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鈴木ひろ子区議 議員提出第12号議案「品川区おもてなし条例」に対する反対討論

2015.12.09 鈴木 ひろ子区議

日本共産党を代表して、議員提出第12号議案「品川区おもてなし条例」に対する反対討論を行います。

この条例は、自民・子ども未来が提出者、公明党と無所属議員の賛成者で提出されたものです。議会運営委員会に提案された時、3会派から意見が出されました。本会議で区民委員会に付託されましたが、同委員会において、同時に公明党から第3条(基本理念)の修正案が提出され、一括審議されました。以下反対の理由を述べます。 

第1に、本来おもてなしの活動とは、おもてなしをしたいという区民の自主的、自発的な意思で行われるものであり、他者がその行動を強制するものではありません。まして、品川区や区議会が区民に強制してはなりません。ところがこの条例案は、特定の考え方を押し付け、おもてなし活動の実践や参加を強制するものになっています。

基本理念では、公明党提出の修正案文でも「おもてなし活動を…区に対する誇りと愛着をもつことが重要であるとの認識の下に推進するものとする」と述べ、区民に対して「区への誇りと愛着を持つこと」を当然とし、おもてなし活動の前提としています。「区に対する誇りと愛着」は区民個々人の自由に属することであり、条例で規定し縛るものではありません。区に対して誇りや愛着を持つかどうかも、その程度も、どんな誇りや愛着を持つかも自由であるべきであり、強制されるものではありません。

さらに、区民や団体へのおもてなし活動の実践や参加の強制という点では、第5条(区民等の役割)、第6条(団体の役割)において、「おもてなし活動の実践に努める」「それぞれの事業活動において、おもてなし活動の実践に努める」「区の実施するおもてなし活動に関する施策に積極的に参加」「区と協働して地域におけるおもてなし活動を推進」などと具体的に規定しています。提案者が委員会審議で「強制するものではない」と述べていますが、条文を変えずに何度説明しても、条例文が示す強制性がなくなることはありません。

「おもてなし」のそもそもの理念は、対価を求めずに相手の心情を斟酌して様々な対応や接遇、協力を行うというものであり、いわば日本の精神文化ともいうべきものです。本来自主的・自発的な意思に基づいて心から行われるものであり、条例や上からの指示、命令等によって強制されるものであってはなりません。

他会派からも、区民委員会の審議で、「おもてなしというのは、個々の自発的に基づくことこそ価値あるものであり、それを条例で定めることに基本的な疑問がある」との意見、議運でも「区民が努めることという形で規定するのは、行き過ぎたものではないかと大変違和感がある」、また「条例として明確に文章化してしまうと、受け入れられない方、区民や団体もあると思う」などの意見が出されました。

また、委員会審議の中で、平成19年施行の「文化芸術・スポーツのまちづくり条例」でも「努めるものとする」と、今回のおもてなし条例と同じ規定になっているではないか、との発言がありました。文化・芸術、スポーツは豊かな生活を送るために欠かせないものであり、それを享受することは国民の権利として保障されるべきものです。そもそも、おもてなし活動と比較すべきものではありません。さらに、「文化芸術・スポーツのまちづくり条例」では、基本理念で「区民等および団体の自主性が尊重されなければならない」、区民等の役割では、「自主的な活動を通じて」と明記されています。よってわが党も賛成したものです。「努めるもの」との語尾だけをとって同じものとは到底言えるものではありません。

第2に、第1条(目的)では「おもてなし活動の推進により豊かな地域社会の形成を図る」と述べていますが、豊な地域社会とはおもてなし活動によって形成されるものではないと思います。豊かな地域社会をつくるために求められているのは、子どもから高齢者まですべての世代で不安が増大する現状の解決ではないでしょうか。子どもの貧困、若者の非正規化、医療難民、介護難民、高齢者の貧困など深刻な状況が広がるなか、誰もが経済的な心配をせずに安心して生きられる政治の実現でこそ、区民の心にゆとりも生まれ、おもてなし活動も自然に行われるものになると考えます。

最後に、このおもてなし条例は、「おもてなし」活動に「同意しない」もしくは「反対」の人や団体に対しても、おもてなし活動の実践や参加を求めるものであり、憲法が保障する思想・良心・内心の自由に抵触し、多様な価値観を尊重する立場を損ない、一律の価値観に沿った行動を強制するものになりかねません。

よって日本共産党は、この条例案に反対です。

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