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2004年10月決算委員会総括質問

次に、沢田英次委員。

沢田委員

共産党区議団の沢田でございます。私は小中一貫教育の問題について質問をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

初めに、第二日野の1校目の小中一貫校から大井地区に展開し、そして今年は全小中学校で小中一貰教育を開催をすると一気に進みました。この小中一貫教育をこんなに早くなぜ導入したのか、その目的、問題点はないのか、どんな手順を踏んで決定に至ったのか、を説明していただきたいと思います。

若月教育長

小中一貫教育を展開する、その大きな目的ということからでございますけれども、毎度申し上げていることでありますが、現在の学校数育、さまざまな課題を抱えております。特に小学校、中学校の校種別から来る問題といったようなもの、これが子どもに与える影響が大きいということは既に具体的な事実として提示されているものであります。そうしたもろもろの問題を少しでも解決しよう、そういう意味で、子どもたちのための学校をつくろうということで、新たな発想から小中一貫教育といったようなものを実現していこう、こういうような考え方がもとになっているところでございます。そうしたすばらしい小中一貫教育といったようなものを少しでも多くの子どもたちに、区民の方々にそのよさというものを体験していただこう、そういう意味で、この全区展開にまで至った、こういうことでございます。

沢田委員

どんな手順でこれが導入に至ったのか、後ほど答弁をいただきたいと思います。2002年の3月4日の文教委員会で、教育長はこう言いました。「この小中一貫校で新しいさまざまな取り組みがされます。その小中の今の単独の学校の取り組みそのものを改善していくような、そういった成果というもの、これは必ず私は出していただけるだろうと、そう思うんです」と答えている。

中略ですけれども。小中一貫校で学んだ実践教訓をその他の学校に広げるんだ、こういうことを繰り返し文教委員会や予算特別委員会や決算特別委員会で説明なさったんですけれども、それがいきなり全区展開になったのは何なのか、を再度お尋ねしたいと思います。

若月教育長

手順でありますけれども、これも毎度お答えをしていることでありますが、大まかに申し上げますと、例えば平成14年度の予算編成の中で、小中一貫校の1校目をつくるということを決定をさせていただいたわけでございます。それで、その次に、それを受けまして、すぐに小中一貫校の準備委員会やプラン21推進委員会等々において、その内容といったようなもの、また進めていく上でのさまざまな課題といったようなものを検討していっていただいた、こういう経緯がございます。

そしてその次に、平成15年度の今度は予算編成の中で、2校目として大井地区に小中一貴校を設置していこうというようなことを事務局のほうで決めさせていただいた、こういう経緯があり、議会のほうの承認をいただいている、こういうことでございます。この中でも、今申し上げましたプラン21推進委員会であるとか、あるいは小中一貫教育推進委員会の中で、さまざまな議論がございました。それで、その中で、新しい今の課題を克服するためにこういった新しい教育課程をつくるんだということを説明する、そういう話し合いをする中で、やはりそうしたものは、先ほども申し上げましたけれども、より多くの子どもたちにやはりそういう教育といったようなものの場を提供するほうが、これは教育委員会の仕事としては当然のことなんじゃないだろうか。やはり小中一貫教育で展開される同質の教育といったようなもの、教育の質、そうしたものが多くの子どもたちに提供していくのが本来の姿ではないだろうか、こういったような議論が出てきました。また、この説明会というものを、この平成14、15年度、2年間で約40回ほど説明会を行っております。そうした中でも、そういったすばらしい教育であるならば、どの学校に行ってもそういうすばらしい教育を受けられるようにしてほしいんだ、そういう地域住民の方の声もございました。そうしたような声を総合して、この現在の計画に至った、こういうことでございます。

