前のページへ戻る           日本共産党品川区議団TOPへ

いじめ防止対策推進条例に対する反対討論

2016.03.23 石田ちひろ 区議

日本共産党品川区議団を代表して、第41号議案 「品川区いじめ防止対策推進条例」への反対討論を行います。

本条例は、平成25年6月、国が「いじめ防止対策推進法」を制定し、翌平成26年7月には東京都が「東京都いじめ防止対策推進条例」を公布。いじめ問題が社会問題として一層の複雑化、顕在化をしており、区としても、条例の制定をしたいと提案されたものです

平成24年9月に、区内中学1年生が、いじめを苦に自ら命を絶つという、痛ましい経験を私たちはしてきました。亡くなった生徒の親御さんは、なぜ我が子が命を絶たなければいけなかったのか、どのような苦しみを抱えていたのか、今もなお本当のことを知りたいと苦しんでいます。

こうした事態を経験してきた品川区だからこそ、多くの生徒、保護者、関係者の声を聞き、教訓を活かす条例にしなければなりません。多くの区民が心を痛め考え、いじめの防止や解決の思いを強く抱いています。それだけに、声を聞き、条例に反映させなければなりません。

しかし本条例は、問題点が多く指摘されてきた国の法律を横引きしたものです。重大な事態を経験してきた品川区だからこそ、教訓を活かし、生きた条例へ抜本的な改善が必要です。以下、具体的に求めます。

まず、いじめ防止の条例策定の際、なによりも重視すべきは、子どもの命を最優先に守ることを、私たち大人が、態度を明確に示すことです。子どもがいじめられずに安全に生きる権利を持っていることを明記し、それを保障する条例であることを明確にし、子どもの人権を保障する子どもの権利条約にもとづく立場を明らかにすることです。

区は、「前文に含まれている」と述べますが、区がどのようにいじめを防止しようとしているか、立場を示す大事な部分です。子どもの命を守り、人権を保障した、子どもの権利条約にもとづく立場を明記すべきです。

条例第4条には「いじめは行ってはならない」「傍観してはいけない」と明記。また、第15条には、いじめ防止のため市民科学習の充実で規範意識を育てる旨の条文があります。

いじめは子ども達の成長途上で、どの学校でも誰にでも起こりうるものであり、教育の営みの中で解決していくのが基本。条例で禁止すべき性格ではありません。何が間違っているか理解できず、禁止をかかげても、こうした対応は、逆に鬱屈した子どもの気持ちをゆがめてしまうことにもつながりかねません。条例で定めるべきは、子どもがいじめられずに安心して生きる権利を保障することを大人の役割と示していくことです。

また、市民道徳の教育は重要です。しかし、道徳の名で規範意識を押し付けることは、いじめを隠し、解決を遅らせ、さらに陰湿化させる危険があります。何よりも、子どもが人間として尊重されるべき存在であることを伝え、学校運営・学校集団の中で子どもの自由な発言や参加を保障していくことで、子ども達は自分自身の大切さを知り、人と人との間で生きる喜びや友情を感じながら成長していくことができる。子ども達の自主性を育て、いじめを止める人間関係をつくる、このような人権教育こそ重要です。

また、いじめをした子どもへの対処も大切です。大事なのはいじめた子がいじめを反省し、いじめをしなくなり、人間的に立ち直るまで徹底したケアを行うことです。厳罰主義は鬱屈した心をさらにゆがめるだけです。いじめをする子の多くが、かつていじめを受けていたり、いじめに走る要因となる悩みやストレスを抱えています。その苦しい状況に心を寄せ、立ち直りの支援を行うことを明確にすべきです。

そして、いじめを受けた子どもやその保護者の、真相を知る権利を保障することも重要です。品川区での痛ましい経験でも、子どもを失った親御さんの、真実を知りたいと言う思いは、裁判にまで及んでいます。重大事態の事実関係の調査結果は被害者やその保護者に原則公開することを明確にすべきです。

最後に、学校での取り組みは「いじめの解決はみんなの力で」を原則に、教職員がいじめを発見したときは、全教職員が情報を共有し、学校全体で知恵と創意を結集して対処することが重要です。そのためにも、教職員が一人ひとりの子どもと向き合える時間の確保が必要です。多くの生徒、保護者から「先生は忙しい」「相談するのも申し訳ないほど忙しそうだ」と声が寄せられます。いじめ防止には、教職員の多忙化の解消が急務です。少人数学級の実施や長時間労働の解消など、教育条件の整備を強く求めます。

以上、本状例に、子どもの命を守りぬく立場を明確にし、いじめの禁止や規範意識の強化ではなく、子どもの命、成長を第一にした教育活動の支援へと転換を求めて、反対討論を終わります。

ページトップへ

前のページへ戻る           日本共産党品川区議団TOPへ