第3回定例会最終日の19日の本会議で、「奨学金貸付条例の一部を改正する条例」に共産党の上山弘文議員が反対討論を行いました。
この条例は奨学金制度の返済期間を20年から15年に短縮するものです。日本共産党は「青年の完全失業率が10%にもなっているもとで、貸付条件を緩和すべき時なのに返済期間を短縮することは、認めることはできない」と反対しました。
自民、公明、民主、合同、区民の与党各党は賛成しました。
日本共産党区議団を代表して、第72号議案、「品川区奨学金貸付条例の一部を改正する条例」についての反対討論をおこないます。
今回の条例改正は「返済期間を20年から15年に短縮する」のがその中身です。
区は条例提案の理由に「(1)返済期間を短縮することで、多くの希望者に奨学金を貸し付ける効率的な運用を図る。(2)奨学生の約40%が13年間で繰り上げ返還をしている」ことをあげています。
奨学金制度は、経済的理由で修学できないことが無いように「教育の機会均等」を制度化したものです。日本国憲法・第26条で「能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有する」と定め、品川区の奨学金貸付条例も同趣旨で昭和61年に定められました。今、高い学費・教育費の支払いが困難で進学を諦めたり、退学を余儀なくされる青年も増えています。このような青年にとって奨学金制度はなくてはならないものです。
現在の青年の置かれている状況はどうでしょうか。
長引く不況・リストラなどで、完全失業率が5%・潜在失業者を含めると10%台にもなっています。求人倍率が0・6倍で大変な就職難、実質賃金も低下しています。
こうしたなか、とりわけ青年層は、完全失業率が10%を超えると云われ、専門的技術を学ぶ工業高校を卒業しても求人倍率は2倍程度。多くの方々が定職に就けずフリーターとして生計を立てるなど一層深刻です。15歳の方が奨学金を受け私立高校に進学すると、事実上120万円の借金を背負うことになります。やっと就職した瞬間から年間6万円の奨学金の返済義務が発生し5年短縮では8万円となります。このような方々が奨学金の返済をしている年代です。
わが党は、返済期間短縮ではなく、貸付の返済条件の緩和こそ必要と考えます。
区は「返還期間が長くなると親権者・連帯保証人の行方がわからなくなる」「返還期間が長いと途中で踏み倒してもいいと考え、モラルの低下をまねく」とも述べ、返還率アップのため返済期間の短縮を図るとしていますが、返済期間の短縮と返済率アップは連動するものではありません。現に30数年にわたって返済している方もいるとのことです。「1度も返還したことない人が20数名いる」という問題も区としても滞納者の生活状況をつかみ、働きかけをして克服すべきものです。
さらに、品川区における貸付金返還率は70〜80%あり、品川と同額程度の貸付金額で10年返済としている他区の返還率通常60〜70%と比較しても返還率はとりわけ問題だといえる状況ではありません。
これは、返済期間の短縮でも返還者数や返還率が上昇するものではないことが明らかであり、区側が述べていることはいずれも「期間短縮」理由にあたりません。わが党は、収納率をあげることは当然と思います。しかし、困難な状況の方には配慮が必要と考えます。
フランスは、大学入学資格取得者を80%に引き上げる事をめざし、給与制奨学金を大幅にふやすとしています。イギリスは、大多数の青年が給与制奨学金を受けています。
青年の「修学したい」の声に応える奨学制度の拡充こそ求められており、今回のような改悪は認めるわけにはまいりません。
以上もちまして、第72号議案、品川区奨学金貸付条例の一部を改正する条例の反対討論といたします。ありがとうございました。