沢田委員

議会の承認を得たと言いますけれども、大井地区に小中一貫校をつくるという提案があったときに、自民党の文教委員の方からこういう発言がありました。「一貫校はという、これはつけ足しですけれども、今のところ完成型を測定する現状がないわけですから、本来は前例を見きわめた上で、実践を確認した上で展開すべきではないかと思うのです。そこでお伺いします」ということで、今まで一貫校でやった教育実践の総括をして、可能ならば全区に生かしていくと言ったのが、いきなり全区展開に対して自民党の文教委員から批判の声が上がった。結局、この問題も決まっちゃってから、今までの前言を翻して、それでどんどん進めていくという、今までの一貫校の進め方と全く同じ。今回の一貫教育というのは、これは後ほどやりますけれども、学習指導要領全国基準を上回って教育をしていくという、全く全国でも初めての公立学校で言えば、そういうドラスチックな変革をやるのに、本当にそれで大丈夫なのか、という不安を私は持ちます。こういうことをやるなら、一生に一度しかない教育なのですから、一歩一歩確かめながら前に進んでいくのが本来教育のあるべき姿だ、このことを強調して先に進みたいと思います。

どうぞ答弁がありましたら、お願いします。

一貫教育の中で、学習内容で、上級学年の問題をおろしてきたり、新しい加わる学習内容にどんなものがあるのか、それから授業時数を増やした科目はどんなものがあるのか、お答え願います。

若月教育長

前段のご質問なのですけれども、私ども教育委員会としましては、別に前言を翻しているということではございません。これも午前中の答弁でお話ししましたけれども、今の状況というものを少しでも改善しようということで、まずその視野の中には小中連携教育というものがありました。その連携教育の中から、学校が具体的にかなりいろいろな連携だけでは解決できない具体的な問題点というものを私たちのほうに上げてきております。そうした具体的なデータのもとから、それを連携からさらにその実を上げるための一貫教育への拡大をしていったわけで、これは変更でも何でもないわけで

ありまして、計画の発展だと、こういうふうに私どもは考えているところでございます。

それから、一貫教育での新しい内容、時間数ということですね。これも毎度申し上げていることでありますけれども、あくまでも今現在採用されております学習指導要領をもとにして、学習活動をあるいは教育課程を編成しているものであります。ただし、学習指導要領というのはミニマムスタンダードだということは、これははっきりとその性格が位置づけられているところであります。したがいまして、少しでも子どもたちにより確実な学力と学ぷ楽しさ、そうしたものを身につけてもらうために、例えば国語の漢字で言うならば、そう学ぷ漢字の数は変わりません。その学ぷ漢字の数をいつ学ぶかという、その時期といったようなものを前に少し進めたり、というようなことをしているものがございます。それから、例えば算数なら算数でも、計算あるいはさまざまないろいろな問題がありますが、そうしたものがより何度も繰り返し勉強ができるようにするために、その内容をなるべく早く進めるという配慮は一部においてやっているものはございます。

沢田委員

何字増えるのかというのを具体的に述べてほしいと思います。新学習指導要領では、小学校で224時間国語の時間を減らしました。ところが、指導要領でも配当漢字1,600字はそのままですから、子どもが勉強するのに大変になるわけですね。その上に今度はさらに学年を早めて勉強しよう。漢字の問題でどんなものがあるのか説明していただきたいということと、数学の問題でちょっと述べておきたいと思うんですが、今度の算数で新学習指導要領で削除した、例えば近似値は高校の物理あるいは中学の理科でやるからというんでこれは削除した。それから高校で学ぷ3次関数、本来微分を学習しないとなかなか難しいこの問題や、虚数の問題を9年生、中学3年でやるというふうに先どりして、何のために高校受験で大変なのに、高校でやる問題をおろしてくるのかという問題もあります。ただ、時間の関係もありますので、私はここから国語の漢字の習得の問題に絞って聞きたいと思います。

どんな変化があったんでしょうか。

若月教育長

細かい話になってしまって恐縮なんですけれども、時間数でお話をしますと、例えば国語、3年生、4年生では年間50時間程度増えることになります。それから、1・2年生では年間10時間であります。算数では3・4年生ではやはり50時間程度、2年と5年では5時間程度、7年生から9年生では13時間程度の増ということを計画をしているところでございます。

