沢田英次
ただいま総務委員長の報告がありました仮称大崎地区小中一貫校新築工事関連の第44号、45号、46号、47号議案を一括、日本共産党を代表して反対討論を述べます。
それぞれの議案は、平成18年開校をめざし校舎新築等の請負契約ですが、以下3点にわたって反対理由を述べます。
第1は、PTA、住民、教職員の合意を得ていない、問題です。
一貫校計画は、日野中を第二日野小に移転しますが、日野中や学区内の小学校PTAから強い反対がありました。PTAや同窓会の「移転計画を見直しを求める」3500名余の署名が区長に提出されたたにもかかわらず、計画は既定方針通り進められました。
少なくとも学校を移転し廃止する大問題に当たっては、関係者に事前に情報を公開し、最大限の合意を得る努力をすべきであります。
一方、昨年9月、一貫校予定地の北側にあるマンション住民の問い合わせに、「計画はできていない」「資料はない」と3度も事実を偽って説明、これが事態を混乱の原因であります。1日5時間以上の太陽を奪われる住民とは4回の話し合いしか行われず、いまだに合意に達しておりません。少なくとも契約の条件は整っていず、見合わせるべきであります。
この春の日野中の新一年生は、34人減の46名でやっと2クラスを維持、大井地区の状況も同様であり、一貫校計画が親の学校選びに大きな混乱をもたらしております。
区は当初、「建設費は100億円かかるとはいっていない」と大論議となりました、工事費72億円、用地買収28億円、合わせて100億円、あの時の論議は何だったのでしょうか。
親の願いが強い30人学級を否定し、小中一貫校のためには100億円の巨費を投入する、このようなことが公教育であっていいのでしょうか。
第2は再開発とのかかわりです。
本体工事は大成建設JVが落札しました。一貫校建設に当たり三井不動産、大成建設の用地買収をおこないましたが、当初予想通り大成建設が落札、不透明といわなければなりません。
また、まだ28年しか経っていない大崎体育館をあえて一貫校に合築するのか、それは体育館跡地を種地に停滞している北品川5丁目開発の起爆剤とする思惑があるとしか思えません。
第3は、小中一貫校の計画そのものの問題点です。一貫校計画は子どもたちの学力の遅れ、学力格差の拡大、不登校など取り返しのつかない事態を引き起こす可能性がある、という問題です。
2000年にOECD(経済協力開発機構)が行った国際学力テストの結果を紹介します。
このテストは読解力、数学、科学リテラシーで15歳を対称に32カ国、12万人が受けました。21世紀に身に付けるべき生きる力、多様な能力、応用力をテストしたものです。
結果は1位、フィンランド、2位、カナダ、3位ニュージーランド、日本は8位でした。これらの上位8位の国はいずれも能力別に学校や、クラスを選別するトラッキング教育を中止した国で占められました。
一方、大方の予想を覆しドイツは21番、中位以下でした。
ドイツは小学校4年のテストにより中等教育をエリートコース、技術コース、それ以下のコースに三分しトラッキングを推進しています。トラッキング実施国、スイス、オーストリアも中位およびそれ以下、「トラッキングの敗北」とされる所以です。
アメリカ、ヨーロッパなど大半の国が、1960年代から80年代にかけてトラッキングを中止、少人数学級をベースにできる子、「できない子」共に学ぶ平等、共生の教育に移行しています。
昨年7月、小中一貫校の特区申請で高橋区長は「5〜9年生で行うステップアップ学習」について次のように述べております。
「個々の興味関心に応じて、特定分野の優れた能力や学ぼうとする力を伸ばすことが目的とあげ、異学年の学習集団編成、習熟度別学習や課題別学習など多様な学習形態、さらに9年生においては上級学校の学習内容も視野に入れる」としています。これは紛れもないトラッキングでありエリート教育といわなければなりません。
習熟度別学習もトラッキングの1つですが、低い学力クラスに編成された子どもが屈辱感などから不登校など、問題行動の契機になることは十分予想できることであります。大変心配されます。
先日、NHKは、フィンランドが国際学力テストで第一位となったことを放映しましたが、少人数学級で様々な学力の子が一諸に学ぶ平等教育のすばらしさを映し出していました。
品川区は一貫校を各地区に5校、他の学校に一貫校教育を全区展開するとしています。
私は、世界の教育の実践、教育研究の成果を謙虚に学ぶべきであり、一生に一度しかない学びの時代、子どもたちをマスコミ受けや実験台にするようなことがあってはならない、ことを指摘します。
以上三つの点から一貫校新築工事にかかわる請負契約に反対をするものです。
これをもちまして反対討論を終わります。