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条例制定請求代表者の意見陳述

2006 年 1 月 19 日、 品川無防備平和条例、 第1回臨時会(第2日目) 本会議場で条例制定請求代表者の矢野秀喜氏、住吉英治氏が意見陳述を行いました。

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矢野秀喜氏の意見陳述

矢野秀喜氏

皆様、おはようございます。

  西大井三丁目に住む矢野と申します。品川区無防備平和条例制定を求める直接請求者の一人として、意見陳述をさせていただきます。

  無防備平和条例の制定を求める直接請求署名を集める活動を昨年 10月28日から11月27日まで1カ月間取り組みました。署名活動に私も参加をし、この中で実に多くの方と出会い、短い時間ではありましたが言葉を交わすことができました。その中で、署名活動開始日にお会いし、話をした女性のことが今でも忘れられません。私が署名の趣旨、無防備平和条例の概要をお話しすると、その方はすぐに署名をされて、私にこうおっしゃいました。「こんな条例が戦前にあったらよかったのにね」と。その方は戦争体験者、空襲の被害に遭われた方だったのです。私は「そうですね」と言いつつ、「でも、条例の根拠となるジュネーヴ条約追加議定書は1977年、戦後にできたんですよ。間に合いませんでしたね」と説明をいたしました。しかし、後になって私ははっと思ったのです。でも、今が戦前かもしれない。だったら間に合うと。そして、私は署名開始の当日にこのような方と出会って、「よし、頑張って署名を集めよう」「条例を実現しよう」と思い、1カ月間の署名に取り組みました。今回、区議会に提案されました無防備平和条例案には、平和を願い、戦争は二度と起こしてはならないとする、1万を超す品川区民の思いが込められております。また、この条例案は、非戦の町・品川をつくろうと、実現したいと署名活動に参加した多くの請求者、受任者、協力者の意思に基礎を置いております。このことをまず、議員の皆様にご理解いただきたいと思います。

  初めに、私はこの条例の根拠となっていますジュネーヴ条約追加議定書の意義について申し述べます。

  今回、私たちが提起しました無防備平和条例案は、日本国憲法に規定します平和的生存権を地方自治体レベルで具体化し、9条を地域の中に生かすものです。直接的なその根拠は、 1977年に成立しましたジュネーヴ条約第一追加議定書、その59条に置いております。このジュネーヴ条約追加議定書は、武力紛争下における文民保護を強化、徹底するために、1949年のジュネーヴ四条約を補強、補完する形で制定されたものです。1949年、ジュネーヴ条約の第4条約で、武力紛争下における文民保護が初めて規定されました。画期的なことではありましたが、この条約で規定する文民保護の対象、範囲は、敵国居住自国民ないし自国在住敵国民と、占領地の文民のみとされていました。つまり、この時点では、自国に住んでいる自国民はまだ保護の対象とはされず、国家にとって自国民は戦争動員の対象でしかなかったわけです。

  しかし、その後、朝鮮戦争、ベトナム戦争などの軍事紛争において、一般住民の死亡率が9割を超す、軍人、兵士の死亡率をはるかに超える、そのような現実に直面する中で、 1977年の追加議定書では文民保護の範囲を広げ、一般住民を含め自国民の保護を規定するに至ったわけでございます。第一追加議定書では、48条で軍事目標主義の徹底がうたわれております。続いて、51条から56条にかけては、攻撃における禁止事項が具体的に定められております。そして、その後で、57条、58条では、攻撃においては予防措置を講ずることが規定されております。58条の攻撃の影響に対する予防規定は、自国民を保護するために、文民・民用物の軍事目標近傍からの移動、人口稠密地域の内部または付近での軍事目標設置回避を義務づけております。そして、このような軍事目標主義の徹底、その間接的な効果として文民保護を図るということにとどまらないで、文民を特別に保護する必要があるという考え方から、59条で無防備地域規定、60条で非武装地帯という特別な保護を受ける地域および地帯という、こういう規定が設けられました。