沢田委員

それでは、私のほうから漢字の問題がどれだけ増えるのか、早まるのかというのを述べたいと思います。小学校6年で書く問題、字を書けるようになるのが825字だったものを4年までに825字を覚える、中学1年で1,006字だったものを2年早める、小学校1年で書く字は0だったものが新たに80字加わる、こうした問題について、現場から意見は出ていないでしょうか。

若月教育長

この漢字を学習する場合、ぜひ心にとめておいていただきたいことは、例えば2年生でこの漢字をやりますよ、前は3年生だったんだけれども2年生でやりますよ、そういう漢字はあるかもしれません。そこで何が何でも覚えろということじゃない。物によりますが、早く教えるということは、先の学年へ行っても繰り返し教えることができるんです。こういうメリットがあるんです。これはまさにこの国語のカリキュラムをつくった現場の先生方から出てきた発想でありまして、私がこうしろと言ったわけでも何でもないんです。具体的に子どもたちに指導をしている先生方が、子どもたちにより例えば漢字なら漢字がより確実に定着するように、何度もまた同じ漢字なら漢字を繰り返し教えられるように、これがまさにゆとりなんですけれども、そうしたことをできるようにという、そういう願いで、こういった今カリキュラムをつくっている、こういうことでございます。

沢田委員

それでは聞きますけれども、漢字の習得率、これはどんな状況になっているでしょうか。

それから、私が聞いた国語の先生のすべてが無理です、できません、ますます漢字嫌いの子が多くなります、というふうにおっしゃっておりました。カリキュラム検討委員会でこの問題を検討した際に意見はなかったのか、全会一致だったのか、お答え願いたいと思います。

若月教育長

習得率のあれは、データは今こちらには持ち合わせておりませんので、お答えができませんけれども、しかし、今委員はお聞きになった先生方は全部無理だと、こういうふうにおっしゃったと。じゃあ、今やっている漢字は完璧なんでしょうか。今やっている、その先生方が教えている漢字、今の範囲の中で、それでは完璧になっているんでしょうか。そこには、もし完璧でなかったならば、一体どこに原因があるんでしょうか。それを解決しようというんですよ。そこを理解してほしい。ただ量が増えたからといって、増えたからといって・…・・・うしてわかってもらえないんでしょうかね。同じ漢字を何度も繰り返し指導できる場をつくるということなんです。

沢田委員

私は、この問題を習得率がどれぐらいあるのかということを事前に質問しますということを言ったけれども、出てこない。私は、幾つかのデータがありますけれども、例えば国立国語研究所、これでは、習得率はちょっと前になりますけれども、1年で88.4%、だんだん下がって小学校6年生では49.2%、あるいは文化庁がやったのでは49.3まで。半分わからない。こういう状況のときに、さらにスピードをやって、この漢字をやれやれとなったらば、毎回毎回プリントをやって、もう必死になってやって覚える、そんなやり方をやったら、漢字嫌いの子を逆につくって生涯覚えられない漢字が出てきちゃうということを私たちは心配しています。改めてこういう結果はどうなのかということと、じゃあ、私は漢字をやるということを言っていましたから、小学校1年生の漢字を教える、今は読みですけれども、今度は書きも入ってくる。具体的にどういう状況なんでしょうか。

若月教育長

漢字をめぐって、今の量でもこんなに低くなってきている。一体その原因は何なんでしょうか。量が多いから、少ないから、そうなんでしょうか。これはいろいろな考え方があると思います。例えば、今の子どもたちは、小学校でもそうです。ワープロでもパソコンでもとにかくああいったようなものを大変使います。私たち大人もそうです。使わなかったんならば漢字というものは忘れてしまいます。興味もなくなっていくんです。そうした今環境に子どもたちはいるということです。そういう中で、例えば早く漢字を学ばせるからと言って、その学び方、学ばせ方、教材の提示の仕方、それは例えば今委員がおっしゃったように、毎日ドリルをやらせる、何をやらせる、そういう方法だけではないはずなんです。もっと漢字といったようなものに多く触れさせる環境をつくるということも大事な漢字の教育ですし、そういう環境づくりというものが先生たちの中にはかなりノウハウを持っているわけす。何でも増やすということは、ドリルのように詰め込むんだという、この一方的な指導感、それだけではないんですよ。そういう意味で、少しでも早めにそういう環境をつくってあげよう、それがなぜ悪いんでしょうか。

