私は日本共産党を代表し、区民の直接請求による第1号議案「品川無防備平和条例」について賛成討論をおこないます。
本案は
@戦争事務をおこなわない。
A非核三原則の遵守
B日頃からジュネーブ条約第一追加議定書59条にある無防備地域の条件を満たす努力
C平和事業を計画的に推進すること。
など目指したものです。
その趣旨は憲法前文及び9条に定められた国民の平和的生存権を自治体レベルで保障しようとするものです。わが党は 9 条改憲が叫ばれている現在、本案に心から賛同するものです。
さて、私はここで区側が本案に添えて提出した高橋区長の「意見」について見解を述べます。
第1は、国際条約なのに高橋区長は政府の見解のみを主張し「本案を議決しても地方自治法に抵触し、効力はない」といている問題です。
本条例案の核心部分の一つが 1977 年に締結されたジュネーブ条約第一追加議定書を品川区に適用しようとするものです。 59 条は戦争や紛争で 9 割もの住民が犠牲になることを防止し「固定された軍事施設の敵対的な使用がおこなわれないこと」など用件をみたした無防備地域宣言をおこなった自治体に対し、相手国は攻撃してはならない」としており、本案はその条項を品川に適用、区民の命と財産を守ろうとするものです。
区長は「防衛は国においておこなわれるべきであり、地方公共団体が無防備地域の宣言をおこなうことはできない」と主張。「宣言したとしても第一追加議定書に規定された宣言にあたらない」と総理大臣の国会答弁を紹介しています。
しかし、この主張が国際舞台で通用するのでしょうか。総務委員会でも議論となりましたが、ジュネーブ条約の提案者である赤十字国際委員会は、第一追加議定書59条のコンメンタールで「原則として、宣言はその内容を確実に遵守できる当局によって発せられるべきである。一般的にこれは政府自身となるであろうが、困難な状況にあっては、宣言は地方の軍司令官、または市長や知事といった、地方の文民当局によって発せられることもあり得る」としているのであります。
赤十字国際委員会の解釈によっても自治体が宣言することは可能であり、本案は、この解釈に基づいたものであります。
総務委員会では区は「条約の解釈は各国それぞれだ」との答弁がありましたがこれでは国際条約は締結の意味がなくなってしま疎いわなければなりません。
区は議会で何回か「国際条約は国内法規の上位規範である」と述べてきましたが、区の意見はその主張にも反し世界に通じない議論といわなければなりません。
第2に地方自治とはなにか、地方自治の本質が問われる問題です。
品川区は、政府の判断を絶対視、本案を事実上の門前払いとしました。これは地方自治の放棄であり、品川区を国の従属機関とするもので断じて容認できません。
ここで 32 年前に制定された区長準公選条例の制定の運動について述べます。当時の地方自治法では区長は議会が選任するようになっていましたが、区民の間で直接請求運動により区長準公選条例を制定しました。区長を決定するに際し区民投票を実施、その結果を尊重して議会が区長を選ぶ、区長公選が実現したのであります。
当時この準公選運動は 23 区に広がっていましたが、自治省は「脱法行為であり区民投票は地方自治法違反」と妨害しました。このような妨害を抗して品川区議会は準公選条例を全会一致で議決、区民投票の実施ばかりか、そのことにより区長公選の法改正までいたったのであります。
もし「国も自治法違反」の圧力に屈し、区民投票をおこなわなければ区長公選制の遅れは必至といわなければなりません。住民の直接請求に対し、政府見解を絶対とする区の態度は、品川の栄えある自治権拡充運の成果を汚すものといわなければなりません。
1985 年、防衛にかかわる問題とはいえ、非核平和都市品川宣言を全会一致で制定、区民とともに平和事業を推進する立場こそ貫いて欲しいものだと思います。
第 3 は憲法との関連です。区は「無防備平和条例を制定したとしても地方自治法第 14 条第1項に抵触する」つまり違法だ、としています。
憲法 9 条は第一項で「 武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。第二項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」としております。政府が文字通り9条を完全実施するなら、日本国中が無防備地域となることは明らかです。ところが政府は、世界第二の軍事費支出し世界有数の自衛隊を保有しています。アメリカの要請にこたえ武装した自衛隊をイラクにまで派兵しているのであります。
「条例制定が地方自治法違反」というより自民、公明党の政府が憲法を公然と踏みにじっている事こそ「違憲」であり、問題といわなければなりません。
私は、今回の直接請求運動は、憲法 9 条に沿った平和な地域づくりであり道理ある運動と確信するものであります。
賛成討論の最後に国連憲章に基づく平和の国際秩序を目差す流れが地球的規模で世界に広がっていることを紹介したいと思います。
一つは東アジア平和の共同体の流れです。昨年 12 月、マレーシアで開かれたASEAN首脳会議、ASEAN+日中韓の首脳会議、東アジア首脳会議が連続して開かれ、地域の平和共同体の形成で合意しました。紛争の平和的解決、武力行使の禁止をうたい 1976 年に結んだ東南アジア友好条約、TACは中国、韓国、日本、インド、ニュージランド、パプアニューギニアなど世界人口の53%が参加、東アジア平和共同体へと発展しています。
もう一つはラテンアメリカで起こっている巨大な社会進歩の流れです。
1998 年にベネズエラで始まった民主的変革の流れはブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、昨年末のボリビアと南米大陸全体に広がっています。これらの変革が選挙を通じて行なわれたものでありますが、共通している事はアメリカ主導のIMF路線・新自由主義の押し付けが破綻、米国支配からの決別を掲げ、自主的で民主的な経済政策に転換していることが共通しています。もう一つの特徴は 2004 年南米 12 カ国が参加した首脳会議で「国家主権の平等」「紛争の平和的解決」を掲げて南米諸国共同体の設立が宣言されていることです。
国連憲章を無視したイラクをアメリカの先制攻撃がいっそう平和の共同体の流れを助長している事は明らかです。
小泉内閣は憲法 9 条まで変えて、アメリカの軍事的覇権主義のお先棒を担ぐ未知を進んでいますが、世界の流れに逆行しているかは明らかではありませんか。
「品川区無防備平和条例」は戦争から区民のいのち、財産を守ろうとするものです。同時に無防備地域を全国ひろげることが出来れば、憲法の前文と 9 条の平和な日本が築かれることになります。
品川での「無防備平和条例」制定の動きは、一自治体での動きではありますがアジア、ラテンアメリカに広がる平和の共同体の流れ時をいつにする運動でもあります。
あらためて区民の戦争反対、平和の願いのもと一万人を超える署名が提出されたこの運動は品川の 2006 年 1 月 19 日 ( 木 ) 歴史に残る快挙だと思います。あらためて本案に賛成することを表明し、日本共産党を代表しての賛成討論を終わります。