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中塚亮区議 第23号議案「品川区町会および自治会の活動活性化の推進に関する条例」に対する反対討論

2016.3.23 中塚 亮 区議

日本共産党品川区議団を代表し、第23号議案、品川区町会および自治会の活動活性化の推進に関する条例について、反対討論を行います。

本条例は、濱野区長より、町会および自治会における活動活性化を推進するため、町会および自治会の位置づけ、区の責務、活動活性化を推進するための措置などを定める必要があると提出されたものです。以下、問題点を指摘し、反対の理由を述べます。
まず、町会・自治会の活動について。例えば、地域住民の親睦、防犯、清掃、防災、お祭り、歳末募金など、地域の自主的な活動への支援強化に私は誰も異論はないと思います。本条例の最大の問題は、何のために町会・自治会活動の活性化を推進するのか、その目的です。条例の目的について、前文および基本理念にあるとおり、品川区が担うあらゆる事業を住民同士の助け合い、支え合いに置きかえ、その担い手となるよう町会・自治会を位置づけ、しかも、加入しているかどうかにかかわらず、区民全体を対象に、自ら進んでその活動をするよう求めるものです。つまり、何でも町会・自治会に仕事を押しつけ、全区民がこの活動をするよう求める押しつけ条例です。

条文に沿って説明すると、前文にて、子どもたちの健全育成、高齢者の生活支援、安全・安心なまちづくり、災害への備え、震災など有事など、具体的な品川区の事業を挙げ、区の役割を区民の助け合い、支え合いに置きかえ、これを今まで以上に力を合わせて取り組んでいくことが重要と明記、そして、そのためには地域コミュニティの核である町会および自治会の活動をさらに活性化と記しました。まさに、区の事業を、区民の助け合い、支え合いに置きかえ、町会・自治会が担うことができるように町会・自治会を活性化させることが本条例の目的です。

さらに、第3条、基本理念に、町会または自治会の一員として、自主的・主体的に活動するようと記し、この条文の主語を「区民が」と明記です。これは、区の事業を担う新しい役割を位置づけた町会・自治会の活動に対し、全ての区民を町会・自治会の構成員とし、かつ自主的・主体的に活動するようと、行動を求める規定です。これは、自分たちのまちは自分たちで守る、支えると、熱心に町会・自治会活動を進めてきた役員や会員の熱い思いを巧みに利用し、行政の肩がわりをさせ、同時に、全ての区民を町会・自治会の構成員に位置づけ、その一人ひとりに、自ら進んで活動するよう行動を求める規定です。これは町会・自治会活動に対する行政による不当な介入であると同時に、全区民に活動を求める行動の強制にほかなりません。この点について、区民委員会で、地域活動課長は、町会・自治会長との意見交換で、自由な活動が失われるのではないかとの懸念の声が実際にあったことを紹介し、第5条、区長は、町会および自治会の自主性および主体性を尊重しなければならないとの条文を根拠に、町会・自治会の活動を拘束するようなことがないよう配慮したと説明します。しかし、条例が定める基本理念、「活動するよう」などと行動を強制する規定に対し、尊重や配慮とは、行政による、自由な自主的活動への不当な介入や拘束を許さない担保には到底ならず、担保と言うならば、自主性および主体性について、区長は守らなければならないまたは妨げてはならないと記すべき性格です。

また、「町会・自治会の責任、仕事量が増えるのでは」との質問に対し、地域活動課長は、「この条例ですぐに仕事が増えることはございません。ただ、自主的な活動を町会・自治会がやっていきたいというものに対しては仕事量は増えるかもしれません」と答弁、すぐに増えないとは、しばらくたってから自主的という名で仕事が増える。まさにここが本条例の問題点です。

なお、条例作成の背景に、地域住民による共助の重要性を再確認した事例として、阪神・淡路大震災や東日本大震災などを挙げますが、いずれも甚大な被害が起きた最大の原因は、住民同士の助け合いが弱かったからではありません。住宅倒壊や火災発生、震災関連死を防ぐなど、被害を防ぐための予防対策、津波から住民の命、暮らしを守るまちづくりや、実効性のある避難計画などが圧倒的に整備されていないことが最大の原因です。

最後に、豊かな地域社会をめざしていくに当たり1点述べます。それは、何でも自己責任、住民同士の助け合いに置きかえるという重大な間違いとあわせ、何でも行政に任せるも、また間違いだという点です。地方自治とは一体何でしょうか。全国町村議会議長会編集の「議員必携」では、地方自治について、地方公共団体がその判断と責任で行う団体自治と、その事務事業の実施を住民の意思に基づき行う住民自治と2つの要素を、団体自治は地方分権の原理を示し、住民自治は民主主義の精神をあらわすものと考えられるが、一般的には住民自治が地方自治の本質的要素であり、団体自治はその法制的要素とし、住民自治が地方自治において、その役割を発揮するには団体自治が必要であり、逆にまた、住民自治のない団体自治は真の地方自治とは言えないと説明しています。私は、町会・自治会は、地域の生活環境を守り、より住みやすい地域社会をつくるために、日常的にも、災害時にも、あらゆる場面において、住民の自主的・主体的な活動によってその力が十分に発揮できるように支援することはとても重要だと、冒頭でも述べました。それは、住民同士が行うことで、行政ではなかなか対応に苦慮する地域事情、ごみ出し、ご近所トラブル、夫婦げんか、時にはご近所が子どもの親がわりのように叱ったり、食事をともにしたり、家族のいざこざにも向き合うなど、長年培ってきた、お互いに顔が見えるご近所の底力によって解決していく、こうした姿は、今でも多くの地域にあります。重要なことは、自分たちが暮らしている地域をよりよい環境にしていくためには、自分たちで何ができるのか。こうした住民自治の発揮と、これらを発展させる地方公共団体に、活動の強制ではなく、まさに地方自治、民主主義の発揮こそ重要なのです。

あわせて、自由な活動の強制を求めるこの動きは、海外で戦争する国づくりをめざす戦争法との関係もよく見る必要があります。もともと部落会町内会と言われた住民組織が全国的に整備され始めたのは、日中戦争が第二次世界大戦へ拡大する大正時代、その後の内務省訓令で、上部団体として市町村での連合体、下部団体として隣組組織を持ち、1942年には大政翼賛会の下部組織に入り、部落会町内会は、国民を経済的、政治的、思想的に統制するとともに、国防への参加を強要する国家施策に国民を巻き込む末端組織として重要な役割を自ら進んで担わされるように位置づけられました。このことが、敗戦後に、占領軍によるこの組織の解散、禁止を招くことになったのです。現在の町会・自治会について、区は、下部組織であるような認識は全くないと否定しますが、こうした部落会町内会が、戦争の道具として強制的に、または自ら進んで行うように利用されたことへの反省を決して忘れてはいけません。予算委員会にて、日本が直接武力攻撃を受け付けていなくても、日本の存立危機にかかわると政府が判断すれば、政府が品川区を海外の戦争に活用する問題で、区は後方支援だからと、協力は当然と答弁、改めて戦争法による現実的な危険性が明らかになりました。このような安倍政権の暴走から、区民の暮らし、立憲主義を守り抜く品川区政の実現へ、町会・自治会の活動を含め、住民による自主的・主体的な幅広い取り組みの発揮、個性豊かに多様性や違いを認め合う民主主義の力を強めていくことがますます重要です。区民の行動を条例で強制する本条例は、こうした民主主義への挑戦ではないでしょうか。

以上を指摘し、本条例の反対討論を終わります。

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