沢田委員

小学校1年生で習うのは、まず平仮名。それから、平仮名に濁点、長音、それからそれを覚えるだけではなくて、鉛筆の持ち方、線や形を書くこと、音と文字との確認、大変なことを小学校1年生の間で覚えなくちゃならないのに、平仮名はできているけれども、教育現場では片仮名を勉強する時間を生み出すのが難しいというのか実態だと言っていました。そこに新たに漢字が読みだけでなくて、書きが80字入ってきたらば、小学校の子どもはそれだけで大変になっちゃう。

国語研究会の、この本(子供の目が輝く授業、楽しく間のぼう漢字―ルック)がインターネットでベストセラーになっていますけれども、今1,006字を覚えるというのは、生活に必要な600字ぐらいをしっかり学んで、漢字を覚えることが楽しいということをつくらなければ、漢字嫌いになったらば一生取り戻せない。例えば操業の「操」、操るという字だとか、仁徳天皇の「仁」だとかというのは入っているけれども、それは日常生活には関係ない、こういうのを精査して少ない漢字をたっぷりと時間を書け、漢字の語源にまで立ち戻って学ぶことの楽しさを行うことこそ大事と思います。

私は、この後、習熟度別の問題があるので、ちょっとそちらに移りたいと思うんですけれども、習熟度別学習で、わからない子はわからない子なりにレベルを落としてやるから大丈夫なんだ、全体的に上がっていくんだ、成績は前に進むんだということを言ってきましたけれども、私は前の議会でも示しましたけれども、2000年のOECDの学力テストの問題が見事それを打ち破りました。区側としてOECDのこの学力テストに対してどう評価をしているのか、お尋ねしたいと思います。

若月教育長

前の質問で恐縮なんですけれども、この漢字の扱いについては、これも前にもお話ししましたけれども、今の子どもたちの言語環境といったようなものを考えたときに、文化審議会が答申を出しているんです。これからの子どもたち、日本の子どもたちにこの漢字の言語能力といったようなものが何が大事なのかということを文化審議会の答申が出ております。その文化審議会の答申は、かなりいろいろなデータをもとに、何歳ぐらいまでのときにはこのぐらいの漢字が読めるように、これからはしておくべきだというような答申がある。ここでは細かいことは申し上げませんけれども。そうした一つの大きな客観的なデータをもとに、うちのこの一貫校のカリキュラムといったようなものを考えているんだということを一つどこか頭の隅っこに入れておいていただきたいということです。

それから、OECDのテストの結果ということでありますけれども、世間ではPISAショックとか何とかといろいろ言われておりますけれども、私は世間が言うほど日本の子どもの学力は落ちているということはないと思いました。それよりも心配したのは、今の日本の子どもたちにとって大事なこと、心配なことは学習意欲のほうの低下、これのほうがむしろ大きな問題だな、こういう認識を持ちました。

沢田委員

文化審議会のことをたびたび答申が出たから増やした、というんですけれども、文化審議会の人選は、漢字増強を主張する委員が多数でした。お茶の水大学の藤原教授など。ですから、現場の教員の声を反映しているとは私は思えません。

それから、OECDのテストですけれども、2000年ですから習熟度学習をやる前、要するに、混合教育、能力別教育をやらない段階でのテストだったんです。だから、日本は8位になった。そしてOECDの調査でトップになったのは、最低ランクもトップ。それから、最高ランクも文字どおりトップのフィンランドです。フィンランドはどういう教育をやっているかというと、生徒は大体1学校60人ぐらい。5キロメートルの範囲の中に学校をつくらなきゃならないという法律が決まっていて、本当に少人数の学級でグループをつくってやった。しかもできる子できない子、一緒に学び合う。学習方法もやってNHKで今年の1月に放映がありましたけれども、そうした結果が文字どおりの第1位になったんです。

