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第27号議案品川区災害対策基本条例への反対討論

2014.03.26 中塚 亮 区議

 日本共産党を代表し、第27号議案品川区災害対策基本条例への反対討論を行います。濱野区長は本条例を、東日本大震災や中央防災会議での新しい被害想定を受け、建物倒壊や火災、津波などに対処するため、これまでの防災対策の見直し・強化が必要とし、「防災対策の基本である自助、共助、公助の考えを、区や区民、事業者など、それぞれの立場において役割と責務として明確にし、主体的に行動する指針となるもの」と提案しました。

 防災計画の方向性を決める重要な理念条例だけに、その間違えを厳しく指摘し、首都直下地震の被害から、区民の生命、身体、財産を守る防災計画へ、抜本的な改正を強く求めます。

 建設委員会の質疑にて区は「他自治体における同様の条例では、行政の対策を並べるのが基本だが、品川区は、その場面に応じて、それぞれの皆さんに担って頂きたい役割があるという所が特徴」「区の役割を減らすと言う事ではなく、さらに自助、共助の部分もしっかりやって頂きながら、区も一緒に取り組む」と説明。つまり、見直し・強化とは、自助、共助の役割・責務の明確化。これを震災の教訓、防災対策の基本と位置づけた事が、最大の間違いです。以下、反対理由を述べます。

 東日本大震災をはじめ、多くの震災において、行政も住民も住民組織も、倒壊した住宅からの救出、迫り来る巨大津波からの避難、避難所運営など、みな必死に力をあわせました。全国からのボランティアや自治体、消防、自衛隊をはじめ、だれもが必死に力をあわせました。

 しかし、残酷にも多くの命が奪われました。ここで、問われるべき、最大の被害要因とは自助・共助ではありません。災害に対して、脆弱な地域社会や都市を放置してきた国や自治体の責任。首都直下地震の被害想定では、最大被害である住宅耐震化を、いまだ自助などと、住民の自己責任とし、災害に脆弱な都市を放置している国や自治体の責任こそが問われているのです。

 日本共産党は繰り返し、震災から区民の生命、身体、財産を守るために、被害を防ぐ予防第一の防災対策を求めてきました。「地震は自然現象であり避けられないが、地震による災害の多くは人災であり、人間の英知と技術と努力による事前の予防対策によって被害を最小限に食い止めることができる」。つまり、地震の発生は無くすことはできないが、地震によって生じる住宅の倒壊や家具転倒など被害の多くは、予防対策の実施で防ぐことができるし、その為の対策を徹底することで、住民の命を守り抜かなければならない。

 これこそ、災害対策基本条例に明確化すべき、品川区の役割・責務です。

 区は「予防は重要だが、予防だけで防災の対策が全て整うわけではない。それぞれの場面で、それぞれが役割を担いながら総力を結集する」と説明します。しかし、予防第一とは、まずは、これなしに最大被害である住宅倒壊から、住民の命を守ることができないと言うことです。濱野区長も、繰り返し述べている通り、阪神淡路大震災の死者数について約9割は建物倒壊。まさに、住民の命を守る、最重要の対策が住宅耐震化など予防対策。品川区には住民の命を守り抜く使命があります。

 あわせて、これなしに発災後の救出・救助、初期消火、避難行動、そして避難所運営や住まい、生業(なりわい)の再生など、現実的な応急・復興はできません。

 救助や初期消火、学校避難所運営の柱となる住民が、発災直後の住宅倒壊で命を落とす事があれば、地震発生後の応急対策は、ますます困難となり、被害の拡大は必至です。

 また、住宅耐震化など予防は、同時に避難生活を強いられる総数を減らし、よって避難所支援を強める事につながることからも、予防は応急、復興を見通しても、何よりも重要なのです。

 震災に強く、住民が望む安全な地域づくり・まちづくり計画とは、住民自身が個々に、それぞれ考え、対処するでは、まち全体の防災力は向上しません。住宅耐震化などの予防や震災関連死を防ぐ医療や介護の強いネットワークづくりとは、まさに行政の使命です。

 区の説明を伺っていると、行政が使う予防対策の意味や性格が異なっていると思います。品川区地域防災計画では、予防に防災訓練や防災活動広場、延焼遮断帯等があります。

 火を消す訓練や防火貯水槽、延焼遮断帯の目的とは、発生した火災を消す消火活動、発生した火災の拡大を道路で止める考えですから、いずれも被害原因そのものを取り除く対策ではなく、災害が起こった後の、応急対策のための事前準備。被害を防ぐ予防対策の意味や性格と異なります。

 災害をいかに未然に防ぐのかという予防対策を、普段からどれほど努力してきたのかという事を抜きに、応急対策で対処するという考え方が、間違っているのです。

建設委員会で自民党は「全ての安全を行政が担保することはできない。そういう観点に立たないと、災害に対する考え方はできない」「ひとりひとりに対して、行政が援助することはできない話し」と発言。この指摘に区は「各世帯に全て対応するというのは、区では現実的に無理。そこで自助、共助、公助が出てきてという点は、区も同じ考えです」と応えました。

 ここには震災から区民の生命、身体、財産を守りぬくという自治体の姿勢は全くなく、人命軽視。防災対策とは、震災が発生する前に「あきらめる事」ではありません。被害が大きければ大きい程、これを防ぐ対策を強めることこそ、必要なのです。

これは、決して理想論ではありません。実際に区長も紹介した中央防災会議の検討にて住宅耐震化、感震ブレーカー設置、初期消火成功で被害の9割を防ぐことができると具体的に示しています。

 人命が最も危険にさらされる災害対策こそ、日本国憲法が定める生存権の保障。この理念と決意に基づいた対策が、現実に必要。災害対策基本法の目的も「国民の生命、身体及び財産を災害から保護」。品川区地域防災計画の目的も「区民の生命、身体および財産を保護」です。

 震災から住民の生命、身体、財産守る対策を自己責任とし、自治体や国による公助を巨大道路や超高層ビルづくりなどと、住民守らず都市機能を優先とは、本末転倒です。

 防災対策において、旧態依然の「個人財産の形成になる支援は行わない」という「原則」を取り払い、今こそ災害から区民の生命、身体、財産を守る支援強化へ、抜本的な転換が必要です。

 最後に、この条例作成に、住民参加が位置づけられていない問題です。区が住民と一緒に考え、計画を練り上げることは、防災計画を住民自身が行政とともに主体的に進める力になります。自分たちで作った計画だという、自覚と誇りがあるからこそ、スピードも上がり、取り組みを通じ住民同士の絆、交流も強まるのです。住民参加は、区の本気度が問われる問題です。

 住民をごまかし、進める29号線などの道路計画、都市過密化を加速させる武蔵小山駅前などの再開発計画はやめ、ここに充てる税金と労力を、予防第一の防災対策に注ぎ、区民の生命、身体、財産守る防災対策の実現へ、抜本的な改正を重ねて求め、反対討論を終わります。

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