2018.03.27 安藤 たい作 区議
日本共産党品川区議団を代表して、平成30年請願第11号「区画街路と京急北品川駅の広場建設に関する請願」への賛成討論を行います。
北品川駅では、京急線の高架化により、地域の長年の願いだった3つの踏切解消が実現することになりました。しかし品川区は、これを利用して駅前広場と道路の都市計画案を持ち出しました。約1300uの駅前広場整備により土地建物の買収が発生し、立ち退きは3棟の建物で登記上で20人との区の説明です。また、第一京浜から広場へのアクセス道路整備により、清水横丁が幅12bの道路に拡幅され、横丁がなくなります。都市計画手続きには50件を超える意見書が提出され、そのほとんどが反対や計画案の変更を求める内容でした。
本請願は、1053名の署名を付して、こうした区の都市計画案に対して、立ち退きを伴わない範囲にとどめる計画にすることと、横丁を残すよう求めるものです。
以下、請願へ賛成の理由を3点述べます。
1点目は、計画の内容が、住民を立ち退かせ、旧東海道の歴史的資源を壊す「街壊し」になるという問題です。
「いつまでも祭りを続けられるまち」を合言葉に景観まちづくりに取り組んできた旧東海道まちづくり協議会の方々をはじめ、この街を作り、つないできたのは、何といっても地域住民や商店の方々の日々の生活の営みです。区は地域交流の核となる広場を整備すると言いますが、こうした方々を追い出しての交流の場など存在するのでしょうか。「住んでいる方々を立ち退かせてまで広場や道路が必要なのか」「義理人情のある、いまだに人と人の繋がりが強い下町ならではの地域。古くから住んでいる住人を無理に立ち退かせないで下さい」など多くの疑問の声が上がっています。
また、区の景観計画では、ここ旧東海道地区は重点地区に指定されています。計画では当該地区を「多くの家屋が建て替わり、かつての宿場町のまちなみは希薄になりましたが、しかし歴史を伝えるまちの記憶は道路や敷地の形状、路地や横丁などに残されており、それが地域文化として息づいています」と述べた上、「このような地域固有の資源を積極的に取り入れて、旧東海道の歴史と地域の文化を活かして、個々の建物が周辺の環境や街並みと調和の取れた景観づくりを進めていきます。」と目標を定めています。
旧東海道の道幅は当時のまま残されています。天王洲、東品川、大崎・五反田など、品川宿の周辺をとりまくように超高層再開発が行われていますが、都心近くに残された歴史を刻む街並みは、むしろ差別化され、貴重なまちの価値を生み出しています。
清水横丁は、東海道から高輪、大崎、居木橋方面の三方向に向かうための分岐路であり、東海道と周囲地域との重要な結節点で、品川宿の歴史を語る上でも貴重な存在です。
今回の広場と道路により、旧東海道の道幅も大きく変わり、清水横丁も消滅。これまで大事に守られてきた歴史と文化を壊すことは許されず、区自らの景観まちづくり方針にも反するものです。
区のこの地域への無理解を示すのが、本計画案のパンフレットでの「駅周辺の道路は、歩道のない、狭い道路が多いため、駅利用者や歩行者、自転車等が錯綜し、通行しづらい状況になっている」との課題の記述です。住民からは「旧東海道の歴史的な背景から成立したこれらの道路は課題ではなく、むしろ非常に貴重な景観で、歩行者や自転車が通行の中心になっているということだ。取り付け道路を新設し自動車の乗り入れを可能にすることは、逆に自動車を通行の中心にするものであり残念。本計画作成に関わる方は、まちを歩いて、歴史に触れ景観を捉えなおしてほしい」との厳しい声も出ています。区は、机上で勝手に作成したまちづくり方針をこのまちに押し付けるのはやめるべきです。
2点目は、広場や道路が、地域の要求や必要性から出されたものではなく、再開発を進めるためのものだという問題です。
区は、駅利用者による車の駐停車が第一京浜に発生し、円滑な交通や乗降者等の安全を十分に確保できていないことを課題に挙げ、タクシーやお身体の不自由な方が利用する車両等の乗降ができるように駅前広場の整備が必要とも述べています。しかし地域住民の実感では、第一京浜の渋滞の課題は全く生じていません。また、乗降スペースの確保と言うなら、このような広い空間は必要なく、第一京浜をわずかに削り駐停車スペースを確保したり、現在駐車場や空き地になっている空間を活用すれば十分可能で、住んでいる人を追い出す必要は全くありません。
