2020.10.22 安藤たい作 区議
日本共産党品川区議団を代表し、第60号議案「品川区地区計画等の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」へ反対する討論を行います。
本条例は、区が8月に決定した東五反田二丁目第3地区の区域内における建築物の用途制限、容積率や高さの最高限度等を定めた地区計画を条例に位置づけ、コロナ禍の下でも新たな超高層再開発計画をスタートさせるものです。これまでの最高容積率300%は逆に最低基準となり、最高容積率は現行の2倍以上の650%に。当該地域には現状、4階建てまでしかありませんが、地区計画決定と本条例改正により、約40階・151メートルの超高層ビル建築が可能となり、北側にある日野学園の日照が大きく損なわれます。開発計画の概要は、オフィスビルとマンションの計2棟の超高層ビル、住宅は約390戸、総事業費は約700億円、税金である補助金は約91億円との説明です。昨年9月の準備組合による住民説明会では、参加者から日野学園や周辺住居への日影など近隣住環境への懸念の意見が続出。議会にも近隣の子育て世代の方から、子どもの教育環境への影響を心配し計画変更を求める陳情も出されていました。
以下、反対の理由を3点述べます。
第一は何よりも、新たな超高層再開発ビルが日影や駅の混雑、学校・保育園不足など様々な悪影響を生み出す問題です。
建設委員会の審査では、周りの建物全ての日影を考慮した場合、いわゆる複合日影を準備組合がシミュレーションした結果、冬至で1時間から2時間程度しか学校に日が当たらない旨の答弁がありました。既存の周辺の再開発等超高層ビルに加え、今回の開発で新たに加わる日陰も合わせ1時間から2時間程度しか学校に日が当たらなくなる。これを把握しているにも関わらず、開発を進める区の姿勢は大問題です。
超高層ビルは他に、地震や風水害の危険を招き、局地的な人口集中は周辺駅ホームの大混雑、少人数学級で教室の不足も予測される学校や保育園待機児問題など、インフラ問題も深刻になります。コロナ禍によるオフィス・都心離れなど社会情勢の変化も見通される中、これまでと同じ発想で新たな超高層再開発を変わらず続けることは許されません。
第二は、まちづくりは住民が主人公のはずなのに、再開発はディベロッパー主導のまちづくりだという問題です。今回の建築物の高さの最高限度は151メートルですが、これは航空法ギリギリ。区は、地区計画や条例に定める高さの設定の理由に、防災や賑わい、潤いなど様々挙げますが、要するに、事業協力者の竹中工務店の利益最大化のために、建てられる限度ギリギリの数字にしているに過ぎません。
再開発とは、開発企業いわゆるディベロッパーが地権者に差し出させることによりタダで手いれた土地の上に、超高層ビルを建てる。ディベロッパーは地権者に元々の資産にみあったビル床を与えますが、それ以外の床は、建設原価相当の安価で「保留床」として手に入れます。なるべく高く建物を建てた方が、活用できる延べ床は多くなり、マンション販売等で得られる利益も増やせることになる。それゆえ再開発ビルは自ずと超高層になるのです。
建設委員会の審査では、条例に賛成した複数の委員からも、「土地、財産を差し出して開発に協力しているが、企業利益のために等価交換により既にある自分の持ち分よりも減ってしまうケースばかりがここのところ見受けられる…できてしまった後、こんなはずではなかったというような声が多く聞こえる」「協力事業者の利益追求型の開発は時代に合わなくなってきているのでは」との声、また、「企業側の考え方、住民の考え方…ぶつかりあうところがある。今後の再開発の在り方については更に考えていただきたい」など、財産権や居住権など地権者の権利をないがしろにしディベロッパーの利益を優先する、現在の再開発の在り方への疑問の声も出されました。さらに、決算委員会においても複数の委員から「人口を勘案しないまま高層化し適正規模を超えてしまうと危険な街になってしまう」「再開発によって逆に経済的不利益を受ける可能性が高い人もいる」「高層化の手法はもう時代遅れではないか」などの懸念の声が出されました。今、大崎や大井町等で地権者も含めた住民の反対の声が挙がっています。住民の声を受け止め、超高層再開発に賛成してきた区議会の姿勢もいよいよ変わらなくてはいけないと思います。
第三は、こうした事業を区は、住民の意見を十分に聞くことなく進めてきた問題です。まちづくりには住民参加は欠かせません。ところが、区が2月に行った都市計画手続きの説明会の参加者はわずか8名でした。これは、区報やホームページのみの周知にとどめ、近隣に周知のビラ配布をしなかったことが原因。区の責任です。一方、昨年9月に準備組合に行わせた説明会では、建築物の高さ掛ける2メートルの範囲、約1万世帯に対し案内のポスティングをやり、2回で延べ256名が参加しました。また、ポスティングによる周知は民間マンション建築でもやっています。それを指導している区自らはやらないとは理屈が通りません。しかも、超高層再開発マンションはその高さと規模から周辺の環境やインフラに大きな影響を与えるだけに、計画を進めるにあたっては周辺住民へ、より積極的に情報を公開、意見を聴くことは最低限の責任です。改善を強く求めます。
最後に訴えたいのは、コロナ禍で区民が未曾有の苦しみにあえいでいる時、いま区がどこをみて仕事をするべきかという点です。この一事業に投じられる91億円もの税金は、PCR検査の抜本拡充や保健所・医療支援、中小零細・個人事業者への直接支援の継続と拡充にこそ充てるべきです。また、開発推進のため、区が体制強化していることも問題です。2016年度からは「立体化担当」と称し再開発を担当する課長を2人体制へ倍増。昨年度からは、庁舎も巻き込んだ広町・大井町開発の特命副区長を登用。更に、今年度は東京都建設局からの派遣・併任という形で都市整備推進担当部長も新たに置きました。これは、区政史上最大の開発推進体制といっても過言ではありません。いま体制強化というなら、保健所や高齢者・障害者福祉、生活保護など福祉の体制強化こそすべきです。
住民から反対の声があがりまた、不要・不急の再開発は道路建設とあわせ見直し、少なくとも延期をすべきです。
以上、あらためて議場の皆様にも本条例に反対するよう呼びかけさせていただき、私からの反対討論を終わります。