  そして、この条例が基礎を置いています 59条の無防備地域規定は、自国民を守るために敵対国からの攻撃を禁止する地域、すなわち無防備地域を設定できる、こういう規定でございます。この条約によって、紛争当事者は、紛争の中で、軍事的必要性、軍事的合理性のみに基づいて行動するということはできなくなりました。あくまで住民保護を貫く、こういう立場に立たなければならなくなったわけであります。日本政府は、2004年の通常国会でこの条約を批准いたしました。そして、昨年2月、この条約を発効いたしました。

  したがって、日本は、この条約を遵守する義務を負っております。「日本は」というふうに申し上げましたのは、中央政府だけではなく地方政府、すなわち地方自治体もこの条約を遵守する義務を負っているということでございます。日本政府は、 2004年にこの条約を批准する際に、この条約を国内法化するための国内法を2つ制定いたしました。捕虜取扱法と国際人道法違反処罰法でございます。しかし、文民保護規定を国内法化するための立法については、怠ったというふうに言わざるを得ません。そういうことであれば、地方自治体がそれを具体化するための法整備を図る必要があるのではないか。私たちはそのように考えて、この無防備平和条例の制定を提起いたしました。

  2つ目に、この条例は住民の生命、財産を守る地方自治体の責務、役割というものを規定したものだ。そういうものを定めようということだということについて申し上げたいと思います。地方自治法第1条の二は「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」というふうに規定しております。「住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本とする」とも言っております。この規定に従うならば、品川区無防備平和条例の制定は可能でございます。必要なことでもあるというふうに私たちは思っております。有事の際に住民の生命・財産を守ること、保護すること、命を守ることは、住民の福祉の増進を図ることそのものであり、その前提でもあるというふうに私たちは考えております。

  ある新聞は、無防備平和条例を求める運動に対して「国防協力拒否か?」、こういう見出しをつけて批判的記事を掲載しました。武力攻撃事態法あるいは国民保護法に自治体の協力義務が規定されておりまして、無防備平和条例がそれに抵触するのではないか、こういう記事でございました。しかし、国防協力も、国民保護法への協力も、住民の生命・財産保護があってのことではないでしょうか。住民の犠牲、後回しにした国防協力は本末転倒であり、自治体に課せられた第一義的な任務を放棄するものと言わざるを得ません。また、国民保護法が、有事において住民を保護するという保証は私はないというふうに思います。それは、東京都の国民保護計画案について東京都参与の志方氏がおっしゃっていること、彼は「東京都の国民保護計画は、国家中枢を守るものだ」というふうにおっしゃっています。その彼の発言の中には、住民保護という観点はほとんど見受けることができないと、私たちは思っています。私たちは、自分たちの生命・財産を守るためには、このような有事法制にむやみに身をゆだねることはできないと考えております。私たちは、自治体が平和行政を徹底し、戦争を起こさせない地域をつくる。必要とあらば、平和外交すら展開していく必要がある。こういう観点からこの条例を提起いたしました。

  そして、この条例案は、品川にあります非核平和都市宣言を発展させるものだということを最後に申し述べたいと思います。 1985年、品川区は区議会全会一致で非核平和都市宣言を行いました。これは品川区民の誇りでもあり、国際的にも高い評価を受けたものだというふうに、私は伺っております。この非核平和都市品川宣言は、1980年代にアメリカとソ連が核軍拡競争を強め、核戦争勃発のおそれさえ高まる中で、核兵器廃絶、平和の実現のために、自治体としてできること、やらなければならないことを宣言したものだと、私たちは理解しております。品川区民、地球市民を核戦争の危機から守るために、たとえそれが国防、外交にかかわることであっても、区として基本的な立場をきちんと表明することが必要だということで、このような非核平和都市品川宣言を出されたというふうに私は理解しております。今こそこのような立場に立って、非核平和都市宣言を発展させて、無防備平和条例を制定していただきたいというふうに思います。なぜならば、今の時代、情勢が、この条例の制定を求めている、要請しているというふうに思うからです。小泉内閣のイラク戦争への参加、あるいは憲法改正の動き、9条2項を削除するという動き、海外派兵というものを本当に通常任務化するというような動き、こういうふうな事態を見ておりますと、日本の平和主義なり、平和的生存権というものは、風前のともしびではないかというふうに、私は危惧するものであります。

