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鈴木ひろ子区議 第42号議案「品川区国民健康保険条例の一部を改正する条例」に対する反対討論

2018.03.27 鈴木 ひろ子 区議

日本共産党区議団を代表して、第42号議案「品川区国民健康保険条例の一部を改正する条例」の反対討論を行います。

今回の改定は、2015年度に安倍自公政権が通した「医療保険改革法」がいよいよ実施に移され、新年度から「国保の都道府県化」の制度に大きく変わるものです。これまで品川区によって運営されてきた国保が、東京都と品川区が共同で運営する制度となります。この狙いは、自治体が独自に保険料の負担軽減のために行ってきた一般会計からの法定外繰り入れをやめさせて、その分を国保料の値上げで賄わせることによって、限界を超える保険料値上げの痛みを実感させ医療費を削減していくことです。安倍政権が社会保障の自然増を削減するため、国民犠牲と強権的手法で給付費を抑え込み、医療を切り縮めていくものであり、反対です。

はじめに、これだけ重要な条例審査であるにもかかわらず、必要な資料が議会に示されなかった問題を指摘します。国保運営協議会に示された資料はA4版が17ページでした。ところが厚生委員会の説明資料はA3版2枚だけ。国保運協資料はホームページに掲載されているからとの説明でしたが、ホームページ掲載を委員会資料削減の理由にするのは間違いです。しかもホームページ掲載は委員会の前日夕方でした。国保運協資料から、平成30年度基準保険料算定における基本的な考え方、国及び東京都における激変緩和措置額について、モデルケース保険料試算一覧、品川区の被保険者数、収納状況、など基本的な資料が削除されました。昨年も国保運協資料を削減した資料について指摘し、改善を約束したにもかかわらず、更に大幅に削減、これは条例を決定する議会の役割を軽視する重大問題です。今後、このような事のないよう改善を求めます。

以下具体的に反対の理由を述べます。

第1に、一般会計からの法定外繰入を全面的になくし、その分を国保料の値上げとする仕組みに変えることで、とてつもない値上げに踏み出す問題です。

2014年に全国知事会は提言を出し、「国保料は負担に耐えられる限度を超え、国保運営が破綻する恐れがある」せめて「協会健保並みの保険料にするよう財源の手当てが必要だ」と国に迫り、国も国保の構造から来る問題として「所得に占める保険料負担が重い」と認めていました。

ところが、安倍自公政権が打ち出した「改革法」は、国保料引き下げに国庫負担を増やすのではなく、自治体が負担軽減のために一会計から繰り入れてきた法定外繰入まで全面的に廃止する方針を出し、都道府県化によって東京都と品川区が一体となって実施に移す仕組みとしたのです。

品川区は23区統一保険料を採用し、6年間ですべての法定外繰入を廃止するとしました。廃止した場合の一人あたりの国保料は15万8528円と試算、今年度の12万6000円から3万2000円もの値上げをするものです。

国保料は、算定方式の変更や高額療養費の法定外繰入廃止などで毎年大幅値上げが続けられ、すでに支払能力の限界を超えています。たとえば、40代夫婦子供2人の4人世帯年収500万円の給与所得者の場合、2010年36万2000円だった国保料が今年58万1000円に、8年間で22万円もの値上げです。年収500万円の所得は346万円、月29万円です。今年すでに所得の2カ月分に当たる国保料を、さらに6年後まで値上げ続ける過酷なやり方です。

今でも約2割が滞納世帯、国保料の大幅値上げはさらに滞納者を増やすことになります。

2つ目には、品川区が収納率を上げるため、区民を追い詰める厳しい取り立てや差押えなどがさらに進められるのではないかという問題です。

品川区の収納率は23で1番。差し押さえ率は2番です。その影で、ギリギリの生活の方が厳しい取り立てによってどれほど追い詰められているか、この間本会議や委員会でも紹介し指摘してきました。

品川区の差押えは772件・7%に上ります。これは大田区の7倍、目黒や港の3倍強、渋谷区はわずか11件。他区に比べて異常に多い件数は、「最低生活費は差し押さえ禁止財産とする」国税徴収法に対して、「預金口座は差し押さえ禁止財産の属性を継承しない」とする品川区の考え方から来るものです。今議会でも改めることを求めましたが、今まで通り行うとの答弁でした。

東京都は特別交付金と、自治体職員への研修で収納率向上を迫っています。今後、国保の運営方針をもとに更に収納率向上を求めてくることが予想されます。東京都の研修は黒塗り部分が多く、区民に公表できない中身です。受けた自治体はわずか3自治体。品川区が希望して受けた事がわかりました。

あらためて、滞納相談は、いかに取り立てるかではなく、なぜ払えないのか、区民の生活実態や抱える困難を把握し、様々な部署に繋ぐことも含めてどうしたら生活再建が出来かを相談者の立場に立って行うよう転換を求めます。

第3に、国保制度は相互扶助の制度ではなく、国が責任をもつべき社会保障制度だという問題です。

厚生委員会では、理事者や他党の委員から「国保は保険であり、相互扶助の制度」との発言がありました。しかしこれは間違いです。

国保は、戦後10年余経った1957年の厚生白書で「医療保険のない国民は総人口の32%に及び、保険証のない国民がひとたび病気になると多額の医療費が必要となり、貧困に陥る」と述べ、病気と貧困の悪循環を断ち切るために1959年、国民皆保険制度としてつくられました。

第1条で、「社会保障」を明記、旧法の「相互扶助の精神」の文言が消えました。戦前の助け合いの制度から社会保障の制度へと明確に変わったことを示しています。国保法第4条には国の責任を明記、第5条、第6条では国民皆保険を謳っています。支払い能力を給付の条件にすることなく、他の医療保険に加入できない人すべてを被保険者とする制度としました。保険料が高すぎれば、負担に耐えられない層を生み出し、制度そのものが揺らぎます。そうした事態を避けるためにも国庫負担が絶対必要な制度として出発したのです。 

ところが国は国庫負担を削減し続けてきました。それに加え、都や区が税金投入を減らし続け、国保料を値上げし続けてきた、その結果が、「高すぎて払えない」実態をつくってきたのです。国保の加入者は世帯主でみると、無業者とワーキングプアで8割を占め、多くが低所得世帯です。品川でも1世帯の所得平均は110万円にすぎません。さらに65〜74歳の全人口の76%が国保に加入。定年後はほとんどの人が入る保険であり、一部の人の保険制度ではないということです。

社会保障制度の基本は、生存権の保障です。誰もが命を守り人間らしく生きる権利が保障されるということです。財源の集め方は、能力に応じた応能負担を原則とし、所得の再配分を行うこと、最低生活費からはとらないという生計費非課税の原則の徹底などは、長い間の国民の運動によって勝ち取られたものです。今回の国保の都道府県化はこれを逆戻しするものです。

これ以上の国保料値上げではなく、国庫負担増こそ国保再建の道です。保険料が高すぎで払えないため保険証を持てない。そのために医療にかかれず手遅れで命を落とす事態をこれ以上広げるわけにはいきません。

一般財源からの法定外繰入の継続、さらに削減分ももとに戻し、高すぎる国保料の引き下げこそすべきです。更に、都内でもいくつかの自治体が実施している、子どもの均等割軽減制度の創設を求めます。国の悪政から区民の命と健康を守るため、区民の負担軽減の努力をすることは当然の自治体の役割です。

以上で、反対討論を終わります。

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