品川文化振興事業団(理事長・高橋久二品川区長)が購入したアルゼンチン債1億6000万円分が、同国の対外不履行宣言により、紙くず同然になりかねない事態に直面しています。この問題は多くのマスコミも大きくとりあげ、区民の重大な関心が向けられています。そして、「なぜ危険な外国債を買ったのか」「区長は私財をなげうっても損害を補填すべきだ」など、区民の間から様々な疑問や怒りの声が上がっています。
日本共産党は、ただちに高橋久二品川区長にたいし、問題の徹底糾明と区長(理事長)の政治的道義的責任をあきらかにするよう求めてきました。以下、この問題についての日本共産党の見解を述べます。
品川文化振興事業団が、アルゼンチン債を2000年5月に新光証券を通じ、円貨建てで1億円分(年利5.4%)を購入、さらに8月に日興証券を通じ、同じく円貨建てで6000万円分購入した。ところがその後アルゼンチンが経済危機におちいり、昨年12月末同政府が対外債務不履行宣言を行ったことにより、債券の売買が凍結され、このままでは1億6000万円分の債権の価値がなくなり、まさに紙くず同然になりかねない事態に直面した。
アルゼンチン債の購入は、当時の相見副理事長(当時の品川区助役)が、事業団の理事会にも諮らず、『独断』で購入した。区長は知らなかった。副理事長は『事業団のために少しでも利息がよいものをと、利率の高いアルゼンチン債を購入した』と語った。区長が知ったのは昨年の3月で、その後債権の処分を命じたが、買い手がつかず、昨年12月の債務不履行宣言となった。
以上が品川区当局が説明した、この問題の経過です。
文化振興事業団は、公益法人で本来区が行うべき社会教育の事業を、区から委託され、区の補助金(年約3億円)を受けて、総合区民会館(きゅりあん)やO美術館の運営や文化事業を実施し、またメープルセンターなどでカルチャー講座の解説など独自事業もおこなっています。基本財源の5億円のうち、区が4億7000万円を出資し、役員は、理事長が区長、副理事長は助役と教育長、監事は収入役が兼務し、事務局長は区の天下りで現在は元都市整備部長が就いている、まさに品川区丸抱えの外郭団体です。
アルゼンチン債の格付けは、当時でも「BB」で確実性の低い債権でした。同国経済の今後の動向は予測できませんが、今回の損害はかなり大きなものとなるでしょう。第一に解明すべきは、債務履行の確実性の低いアルゼンチン債をなぜ購入したのか、そしてその損害賠償は誰が、どうとるのか、という問題です。
文化振興事業団が購入していた外国債は、アルゼンチン債だけでなく、2000年3月にはメキシコ債1億円分、同4月には中国債5000万円分を購入、わずか半年の間に総額3億1000万円分もの多額の公金をつぎ込んでいたのです。元本保障の不確実なリスクの高い債権の購入などには絶対に運用してはならないとされる基本財産から、2億5000万円もの多額の支出がどうして行われたのか。区民は理解に苦しむところです。なぜこうしたことが行われたのか、区長は責任をもって真相を究明し、区民の前に真実をあきらかにすべきです。これが二番目に解明すべき点です。しかも、文化振興事業団は公益法人として登録されている団体です。公益法人は、公益に関する事業を行うこと、営利を目的としないことなどが設立の前提となっており、しかも利益があるなら、その分は料金を安くするなどして区民に還元すべきことまでが、運用指針で決められています。そうした団体が、多額の資金を投入して、「マネーゲーム」まがいのことを繰り広げていた事実をどう考えるのか。この点についても高橋区長は区民に誠実に説明すべきです。
第3に解明すべき点は、同事業団の驚くべき無責任な実態です。高橋区長は「自分は知らなかった。元助役が『独断』でやったこと」と説明しています。これほど無責任な話はありません。同事業団の内規では、理事長の財産の保全の責任が明記され、財産の運用は、理事会の議決が必要で、しかも2000万円以上の資金運用は理事長の決定が必要と明記されています。アルゼンチン債購入は明確な規定違反です。3億円もの買い物を副理事長(元助役)が『独断』でやった。しかも、理事長(区長)に初めて報告されたのが債権の保障が危なくなってからで、一年も経ってからだった。この間、2名の監事による監査にもチェックされなかったのか。同事業団の財産は、いったいどのように管理・運用されていたのでしょうか。文化振興事業団の組織そのものに、抜本的なメスを入れ、実態を糾明する必要があります。区長は責任を持って調査し、区民に報告する義務があります。
高橋区長は、アルゼンチン債問題をはじめて知ったのは昨年の5月で、ただちに正常化の措置をとったと説明しています。しかし、その後の6月の決算では、アルゼンチン債購入の事実も、それが莫大な損害の危険があることも報告されていません。これらの事実が公になったのは、マスコミが調査に入り、新聞記事になる直前の区議会幹事長会でした。区長がはじめて知ってから区民に知らされるまで約一年が経っています。昨年12月の対外債務不履行宣言があり、紙くず同然になりかねなくなってからでも、2カ月です。高橋区長は、2月19日の同事業団の評議員会で「自分は知らなかった。知っていたら、とめた」と釈明したようですが、区長は今回の事態を引き起こした自らの責任も、区民の大切な財産を守るべき区長としての責任もまったく理解していないといわなければなりません。
区民の財産に莫大な損害を与えた責任、文化振興事業団の不明朗な財産管理、形骸化している機構とそれをこれまで放置していた責任など、文化振興事業団の最高責任者である高橋区長の政治的道義的責任は重大であります。
高橋区長は、文化振興事業団だけでなく、国際友好協会、スポーツ協会、都市整備公社などの他の外郭団体についても総点検をおこない、二度とこのような事件が発生しないようにする責任があります。
高橋区長はこの間、区政運営にあたって「経済性」「効率性」「行政にも経営の観点が必要」などと強調し、職員に「意識改革」をもとめ、事業部同士で「利益」を上げることを競い合わせてきました。これまで首脳部会議を事業部経営会議に変更、保育園や学校の運営まで「経営会議」という名称が公式に使われています。品川区が、まるで利潤追求第一の「株式会社」になっています。
その結果、「行政効率が悪い」として区民福祉の切捨てや住民サービスにかかわる職員を極限まで削ってきました。最近の事例をあげると、生活保護世帯の入浴券の発行は4年前が年90枚だったものを来年度には60枚にし、いずれ入浴などの法外援護は廃止することを決めています。中小企業に働く人の勤労者生活資金制度は、来年度廃止されます。23区で廃止するのは品川だけです。介護保険料は23区で一番高い月額3300円です。社会的弱者のための大事な施策を厳しく削る一方、住民負担を増やすことばかりすすめてきました。
今回のアルゼンチン債問題も、「もうかればいい。より利率がいいものを」との発想から生まれたものであり、元助役が「よかれと思ってやった」と語っているように、まさに高橋区長の区政運営方針の忠実な実践として行われたものといえます。大不況のもとでかつてない失業、倒産、生活の危機が襲っている今こそ、品川区が住民のいのちと暮らしを守る自治体本来の役割が求められています。日本共産党は、アルゼンチン等外国債購入問題の徹底糾明とともに、品川区を区民が願う自治体の役割をとりもどすよう全力をつくす決意です。