  また、他方ではテロの危険も高まっております。小泉内閣の違法なイラク戦争への指示、参戦がこれを招いたというふうに言わざるを得ません。このような状況を変えていくために …。

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住吉英治氏の意見陳述

住吉英治氏

おはようございます。

  私は、西大井一丁目に在住している大井キリスト教会の牧師、住吉英治といいます。私は、今ここに、1万 56人の署名者、有効数8,694名の方々の熱き平和への願いを代表して意見を述べさせていただくことに誇りとともに緊張を禁じ得ません。議員の皆様におかれましても、この署名の重みと平和の熱き思いとを真心を持って真摯に受けとめていただければ幸いと思います。

  聖書の中に「平和をつくるものは幸いです」というイエス・キリストの言葉があります。「平和」、これは宗教を問わず、いずれの国民、民族にとっても共通の願いではないでしょうか。要は、平和はこちらから積極的につくり出していかなければ向こうからはやってこないということであります。不断の努力が求められています。そうでなければ、むしろ、平和を打ち壊そうとする悪や争い、戦争の芽が吹き出し、やがて台頭してくることになるでしょう。それは、人と人との間に国と国、民族と民族との間に生じてくるのではないでしょうか。ですから、大切なことは、私たち一人ひとりが、そして品川区民が、東京都民が、そして日本国民が、平和を積極的につくり出していくことが求められているのです。

  私は、品川区に移り住み8年になりますが、古きものと新しきものとが折り合わされた素敵な町だと思い、とても気に入っております。特に、「この輝かしい歴史と伝統を誇りとし、文化の香り豊かな近代都市への発展を目指して」という品川区民憲章の冒頭部分が好きです。この品川無防備平和条例も、文化の香り豊かな近代都市への発展に大きく寄与するのではないかと確信しております。

  また、非核平和都市品川宣言および人権尊重都市品川宣言に初めて目が触れ、読ませていただいたときの少なからぬ感動を今も忘れることができません。「今、この地球に、人類は自らを滅ぼして余りある核兵器を蓄えた。いまだかつて、開発された兵器で使われなかったものはない。 …一刻も早く、核兵器をなくさなければならない。…品川区は核兵器廃絶と恒久平和確立の悲願を込めて、ここに非核平和都市宣言をし、全世界に訴える」云々と述べられております。今、この世界は、品川宣言が危惧するように、核兵器をなくすのではなく、むしろ持つ方向に進みつつあります。このようなときであればこそ、品川区は核兵器廃絶と恒久平和確立の悲願を込めて品川無防備平和条例を制定し、品川区、東京都および日本、そして世界の平和に貢献すべきときではないでしょうか。

  人権尊重都市品川宣言においてもしかりであります。そこには、「我々は …平和で心ゆたかな人間尊重の社会の実現をめざす品川区」とうたわれています。この人間、人権尊重の社会の実現こそ、品川無防備平和条例の趣旨に最もかなっているのです。それは、この条例が一人ひとりを大切にし、本来の地方自治体の役割である個人の命を守り、財産を守る法律だからであります。