私は、この教訓を引き出すべきだ、こういうふうに思いますけれども、能力別教育あるいは習熟度別教育が効果を上げたということについて、OECDあるいは世界の教育学会での研究、到達点がありましたら、ご報告願いたいと思います。

若月教育長

また前の質問にひっかかるんですけれども、文化審議会のメンバーがどうのこうのと言われても、これは私は何ともしようがないことでありまして、これは一つの国が決めた委員会でありますから、その答申というのは私は尊重していきたいと、こういうこと。それから、このカリキュラムをつくっているのは、とりもなおさず学校の先生たちが中心になっている。したがって、先生たちの声を聞いていないというのは全く事実ではないということ、これをやはり申し上げておきたいと思います。

それから、フィンランドの件に戻るわけでありますけれども、このフィンランドが混合教育というんですか、というのをやっているんだというようなお話がありました。しかし、じゃあ、混合教育をやっているところはみんな成績がいいんでしょうか。私はそのデータを持っておりません。必ずしもそうとは言い切れない部分だってあるだろうと思います。したがいまして、このフィンランドの教育のやり方についてどう思うかと言われても、それはたまたまそうだったんであって、今度やれば日本は絶対負けないぞ、私はそう思いました。

沢田委員

先ほどの中央文化審議会の答申で、漢字をこれだけ増やせ、だけれども、授業時間をこれだけ増やすと言ったけれども、文部科学省のほうは他の問題のバランスがあるからそれは待った、というので待ったがかかっているんです。それを待ったがかかっているのに時間数を増やすとかいうのがないままに、どーんと行っちゃうというのは私は問題だというふうに思います。

それから、例の混合教育、フィンランドの問題ですけれども、32カ国が加わって26万人の一斉テストを世界中でやった結果、1位がフィンランド、2位がカナダ、3位がニュージーランド、日本は8位です。1位から8位まで能力別教育をやった国はありますか。ないんですよ。みんな混合で、できる子もできない子も一緒に学び合う体制の中で成績が優秀になった。このことに対する見解をさらに伺いたいと思います。

若月教育長

また前の質問になるんですけれども、文科審の答申に対して文部科学省が待ったをかけたということでありますけれども、品川区が今小中一貫教育の研究開発をやっております。これは、一方では特区申請で特区を受けてやっております。それからもう一つは、文部科学省の研究学校の指定を受けてやっております。したがいまして、文部科学省が待ったをかけたというんだったらば、これはちょっとおかしい話でありまして、文部科学省はどうぞここでやってくださいと言って私たちを研究開発校を受けている、こういうことをひとつ覚えておいていただければ、こんなふうに思います。

それから、1位から8位までは能力別学習をやっている国はないんだというようなことをお話になりました。私はそこら辺はそれぞれの一つ一つの国のあれをつぶさに調べたわけではありません。ただ私は、先ほど来おっしゃるんですけれども、能力別学習と行ったようなものは、品川区の場合でも別に日本の場合でも公立の場合、とってはおりません。

沢田委員

習熟度別学習の問題で、以前紹介しましたけれども、東京大学の教育学、佐藤学教授、「学力を問い直す」という本からちょっと紹介させていただきたいと思うんですが、「習熟別指導は決して斬新な方法ではありません。習熟度別指導は塾や予備校などでは当然のことであり、導入していない塾や予備校を探し出すのは困難です。なぜ塾や予備校では習熟度別指導を基本とし、学校は習熟度別指導を導入してこなかったのかは、その理由は以下四つある。時間の関係で全部は言えませんけれども、その中の一つに、公立学校は教科を学ぶところであり、多様な考え方や個性を学ぶところであり、多様な能力や個性を持った人とともに生きる民主主義を学ぷ場所なのです」と、習熟度別学習で上位の子

と下位の子を分けて別々に教育すれば、下位の子は絶対に追いつけませんよね。漢字だって覚えられない。どんどん。それで、上位の子は先にどんどん進めていくわけですから。結果的にできないお子さんを固定をしてしまうことになると思います。この点に関する意見があったら、お答え願いたいと思います。

