2020.10.22 のだて稔史 区議
日本共産党品川区議団を代表し請願第11号大学生に返還免除規定を持つ奨学金制度の創設を求める請願に賛成の立場で討論を行います。
この請願は品川区が高校生対象に行っている現在の返還免除型奨学金を大学生まで拡大することを求め、区内の大学生から提出されたものです。以下大学生の給付型奨学金を求め賛成理由を2点述べます。
1点目は家庭の経済力によって子どもの教育機会を左右することがないよう区も支援をすべきだということです。
昨年、同趣旨の請願の際にも述べましたが、日本の学費は世界でもトップクラスの高さであり、その上に値上げが続いています。世界では国連人権規約で高等教育の漸進的無償化が明記され、無償化が進んでいるにもかかわらずです。高い学費のために学資ローンとなる奨学金を借りるか、学費を自分で稼ぐか、苦悩する学生がいます。高すぎる日本の学費への支援が必要です。
区は国が法整備を行い、東京都や大学など様々な事業者が奨学金制度を実施していることを理由に、「区として大学までの奨学金を創設する考えはない」との答弁ですが、そもそも国の制度では対象が狭すぎます。現在奨学金を受けているのは学生の約半分ですが、国の制度では1割しか対象になりません。区は学生への支援が十分だと考えているのでしょうか。
港区では国の給付型奨学金制度を基準に、区独自の給付型奨学金制度を2割の大学生や進学予定の高校生を対象に来年度から実施します。国が支援対象としている年収約270万円未満の世帯について国の支援額の上限約142万円まで区が補填し、国の対象とならない年収約480万円未満の世帯については段階に応じて支援をするものです。品川区でも家庭の経済力に関係なく教育の機会を保障するために大学生への支援に踏み出すべきです。
また区は高校生の返還免除型をやり始めたばかりとの理由で「創設の考えはない」とも答弁していますが、高校生への支援をしていることを理由に大学生をやらない理由にはなりません。大学生の抱えている困難への支援が必要です。請願書にも昨年の審議について触れられていますが、国や都の動向を注視していては基本4年間の大学生活は過ぎ去ってしまいます。当事者にとっては切実な問題なのです。
2点目は学生がコロナ禍で大変な状況になり緊急性が求められていることです。
春休みに新型コロナの感染が広がり、4月を過ぎても学校が始まらず、学費や生活費をアルバイトで稼いでいた学生はアルバイト先が休業や閉店、シフトに入れず収入が大幅に減り、支払いができるか不安を抱えています。保護者もコロナ禍で派遣切りにあったり、解雇されたりと収入が大幅に減り援助を求めることもできません。高等教育無償化プロジェクトFREEの4月公表の調査結果では約2割が「退学を考えている」と回答。8月の立命館大学での調査でも退学を検討している学生が約1割、休学を検討が4人に1人という結果で深刻な状況です。
しかも授業が再開されてもオンライン授業で回線状況などにより途中で途切れるなどまともに授業を受けられず、わからないところを具体的に質問することも難しいなど高い学費にも拘わらずオンライン授業で講義の質が下がったとの声が挙げられています。さらに深刻なのが、実習が必要な学科です。医療や介護、農業、美術などの大学では実習ができない状況が続いています。こうした状況にもかかわらず今までと同じ授業料ではおかしいと当事者からも不満の声が挙げられています。「通信費を払えず大学の課題が提出できなかった」との声や、校内に入れない、図書館など大学の施設が使えないなどの制限がかかっており「学費を払っているのに大学の施設を使えないなんて納得できない」との声も上がっています。
また大学生活は授業だけでなく研究室やサークルの活動、友達との交流など様々な経験をする場でもあります。これまでのようなキャンパスライフを過ごせない学生に寄り添う行政運営が必要です。
大田区では補正予算で区の貸付型奨学金を借りている大学生や専門学校生に対して、アルバイトなどの収入がなくなり生活が困窮していることを受けて1人15万円の給付型奨学金を支給します。品川区も早急に大学生への支援に踏み出すべきです。
もともと日本の大学の授業料は高く、奨学金の返済や学費のためにアルバイトするなど大変な状況の中、コロナ禍によってさらに深刻な状況に追い詰められている学生を国の支援では不十分なのですから地方自治体の支援が求められています。
以上、各議員の皆さんにも請願への賛同を呼びかけまして賛成討論を終わります。