神戸市長田区の視察を実施して・公園、耐火建築が延焼ストップ
2001年08月23日
8月22日、23日、日本共産党区議団は神戸市長田区の阪神淡路大震災の復興状況、震災での教訓などについて視察を行いました。
今回の視察は、「区内には戸越1・2丁目、荏原北、旗の台・中延地区など木造住宅密集地区が多く災害に強いまちづくりをいかにすすめるか」が重要な課題となっており、現地から教訓を学ぶ目的で実施しました。
開発事業、区画整理事業・想像を超えた長田地区の復興工事
復興が進む長田区
阪神・淡路大震災(平成7年1月発生)から6年7ヶ月経過した現在、神戸市では復興のための工事が各所で行われていました。その手法は再開発事業や震災復興土地区画整理事業など異なっていましたが、その規模は私たちの想像をはるかに超える大規模なものでした。
現地では、地域の方から震災時の状況や復興事業の現状、神戸市当局の取り組みなど貴重な話を聞くことができました。品川での防災対策にとっても貴重な教訓を得ることができたことを確信します。
今回の視察参加者は、沢田英次、桜井恵子、南恵子、菊池貞二、鈴木弘子、飯沼雅子、上山弘文の7議員。宮崎克俊委員は総務委員会と重なったため不参加となりました。
神戸市の視察日程は次のとおりです。
1.8月23日(木)
午前9時〜長田区の大正筋商店街周辺の現地調査
2. 同日
午後1時、神戸市役所説明を受け鷹取東第1、東第2地区の区画整理事業を視察
*なお、22日は、午後1時から、東大阪市の中小企業振興策を視察予定でしたが、台風11号の影響で取りやめ、新幹線が復旧した午後に東京駅を出発しました。
視察を通じての教訓・大正筋商店街周辺の再開発
「久二塚まちづくり協議会」の桐田副会長と懇談
この地区は最も被害の大きかった地区の1つ。区議団は市を通さずに、復興の状況や現地の方の意見を聞こうと企画したもの。
たまたま、3つの町(450世帯)をまとめた「久二塚まちづくり協議会副会長」の桐田善夫さんに話を聞くことができました。
主な内容は
- 地震発生から火災が起きるまで3時間かかった。私も含め、家屋倒壊の中から人命救出に当たった。
- 消防車がこず海から水を引くために3台のポンプ車が必要なため充分な消火活動ができなかった。
- この地区は大正、昭和初期の家屋が多く、その約9割が焼失した。3軒の新築家屋(耐火建築)と空地が連なったところでは延焼が止まった。
- 地域では住宅中心の再開発事業が各所でおこなわれている。商店街での再開発は6階建てで、上部は住宅。その他の地区では21階建てなど高層再開発計画となっている。
- 再開発計画の問題では、地価が2年間で1平方メートル当たり50万円から46万円に下がっており、地権者が15坪の土地を提供しても9.5坪の床面積しか確保できなくなっている。
- 再開発で作った住宅の分譲住宅の倍率は5倍〜38倍と高くなっている。
- 土地もなく、仕事がない方の対策として公営住宅を建設しているが、絶対量が不足している。低所得者対策がとりわけ重要。
鷹取地区震災復興土地区画整理
はじめに神戸市の区画整理部から鷹取地区の震災被害、区画整理の状況説明を受けました。
- 鷹取第2地区の被災状況は次のとおりです。
●震災前人口 4099人(1747世帯)
●被災状況
(1)全壊全焼 1034世帯(87%)
(2)半壊 49世帯( 4%)
被災比率 (約91%)
- 土地区画整理事業の概要
●施行区域面積19.7ha
●建物移転戸数 529戸
●事業費 約361億円
●減歩率
約25%(標準減歩率 9%)
●道路 中央幹線 30m、区画道路 5〜14m
●公園
千歳公園(10,000平方メートル)、戸崎通公園(2500平方メートル)戎町公園(500平方メートル)
●
住宅建設 受皿住宅―99戸、共同立替住宅―74戸
● 都市計画決定 平成10年3月2日
視察をしての教訓
- 災害に強いまちづくりをめざし、道路をできるだけ広くとっており、新築家屋の不燃化と合わせ道路が延焼遮断帯の役割が期待できる。いままで路地だったところも、区画道路として4mから6mにひろげています。
- 標準では減歩率(土地の提供の割合)は25%だが零細な土地所有者を配慮し市が負担を肩代わりし9%とした。区画整理は零細な土地所有者ほど打撃が大きく、復興のため西の負担を肩代わりしたことは、事業推進に大きな弾みとなった。
- 千歳公園は千歳小学校の在籍児が250名であり、統合することとなった。復興のために急いだとはいえ、学校統合に問題はなかったか。
- 受皿住宅(3棟―99戸)や共同建替(3棟―74戸)。土地を出し合い共同住宅を建築しながらの事業は、住民と市の取り組みはすばらしい。
- 事業計画地の北側にある大黒公園は、猛火を食い止めた。樹肌は焼け焦げた跡が痛々しかった。
公園、空地、緑を計画的配置することは安全なまちづくりには欠かせない課題であることを物語っています。
鷹取地区の大黒公園。火災をこの公園が止めた。樹皮は火災で焼け焦げている。
当面、次の点を品川での災害に強いまちづくりに生かします。
大正筋商店街周辺と鷹取地区は、品川区の木造住宅密集する戸越1・2丁目地区、荏原北地区、旗の台・中延地区とくらべて道路は広く区画もしっかりしているように見える。阪神淡路大震災で9割以上の被災比率を考えると、品川での防災まちづくりは家屋の不燃化、狭隘道路の拡幅、公園、広場の増設など急務となっています。直下型地震や関東大震災の海溝型地震が「いつ起きてもおかしくない」といわれるもとで、その取り組みは時間とのたたかいといっていいと思います。
- 震災時の人命救助、消火活動など被害を軽減する問題でも、復興を速く進めるうえでも、住民同士の協力関係、住民主役になった取り組みが大事です。
- 復興計画は短期間に進めざるを得ませんでしたが、弱者や個々人の意向が汲み尽くされたのか、という問題は詳しく聞くことができませんでした。年金暮らし、零細地権者、借家の方など災害弱者にどのような配慮がされたのか、今後の研究課題です。
今後、今回の貴重な教訓を生かし、第3回定例会2日目9月21日、上山弘文議員が一般質問をおこないます。また、まちづくり特別委員会や決算委員会での質問に生かしていく予定です。
皆さんのご意見をいただければ幸いです。