらなる改悪を狙っています。これは介護崩壊への道です。介護報酬を引き上げ、事業所の安定した経営と介護職員の待遇改善こそ必要です。自民党からは繰り返し「介護報酬をあげれば保険料が上がることになる」趣旨の発言がされています。介護報酬引き上げを保険料値上げに連動させないためには、かつて自民党と公明党も野党時代に求めていた、国の負担割合を現在の25%から35%に引き上げることが必要です。

 最後に、陳情者からの意見陳述の申し出を委員会が多数決で拒否したことについて一言述べます。

 今回の請願審査に当たり、請願者から意見陳述の申し出がされていました。申し合わせ事項では「委員会が決定した場合に1人10分以内で休憩中に取り行う」となっていますが、自民、公明、未来がこの申し出を拒否したため、意見陳述はできませんでした。

 区議会は区民に開かれた議会をめざし、様々な取り組みをしています。区民の意見を直接聞かせてほしいと「区民と議会の交流会」を行い、厚生委員会として障害者のみなさんから要望を伺う昨年の取り組みは実り多いものでした。

 議員には区民の声を受け止めることが求められています。議員必携「議員の職責」でも「議員がただ単に住民の声と心を代表し、代弁するだけの役割に終始するだけでなく、一歩踏み出して、常に住民の中に飛び込み、住民との対話を重ね、住民の悩みと声を汲み取りながら議論を重ね…ることが重要」と述べています。

 ましてや、意見陳述したいとの申し出を断るべきではないと思います。今全国でいくつもの地方議会が「当該請願者又は陳情者から申出があるときは、意見を聴く機会を設けるものとする」と規定しています。品川区議会も意見陳述の申し出は基本的に受けるとすべきと考えます。

 現場の実態に心を寄せ、区議会として意見書提出することを心から呼びかけ賛成討論とします。