  私たちが提出した条例はジュネーヴ条約に基づいております。その趣旨は、まず私たちの足元である品川区から戦争をなくしていこうという運動です。品川区に住む私たち住民が、この地域から戦争とその火種をなくしていくため、平時から不断に努力を重ね、戦争をさせず、戦争に巻き込まれない体制をつくっていくことです。そのことによって、住民の生命、財産を守るというのがこの条例の目的であります。日本は世界に誇るすばらしい平和憲法を持っています。その前文には「日本国民は、恒久の平和を念願し、 …平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」云々と述べられております。非常に高尚な、崇高な前文ではないでしょうか。私たちは、人権尊重都市品川宣言が言っているように、「人間は生まれながらにして自由であり、平等である」とあるように、だれしもが自分を愛し、隣人を愛し、そして自分の国を愛しています。だれも人を殺したいと願い、また自分が殺されたいと願っている者はありません。私たちは、世界に誇るすばらしい平和憲法を持っているのですから、その精神をより具現化する品川無防備平和条例を制定し、国際社会において、名誉ある地位を占めようではありませんか。

  もう1点、前文で大切な点があります。それは、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言する」ということです。つまり、過去において政府が為政者、主導者たちが戦争を起こしてきたのだと言っているのです。そんなことが再び起きないように、主権者である私たち国民が政府を見張り、監視し、戦争を起こそうとする機運が少しでもあれば、それを阻止していかなければならないと言っているのであります。要は、戦争の惨禍をもたらさないようにするのは、私たち国民の責任であると言っているのであります。これは非常に重要な点であると思います。今、小泉首相を初めとする政府は、現にイラクに自衛隊を派遣し、アメリカを助けるという名のもとに、イラクの侵略に加担し、多くの住民を殺りくしているのが実態ではないかと思います。ブッシュ大統領は、このイラク戦争が間違いであったことを率直に認めました。小泉首相も一国の首相として、自衛隊派遣が間違いであったことを認め、国民に謝罪しなければなりません。

  目には目、歯には歯、また「聖戦」という聖書の言葉が、当時のフセイン大統領、ブッシュ大統領、あるいはマスコミに用いられました。しかし、これは間違った引用であります。本来の意味は、同じ罰を与えることによって、それ以上戦いがエスカレートしないようにするのが真意であります。対立からは何も生まれないのです。ブッシュ大統領および小泉首相のイラク政策は完全に破綻したと言えるでしょう。そして、それはまた、武器、武力による政策の限界を露呈したと言えるでしょう。これからの世界紛争の解決において、武器の力による危うさがイラク戦争で証明されました。私たちは、一見、隙間だらけに見える品川無防備平和条例を提出しましたが、決してそうではありません。そこにはちゃんとした武器によらない抵抗権も与えられているのです。過去の沖縄、慶良間諸島の前島、フランスのパリの開放都市宣言に見るように、住民の命と財産は守られたのであります。日本には、また、憲法9条という世界に冠たる憲法9条もあります。この憲法9条の精神を生かすためにも、品川無防備平和条例の制定を強く願うものであります。

  議員の皆様におかれましては、お一人おひとりそれぞれの会派に属しておられることと思いますが、しかし、私たちはその前に一人の人間であり、一人の品川区民ではないでしょうか。平和の問題、自分の命と財産を守るのは、私たち一人ひとりの課題ではないかと思うのです。そして、そのことにおける最も有効な手段は、品川区に無防備平和条例をしくことではないでしょうか。品川区は、品川区民憲章、非核平和都市品川宣言、人権尊重都市品川宣言をしてこられました。先人の遺産、そしてそれを今日まで掲げ、宣言してこられた市民の皆様、区議会の委員の皆様に心から敬意を表します。

  これらの憲章、宣言をさらに実りあるものとし、日本国憲法の精神を生かすため、議員の皆様におかれましては、個人の良心に従って、品川無防備平和条例を制定していただけるようにお願い申し上げます。

  最後に、日本国憲法の前文を読みかえて終わりにいたします。

  「われら品川区民は、恒久の平和を念願し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持するために、ここに品川無防備平和条例を制定する。そうすることによってわれらは、平和を維持し、国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う。」この条例がここで通るならば、日本初となり、私たちは世界に名誉ある地位を占めることができます。お一人おひとりの良心に従った勇気ある決断を望みます。そして、ここに、出席できなかった皆様の代弁とさせていただきます。(拍手)

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