それから、私はフィンランドの例にしてもヨーロッパの例にしても、大体20人学級の時代に世界は移行してきている。そして、それぞれ小グループに分けて、そのグループがパネルを使いながら勉強するスタイルにヨーロッパや何かはみんな変わってきている。黒板の前で先生が言ってノートをとるという仕組みでは、本当の実力はつかないというのが世界の教育学会の到達水準だと。そうしたことを考えたときに、私はもう47道府県のうち、来年では東京都と香川しか40人学級という巨大学級をやっているところがなくなるというこの現実を踏まえて、本当に子どもたちに学びの喜びを享受させるためにも少人数学級を導入すべきだと思いますが、教育長、いかがでしょうか。

若月教育長

今、委員がご指摘のあった本は、私も読ませていただきました。同じく教育を考える人問でどうしてこんなに考え方がまるっきり違うんだろうとつくづく不思議に思いました。その違いは、現場を知っている人間かそうでないかだと私は思います。例えば委員が小学校へ行って、分数なら分数を教えるとします。そうすると、これはどんなあれかわからないけれども、例えば私のようにできの悪い子は、分数を幾ら説明されたってわからない。概念がつかめないんですよ。そういう子どもは何人も

いるんです。若月君もわからない、古川君なんかもっとわからない。そういう子どもがいる。その次に、次の時間に先生は、今度分数の足し算をもう教えなければならないんですよ。そのときに、みんな一緒だと言って、このわからない若月君や古川君はどうするんですか。そうしたときに、当然教師であるならば、わからないんだったらもう1回教え直したくなりませんか。なりますよね。なりますよ。これはならないほうがおかしい。わからないんですから。そういう場面に現実に教員は毎日接しているんです。

そういう経験の中から、もう一度、何も能力を決めつけるわけではないんです。この子に少なくともこの小学校の間にはこの点だけはわかってもらいたいということで、その子どもたち2人を集めて、もう1回初めから教え直す、これは何がいけないんでしょうか。そういうことをするのが習熟度別学習なんです。ここをよく理解していただきたい。わからない子はいつまでもわからないんじゃないんです。ここまで来いじゃないんです。少なくとも、学習指導要領に定められているレベル、そこまでは何とか理解させてあげようというのが、これは習熟度別学習なんです。ここをぜひ理解をしていただきたい。

それから、少人数学級ということもありました。そういうことを考えると、本区では既にかなりその具体的な場面において、少人数学習といったようなものがもう展開をされているわけであります。そう申し上げますと、いや、そうじゃないんだ、全体として少人数学級をやるべきじゃないか、こういうような多分ご質問だろうと思いますので、ついでに答えてしまいますけれども、そういう考えもあるでしょう。しかし、大きな集団でなければできない場面もある。したがって、一概にこの人数、このあれが一番いいんだと、これはなかなか難しい問題なんです。30人学級とよくおっしゃいますが、なぜ20人学級じゃいけないんでしょうか。そういうことになりますから、やはりその場、その場でいろいろな形がとれるようなフレキシビリティーを持たせておくということも私は一方において大事だろうと、こんなふうに考えております。

沢田委員

教育長の熱心さわかりますけれども、私は事前にOECDのテストについて質問をするから、しっかり調べておいてほしい、と通告していたんです。それがまともにない。それから、今年の春には習熟度別学習のアメリカでの教授の先生だとかいろいろ紹介もしました。世界の流れはどうだったかということについてもまるで答弁の中にはない、残念だと思います。

ここで、東京新聞の陰湿型から暴力化になった問題について解説があるので、ちょっと読ませていただきます。「人間関係づくりが自然にできなくなっている原因に、もっと目を向ける必要があるだろう。専門家は最近の子どもの特徴として、表面的によい子を演じる偽装も指摘する。習熟度学習の導入などが早い段階から大人の評価にさらされることへの過度なストレスがあると言われている……」。

林(和)委員長

以上で、沢田英次委員の質疑を終わります。

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