そもそも、各駅停車の北品川駅の旧東海道側にタクシー乗り場を造る必要性がどれだけあるでしょうか。自宅からタクシーで駅に行くなら700メートルしか離れていないターミナル駅・品川駅まで行くのが普通です。高架化すればタクシーは第一京浜で簡単につかまります。現在の北品川駅の乗降客もほとんどは徒歩利用者です。身体の不自由な方や現実に存在しない問題まで持ち出して、地元が反対する広場建設を合理化するのは許せません。
地元住民が反対し、必要性もない広場や道路をなぜ強引に進めるのか。それは、これらが、将来の品川駅南再開発の布石になるからです。タクシー乗り場は地域住民の利便性向上というよりも再開発ビル利用者の利便性が目的です。また、取り付け道路である区画街路第7号線は、今回の計画で第一京浜から旧東海道までつながります。しかし将来の再開発計画には、更にそこから八ツ山通りまでつながる道路が示されています。つまり、再開発予定地域へのアクセスを向上させそのポテンシャルを上げるための、再開発と一体の計画。更にその再開発そのものも、都営住宅を追い出し、超高層を林立させ風害や日照やインフラパンクなど問題を生じたうえに、莫大な税金も投じる大手不動産会社の利益が目的の問題だらけの計画です。
「旧東海道まちづくり協議会」の皆さんは、この点で、「本計画案は、旧東海道周辺のまちづくりに極めて大きな悪影響を及ぼし」、「このまま進めることには強く反対する」とし、自動車のアクセス機能は第一京浜側に最小限の機能とする設計変更と、道路建設の中止で清水横丁の保全を求める意見書を提出。どこにでもあるような再開発型のまちづくりへ警鐘を鳴らしています。
スクラップアンドビルドの再開発ではなく、従来の歴史と街並みを生かしたまちづくりへの転換を求めます。
3点目は、地域住民の反対の声が出されているにも関わらず、権利者すら無視して進めようとしている都市計画決定手続きの問題です。
都市計画法16条では、都市計画案の作成段階での住民意向の反映を目的に、公聴会等の開催を規程しています。区が進める再開発では、まがりなりにも「地区内の関係権利者」を対象に計画原案説明会を開催し、公告・縦覧、意見書提出の機会を設けた上で、計画案を策定。その上で、地域住民を対象にした計画案の説明会を開いています。ところが、この広場と道路計画では、地権者向けの説明会がないまま、計画案が策定されました。委員会審査では「説明会の前に該当する地権者には事前に意見を聴いたり情報提供すべきだったのでは」との質問に、区は「説明会を行った後に、事業者として権利者の方に当たっていくというようなスタンスでございます」と答えました。あまりに地権者軽視、財産権軽視です。なぜ同じ都市計画なのに、再開発ですら行っている地権者向け説明会を行わないのか。地権者向けの説明会を開き声を聞くべきです。
最後に、この問題に対しての区長の不誠実な姿勢について述べたいと思います。
昨年11月のタウンミーティングでは、駅前広場の見直しを求めて区民が意見を述べました。区長は「広場というのが本当に駅の機能として必要なのかどうか。駅は駅の交通、電車の乗り降りに特化してもらいたいという考え。京浜急行も営利企業なので、営利企業という考えのもとで活動していくと思うが、行政としては駅としての機能を第1にと申し上げていきたい」と回答。それを聞いた立ち退きの危機に立たされている方は、目の前がぱっと明るくなったことと思います。しかし先の一般質問で区長は、「上位計画であるまちづくりビジョン等に基づき、交通の結節点としての機能と地域交流の核となる拠点としての機能を兼ねる計画として進めているもので、撤回の考えはない」と手のひらを返しました。委員会で追及すると「区長からの命を受けまして京急などと調節している。一貫して駅前広場づくりにつきましては区として進めている。何らぶれているものではない」との答弁。はじめから区長は、広場を見直す考えなどなかったということです。区民の前では本心でないことを平気で言い、その場を逃れればいい。こんな二枚舌が許されるのでしょうか。こうした不誠実極まりない区長の元で進められる都市計画とは何なのか。撤回されてしかるべきです。
以上の点から、この計画は一から見直し、住民本位のまちづくりを進めるべきです。以上で請願への賛成討論を終わります。