2023.07.11 安藤たい作 区議
日本共産党品川区議団を代表して、請願第5号、安保関連3文書・防衛財源確保法に 反対する意見書提出に関する請願への賛成討論を行います。
本請願は、品川区議会に対し、政府が進める反撃能力、敵基地攻撃の保有や、5年間で43兆円の軍事 費増大などの大軍拡方針と、その防衛財源確保法の撤回を求める意見書を提出するよう求める者、市民連合しながわより提出されました。以下、賛成理由を2点述べます。
1点目は、軍拡では平和をつくることはできないし、住民の命も財産も守れないということです。岸田首相は、大軍拡を、抑止力を高めることが日本の平和、守ることにつながると合理化しています。委員会審査でも、委員からは、国を守るためには必要。今の国際状況下で国民、区民を守るための防衛費増額には賛成。国連憲章があるにもかかわらずロシアは侵略した、この事態を受けて国民の命をどう守るかを考えるべき。近隣諸国の関係で時に応じて現実的な対策が必要で、財源が必要であれば議論しなければならないなどの意見が相次ぎました。しかし、抑止とは、相手に恐怖、脅威を与えて思いとどまらせることです。日本が敵基地攻撃能力の保有や軍事費2倍化で他国に脅威を与えたら、相手国は攻撃を思いとどまるのでしょうか。実際の国際情勢を見れば逆のことが起きています。ソ連崩壊後、ヨーロッパには全欧州諸国とロシアを含めた包摂的な枠組みとして欧州安全保障協力機構(OSCE)がつくられましたが、この機能は生かされず、NATO諸国もロシアも軍事力で相手の攻撃を抑止する戦略を進めていきました。ついにロシアは、NATOの軍事的脅威を口実にウクライナに攻め入りました。軍事で構えれば、相手も身構え、さらなる脅威で対抗し、脅威と脅威、軍事と軍事の悪循環に陥る。抑止や軍拡で平和が守れるというのは幻想にすぎません。しかも、今回の国会の質疑を通して、軍拡、敵基地攻撃能力保有の最大の目的が、アメリカが進める統合防空ミサイル防衛(IAMD)への参加にあることが明らかになりました。バイデン米大統領は、3回にわたって大軍拡を岸田首相に求めていました。先制攻撃を基本原則に据える米軍と自衛隊が融合し、相手国に攻め入るなら、報復を招き、日本に戦禍を呼び込む深刻な危険につながることになります。日本を米国の対中国軍事戦略の最前基地に据える、これが今行われていることの本質です。日本を守るどころか、住民はむしろ戦禍の危険にさらされることになるのです。戦争を禁じ、武力の行使と威嚇を禁じた憲法9条を持つ日本が行うべきは、相手に脅威を与えるのではなく、安心を与える外交です。日本共産党は、東南アジア10か国が加盟するASEANの努力に学び、現にある東アジアサミットという枠組みを活用・強化して、東アジアに平和をつくる外交ビジョンを提案しています。日中両国政府に日中関係の前向きの打開のための提言を提唱し、双方から肯定的な受け止めの表明もありました。戦争の準備ではなく平和の準備を、平和をつくり、住民の命と財産を戦争の惨禍から守る唯一の道はここにあります。なお、委員会審査では、「軍拡」という表現はいかがなものかなどの意見もありました。今回、「反撃能力」の名で導入されるのは、他国の領土の奥深くまで攻め込む長射程のミサイル、500発爆買いされる射程1,500キロメートルのトマホークは、イラク戦争で最初に打ち込まれたミサイルで、先制攻撃の兵器そのものです。軍事費がGDP比2%、年10兆円になれば、ロシアをも抜き、日本はアメリカ、中国に次ぐ世界第3位の軍事費大国になります。専守防衛も投げ捨て、他国に脅威を与える軍事費大国になることは、まさに軍拡そのもの。歴史をひもとけば、どんな戦争も自国の防衛を口実にして始められました。ロシアのウクライナ侵略もそうでした。「軍拡ではない。反撃能力だ」など言い換えたとしても、事の本質は何も変わらないと申し上げたいと思います。
2点目は、軍拡により増税や福祉を削減は避けられず、区民の暮らしも壊されてしまうということです。軍拡財源の確保のため、東日本大震災の復興特別所得税や国立病院積立金の流用、建設国債で護衛艦や潜水艦を建造することも可能とされました。今年度国家予算では、社会保障費が1,500億円も抑えられ、中小企業対策費も農業予算もマイナス、さらに43兆円の実現には一層医療・年金・介護が削られ、消費税大増税も必至。限られた財源の中、軍 事費だけは聖域化すれば、国民の命と暮らしが犠牲になることは火を見るよりも明らかです。 最後に、地方議会、区議会は、こうした外交・防衛の問題にどう関わるべきかという点について意見を述べます。委員会審査では、外交・防衛は国の専権事項で、国会で議論すべきという意見が多数挙がり、自民党は、私も戦争反対、気持ちは察するが、国の政策であり、区議会で取り上げて議論する立場にないと、反対表明しました。しかし、戦後の地方自治の原点は、さきの戦争への反省です。戦時下では、地方自治という概念はなく、地方自治体は国の出先機関でした。区役所も、国に住民情報を提供、赤紙を発行し、区民を戦場に送る役割を担わされました。その反省から、「二度と赤紙は配らない」が戦後の自治体職員の合言葉となり、憲法に「地方自治」が書き込まれました。地方自治体は、それこそ憲法前文にあるように、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることがないように国から独立した機関として意見を述べるべき立場にあり、地方自治法は、第99条で地方議会にも国に意見提出の仕組みを定めているのです。そして、何よりも品川区民の命と財産を守るためには、区民の代表である区議会は、戦争の心配のないアジア、世界をつくるためのありとあらゆる努力を尽くすことが求められているのではないでしょうか。非核平和都市品川宣言にある恒久平和、核兵器廃絶、この実現こそ区民が求めていることなのです。品川区議会は、昨年3月、ウクライナを侵略したロシアに対し、国の主権や人々の自由、生命を踏み にじる武力行使は断じて許されない、国連憲章に違反し、非核平和都市品川宣言にも反すると抗議し、軍の撤退を求める決議を上げました。これまで人類が幾多の戦争の惨禍を経て積み上げてきた「戦争はやってはならない」との国際世論、核兵器禁止条約へ署名した国も92か国まで広がっています。この国際世論と固く連帯し、報復と暴力の連鎖ではなく、戦争のないアジアと世界をつくるために努力を払うことこそ、品川区議会に求められていることだと呼びかけ、私の賛成討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。