2020.10.22 鈴木ひろ子 区議
日本共産党区議団を代表し、令和2年請願第13号「加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的補助制度創設を求める請願」並びに、令和元年陳情第43号「高齢者への補聴器購入費用の助成を求める陳情」に対する賛成討論を行います。
今回の請願は、加齢性難聴は日常生活を不便にし、コミュニケーションを困難にするなど生活の質を落とし、さらに、うつや認知症につながる可能性を指摘。聞こえの悪さを補完し、音や言葉を聞き取れるようにする補聴器は、高額で保険適用とならないため、他国と比べても極端に使用率が低いと訴え、高齢者の社会参加、心身ともに健康で過ごせるよう、補聴器購入の補助制度の創設を求めています。また、陳情は、同趣旨のものであり、昨年の11月議会で継続審査となっていたものが再度審査されたものです。
以下、賛成の理由を述べます。
第1に、加齢性難聴は高齢者の約半数の人が抱える問題であり、難聴者の早期診断、補聴器の早期着用が日常生活の質の向上に有効だということです。そして、今回初めて区が早期着用の有効性について認める答弁を行いました。
品川区は、昨年11月の陳情審査では、補聴器の早期着用の有効性について「早期がいいのか、あるいはもう少し進んだ段階でいいのかも含めて総合的に判断したい」と述べ、早期着用の有効性についての認識を示しませんでした。
しかし今回の審査では「補聴器を加齢性難聴の方が早期につけることがいいという専門家、耳鼻科等の方の見解については重々認識をしており、同様の認識だ」と答弁。初めて、区が早期着用の有効性について認めました。これは補聴器補助制度実現に向けた大きな前進です。
2つ目に、区が補聴器補助を行わない理由の一つに「購入しても使わない人が一定数いること」「使用率が低い事について、正しい理解の啓発は専門機関が行うべきであり、区が行うものではない」とのべている問題についてです。
なぜ購入しても使わない人が多いのかといえば、本人が聞き取れるようにするための調整やトレーニングの必要性が理解されていないため、十分行われず、補聴器の効果が実感できないためです。
欧米では補聴器販売業者に専門的知識を持つ国家資格を義務付けており、難聴者が補聴器を購入する場合、医師の診断、有資格者による聴力検査やフィッテイング・調整が徹底されています。そのため、補聴器保持者の満足度は約8割に上っています。ところが日本ではこの仕組みが確立されていないため、満足度は4割にも満たない状況です。
補聴器の調整とトレーニングそのものは専門家しかできません。しかし重要なことは、専門家によるその人に合わせた補聴器の調整とトレーニングが必要だという理解を広げることです。区は、この理解の啓発を専門機関にだけ任せると言いますが、品川区もできることですし、高齢者の支援としてやるべきことです。また専門機関につなげることも区が行うべきことです。
3つ目に、区は、「国内調査で、経済的な理由で補聴器を購入しない人は少数である」「補助制度がないことが普及しない理由とは考えていない」と述べていますが、実際は補聴器が高額であることが普及を妨げているという問題です。
補聴器は片耳で5万円から30万円、平均でも15万円と高額です。年金暮らしの高齢者にとって購入をためらう大きな要因となっています。
区は「経済的な理由は少数」と述べていますが、日本補聴器工業会の調査では「補聴器を使わないトップ10」で「補聴器を購入する経済的な余裕がない」は、24%が理由に挙げています。これは決して少ない人数とは言えません。
ヨーロッパの多くの国では補聴器の購入費補助があるため、個人負担はないか、あっても少額です。そのため、日本の難聴者に対する補聴器所有率14%に対して、ヨーロッパでは40〜50%になっています。23区でも9区が補聴器購入費助成を行っています。
区は、私の一般質問で「補聴器が必要な方には障害者手帳による障害者福祉サービスを受けていただく」と答弁しました。しかし、その対象は、聴覚障害6級以上の手帳保持者、高度・重度の難聴者で、800人にも満たないごく一部の難聴者です。補聴器を必要とする一般的な加齢性難聴者は対象になりません。
日本補聴器工業会の調査によると、「補聴器は生活の質向上に寄与し大変良い影響を与えている。 特に、『安心感』『会話のしやすさ』『自分自身の気持ち』『自信』『精神力・気力』『社会的活動』など多くの改善が見られると述べ、補聴器使用者の87%が生活の質の改善に役に立っている」と答えています。
区議会でも、他党からも区長あてに補聴器補助の要望が出されていたり、厚生委員会の審議でも「加齢性難聴者への補聴器の有用性や有効性は誰もが認めるところ」などの意見も出されました。
品川区が補聴器購入費の助成制度をつくり、補聴器の早期使用の有効性や調整の必要性について理解を広げることが、高齢者のコミュニケーション・生活の質の改善、その人らしい生活を取り戻すことにつながります。
以上請願・陳情への賛同を呼びかけ、賛成討論とします。