品川区教育委員会(区教委)は、中学校一年生を対象に実施した学力テストの成績を、8月8日、出身小学校ごとにインターネットで公表するとしています。父母、教師など関係者から、「子どもの心を傷つける」「学校をランク付けし、競争を激しくするのでは」との疑問や批判が広がっています。
競争に駆りたてれば新たないじめや不登校の拡大が不安問題のテストは、中学校入学直後の4月10日、算数と国語の二教科で実施。区教委は成績公表の理由を「指導に生かすためにおこなう」と説明しています。
テストの成績を公表すれば、点数を上げるために学校間の競争は激化し、子どもたちを競争に駆りたてます。子どもからは「僕のせいで学校の点数が下がったらどうしよう」など心配する声がすでに出ています。
成績公表は、子どもを追い詰めいじめや不登校などを新たに拡大することになりかねません。
教育の専門家はこぞって批判教育評論家の尾木直樹さんは、「成績が公表されれば、親たちは当然、学校選択の基準とする。卒業した小学校別の成績公表は小学校から戦わせようという意図で、もはや悪乗りしている」(東京新聞・5月10日付)と批判しています。
マスコミに登場した教育専門家も、こぞって厳しく批判をしています。
1960年代に実施された全国学力テストは、激しい競争を生み中止となりました。
この教訓からも学力テストの成績公表は中止すべきです。
1960年代全国学力テスト
1960年代当時、文部省が全国学力テストを実施。全国トップとなった香川県では、
1.できない子は試験日当日休ませる
2.1ヶ月前から早朝、放課後学力テストのための補習授業がおこなわれる
3.試験官が問題の間違いを指差しする
…などがおき、住民や教職員組合のテスト中止を求める運動が広がり、1964年ついに中止になりました。
押し付けではなく区民参加で教育を
区教委は、学力テストの成績公表を保護者・教職員・区議会の意見も聞かず決定したため、区民が知ったのは5月7日のマスコミ報道でした。
「学校選択制」「小中一貫校計画」なども独断で進めてきました。
教育は区民のためのものであり、区民の意思を尊重して進めることが大前提です。
学ぶ喜び子どもたちに少人数学級の実現を学力の状況や性格は、どの子もみんな違います。
競争ではなく、教師が一人一人のつまづきを見つけ、きめ細かな指導をおこなうことが不可欠です。
基礎的な学力を身に付けるためにも、一クラス30人以下の少人数学級こそ実現すべきではないでしょうか。
6月13日、党区議団は30人学級実現など、3項目の要望書を高橋区長に提出しました。
この要望書は、区議選で掲げた政策のうち急を要する問題をまとめたもので、特養ホームの増設、乳幼児医療費助成制度の所得制限撤廃もあわせて求めています。
区長は「検討したい」と回答しました。
7月10日の議会運営委員会で、今年度の海外調査(海外視察)の実施を、日本共産党以外の多数で決定しました。
海外視察の予算は、すでに700万円余(一人あたり70万円)も組まれています。自民党の提案は、小中連携・学力定着度調査でロンドン、街づくりNPO・再生事業でサンディエゴなどという内容です。
海外視察実施に当たっては、緊急性・重要性・区民の関心事などを勘案して決めることになっています。しかし、今回の自民党案はそれに該当しているとは思えず、海外視察先にありきです。
不況下、昨年海外視察を実施したのは、23区のうち品川区議会など4区だけです。
自民党は、保育園職員削減、学童保育クラブの廃止など主張してきましたが、無駄な海外視察こそやめるべきではないでしょうか。
品川区は6月30日の厚生委員会で「学童保育クラブをすまいるスクールに『移行』する」と発表しました。親のあいだから「学童保育がなくなったら、安心して働けない。学童保育をなくさないでほしい」と、切実な声が寄せられています。
すまいるスクールは学童保育の代わりにはなりません区は「すまいるスクールは学童保育の機能を持ち合わせているから『移行』できる」といいます。しかし、学童保育とすまいるスクールはもともと対象も目的も違います。
学童保育は、共働きや一人親家庭の昼間学校から帰っても親がいない子どもが対象で、毎日通うところです。子どもにとって家庭に代わるほっとできる場であり、親が安心して働くためになくてはならないところです。
現在38ヶ所で1747名の子どもが通っています。少子化にもかかわらず希望者は年々増え続け、定員に対して188%も入っているところもあります。
一方、すまいるスクールは、小学校に通うすべての子どもが対象で、行きたい時に行くところです。
これでは廃止同然国は学童保育について、すまいるスクールなどすべての子どもを対象にした事業と明確に区別すべきとして、専用の部屋と専任の指導員の配置を義務付けています。区の説明では、専用の部屋も専任の職員もつけず、おやつも連絡帳も保護者会もなくすといいます。これでは廃止同然です。
学童保育では、何より指導員が子どもを見てくれる。顔色、行動あげればきりがない。特に低学年のうちは、親代わりになって下さるので、子どもにとって安心の場所になると思う。また保護者会等で子どもの様子がわかるので安心して働ける。すまいるにない最大で重要な良い点だ。学童を無くさないでほしい。
学童保育とすまいると両方経験した母親の声
あるすまいるスクールは、子どもの登録者は約370名、日々の利用は130名程度です。学童保育では一ヶ所当たり40〜70名の子どもが通っています。区は「学童保育を移行した後も、すまいるスクールの職員体制は現在の正規1名と非常勤数名のままでいく」といいます。これでは子どもたちに職員の目が行き届かなくなるのは明らかです。
子どもの衝撃的な事件が相次いでいます。こんなときだからこそ、学童保育もすまいるスクールもどちらも充実させるべきです。
父母たちに納得いく説明を区は、子どもたちに関わる重大な施策の変更にもかかわらず、親や職員が説明を求めても「詳しいことが決まっていない」と一切の説明を拒否しています。
父母や職員など関係者の声を聞き、納得いく説明をすべきではないでしょうか。
6月26日、日本共産党を代表してなかつか亮区議が、青年の就職難解決について一般質問を行いました。
就職難は政府・財界の責任なかつか区議は青年の実態を「就職難はますます悪化し、15〜24歳の失業者は13・2%にのぼり、フリーターは417万人と急増。ついに学校をでても職がない若者が5人に1人という深刻な事態となっている」と指摘。さらに「就職難やフリーターの急増は、政府や財界が雇用を増やす対策を行わず、大リストラ、新規採用枠の抑制を進め、非常勤労働者へと雇用の流動化を進めた結果です」と批判しました。
区独自の青年雇用対策をなかつか区議は「国や都に働きかけると同時に、区としてもできるところから対策に足を踏み出すべき。実態調査、就職相談窓口の設置、新規採用枠の拡大を」と青年雇用対策の実施を求めました。
区は「十分考えて、施策の転換を図っていく」と答弁しました。