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海外調査(視察)に対する反対討論

2003年10月03日
日本共産党品川区議会議員沢田英次

私は、議員提出第6号議案「議員派遣の件」に対して、日本共産党を代表して反対討論を行います。

今回提案は、今年の海外調査の派遣議員を決めるものですが、わが党は海外調査の実施そのものに反対でありますので、わが党の立場を述べたいと思います。

海外調査の目的は「英国の教育改革の現状と背景」であり、ロンドン、エジンバラ市などを訪問先としております。調査期間は12月7日〜18日となっています。

今回の海外調査の実施を決定した際、自民党提案でしたが、6月時点で調査の目的を街づくり、都市計画、都市景観とし、その理由を「りんかい線開通に伴い品川の街づくりは大きく変わっており、都市計画等は重要な問題である」としました。もう一つの教育では「学校改築」を上げ「小中一貫校開設・学校改築計画からも品川区にとって校舎教室配置、安全管理など、調査すべき事項は数多くある」と提案されました。

その後、何回かの論議を経て冒頭の「英国の教育改革の現状と背景」、ロンドンと決まったのが経過の概略です。わが党は、議会運営委員会の中で意見を述べてきましたが、あらためて海外調査の実施に反対する理由を以下3点にわたりのべます。

第1は、なぜ議員が12日間もかけてイギリスまで調査に出かけねばならないのか。海外調査の重要性や緊急性が明らかになっていない、という点です。

議会運営委員会のもと設けた海外調査検討会は1999年に海外調査に関する検討項目および遵守事項を決定しました。当時、マスコミなどの報道や海外視察への批判がある下で、海外調査実施に当たり「区政として緊急に対応すべき課題」「議会として研究すべき重要課題」「区民がもっとも関心を寄せている課題」検討項目とする。すなわち通年実施ではなく、その都度内容を吟味して、必要性、重要性が明確になった時に限り海外調査を実施する、と確認したのであります。当初の自民党提案に、象徴されています。りんかい線開通で品川の町は変わっている。都市計画は重要な課題、との説明がされました。都市計画はもちろん大事ですが、それがなぜ海外調査をしなければならないのか。調査予定地ではこのような取り組みをしており、品川が直面している課題で現地調査抜きには審議ができない、そうした海外調査の必要性こそ説明すべ気です。残念ながらこうした説明はなされませんでした。

また教育の問題でイギリスを調査といいますが、学校改築計画、小中一貫校計画がなぜイギリスの調査と結びつくのでしょうか。確かに教育をめぐる状況は学力の遅れや、不登校の急増など解決が迫られている課題は山積みです。歴史も制度も違うイギリスの教育改革を調べてどれだけ区民のためになるのでしょうか。区議会としてイギリスまで出かけて教育改革を調べるより、長野県などでおこなわれている少人数学級など全国の教育実践を調べるほうがよほど充実したものとなる、と思います。

1996年に阪神淡路大震災の際、東京でも大地震が予想されるもとで、震災対策特別委員会は「復旧・復興状況と今後の震災対策」を調査事項として急遽、予定になかった視察を実施しました。本来、海外調査に当たっても、こうした緊急性や重要性を鮮明にすべきであり、先ほどの遵守事項の精神だ、と思います。

第2は、区民生活が倒産、失業、住宅難などぎりぎりの生活状況の中で海外調査の実施はおこなうべきでない、という点です。

先日、商店街のある役員の方からこんな話を聞きました。「区内の7〜8割の店主は店をやめたいと思っている。しかし辞めるに辞められない」また「大井地区の商人は元気だといわれるが、一歩自宅の敷居をまたぐと、下を向く、その先にはロープがある、こんな話がまことしやかに話されていることご存知ですか」。

もう一つは社会福祉協議会でおこなっている上限2万円の応急小口制度です。生活に困り最後のよりどころであるこの制度は、今年4月〜8月までの5ヶ月間で300件、570万円の貸付。月割りの件数で、昨年で3割増、金額で147%にも及んでいます。区民の生活支援は緊務となっているのであります。

なお、昨年23区で海外視察を実施した区は品川、大田、目黒、江東の4区のみ。区民生活の実態から海外視察を中止した区は19区に及んでいます。民間企業では海外はもちろん国内出張も厳しく制限、解雇、賃金引下げなど厳しいリストラがおこなわれていることはいうまでもありません。

私はこのようなもとで1議員70万円、今回随行も加えると11名、770万円もの海外調査は断じておこなうべきではないと思います。そのお金を区民の生活支援にこそ回すべきではないでしょうか。

第3は、今回の海外調査には共産党とともに公明党も不参加を表明しています。第2党、第3党が不参加を表明しているのになぜ、議会調査としておこなうかという問題です。

わが党は、どうしても海外調査が必要だというのなら、1議員当たり19万円、年額228万円の政務調査費を本来の趣旨に沿って、海外調査に充てるべきだ、ということをあらためて強調したいと思います。

今議会では7000名近くの学童保育廃止反対、あるいはすまいる移行にあたり十分意見を聞くよう求める請願、が出されました。

海外派遣に参加するある議員は予算委員会で「第二延山小学校のすまいるスクールは一人当たり3万7千円のコストでできる。荏原南学童保育クラブは一人当たり45万円のコスト、という答弁をいただいた。非常にコストだけ見ると10倍以上の開きがある」と学童保育のすまいる移行を高く評価しました。

ところが自ら参加する海外調査に当たっては、コスト意識どころか、緊急性、重要性も満足に説明できない、まま実施を決める。その上、「共産党、公明党の本来割り当てるべき分は未執行とすべきだ」との主張に、その分を参加会派(自民、民主)などに割り振る、あまりにも身勝手ではないでしょうか。今回の海外調査実施は、決して区民の理解は得られないことを指摘し、議員提出6号議案の反対討論を終わります。


参考

平成15年度海外調査概要と参加議員

(1)調査目的:英国の教育改革の現状と背景

(2)訪問場所:英国ロンドン、エジンバラ市等

(3)派遣期間:12月7日から12月18日まで

(4)海外調査参加議員

自民党:石田秀男、伊藤昌宏、鈴木真澄、塚本利光、原雅美

区民連合(民主):本間隆、山村明嗣、金高政男

無所属の会:西本貴子

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