日本共産党は第4回定例区議会(11月23日〜12月7日)に「建築物耐震診断助成条例」「建築物耐震改修工事助成条例」を議会に提出しました。12月7日の本会議で採決がおこなわれた結果、自民、公明、区民連合(民主)、無所属の会、生活者ネットの反対で否決されました。
今回の提案は木造住宅の現在制度の耐震補強制度の助成対象を、(1)区内全域に拡大、(2)マンションも対象とする、などです。耐震改修工事に要する費用の2分の1の額とし、木造の場合は75万円、またマンション等の非木造にも対象を拡大しますがその上限を100万円とするものです。
自民、公明、区民連合(民主)は討論もなく否決。これまで一般質問などで、「耐震助成」の実現を求めてきたのに、なぜ反対したのか、明らかにすべきです。
日本共産党は「いつ起きてもおかしくないとされる、直下型地震から区民のいのちを守る緊急課題として提案しました。区内には建物の倒壊の危険が指摘される旧耐震基準(1981年以前)で建設された木造住宅は2万棟、マンションは1000棟にも及びます。阪神淡路大震災は犠牲者の9割が家屋やマンションの倒壊で犠牲になっています。
区民のいのちを守る立場から、緊急の課題だ」として提案しました。
品川区建築物耐震診断及び耐震改修助成条例に関する提案説明(なかつか亮)>>>
耐震診断・耐震改修助成条例に対する賛成討論(沢田英次)>>>
街づくり特別委員会に提出した資料PDF>>>
品川区建築物耐震診断助成条例PDF>>>
品川区建築物耐震改修工事助成条例(案)PDF>>>
区議会議員 なかつか亮
議員提出第11号議案「品川区建築物耐震診断助成条例」及び議員提出第12号案「品川区建築物耐震改修工事助成条例」について、提案者を代表し、一括して説明します。
両案は、災害に強いまちづくりを推進するために、区内における旧耐震基準の住宅及びマンションに対し、耐震診断及び耐震改修工事に要する費用の一部を助成するものです。ともに平成19年6月1日から施行するものです。
以下、説明ならびに提案理由を申し上げます。
第11号議案について、助成対象建築物は住宅及びマンションとし、いずれも、所有者が現に、自ら居住し、かつ、今後も居住する事と認められるものであり、昭和56年5月31日までに建築基準法第6条に基づく建築確認をうけたものとします。
建物の区分所有等に関する法律第1条に適応を受けるマンションにあっては、区分所有者の管理組合または集会における耐震診断の実施の議決、共有建築物にあっては、共有者持分の全員が耐震診断の実施について、合意が必要となります。
ただし、区長が特に必要と認めたものについては、助成の対象とすることができるものとします。対象地域は区内全域です。
助成内容は、住宅については、診断に要する費用の3分の2の額とし、木造の場合は10万円、非木造の場合は50万円を上限に。マンションの場合は、100万円を上限とします。
第12号案については、助成対象建築物は、品川区建築物耐震診断助成条例に規定する助成対象建築物であり、耐震改修工事が必要と認められたものとします。
助成内容は、住宅については、耐震改修工事に要する費用の2分の1の額とし、木造の場合は75万円、非木造の場合は100万円を上限に。マンションの場合は、300万円を上限とします。
助成対象者について、助成対象建築物のマンションにあっては、区分所有者の管理組合または集会の議決により選定された代表者、共有建築物にあっては共有者全員によって合意された代表者とします。
両条例案とも、施行について必要な事項は、規則で定めるものとします。
なお、災害対策としては、病院や診療所、公衆浴場なども耐震化が必要と考えますが、今回の提案は、最初の提案として、耐震化が最も急がれている住宅及びマンションを最優先とするものです。
首都直下型地震はいつきてもおかしくありません。今年3月の東京都防災会議が中間発表した、首都直下地震マグニチュード7.3の被害予測は、全壊13万棟、半壊35万棟、火災消失31万棟。死者4700人。中央防災会議は建物の倒壊による死者は、全体の8割にのぼり、112兆円規模の被害が出ると予想しました。
阪神・淡路大震災では、5000名を超える尊い命が奪われ、約84%が家屋の倒壊や、家具の転倒によるものでした。マンションも同様、倒壊による人的被害は大きく、また、災害復興にも大きな困難を生じました。
現在、品川区内には「震度7」に耐えられない旧耐震基準の建築物は、木造住宅では2万棟をこえ、マンションは小さなものも含めると約1100棟。大震災から住民のいのちくらしを守るためには、住宅及びマンションの耐震化が必要です。
建築物の倒壊によって、人命が奪われ、火災を発生、拡大し、避難路を塞ぐなど、多くのいのちを奪う大災害となった阪神淡路大震災の最大の教訓は、住宅及びマンションを倒れにくくする事です。
大地震がきても一戸の倒壊も火事も出さないという構えと取り組みが急がれています。
以上で説明を終わります。何とぞ、慎重にご検討いただき、ご決定をいただきますよう、よろしくお願いいたします。
区議会議員 沢田英次
私は、議員提出第11号議案「品川区建築物耐震診断助成条例」及び議員提出第12号案「品川区建築物耐震改修工事助成条例」について、日本共産党を代表し 賛成討論をおこないます。
両案は、いつ起きてもおかしくないといわれる首都圏の直下型地震に対し、何よりも区民の命を守ること、を最大の眼目として提案するものです。
すでに本案は、提案時に内容について説明しましたので、その柱を述べます。
11号議案は、これまであった1981年以前の旧耐震基準で建設された木造住宅の耐震診断助成対象を、@区内全域に拡大すること。Aマンションも対象とすることなどです。
12号議案は、旧耐震により建てられた木造、マンション等の耐震改修工事に対し、新たに助成制度を創設するものです。木造の場合は75万円、またマンション等の非木造に対象拡大し、その上限を300万円とするものです。
ここで街づくり特別委員会での両案審議の際出された意見について触れたいと思います。
1つは「財源の保証があるのか」「区単独では実施ではなく、国や都の制度の中で実施を待つべきだ」との意見です。
わが党の提案は、財源的な裏づけも当然、検討しています。
提案者の菊地議員は「耐震診断助成を仮にすべての対象の実施に要する費用は木造住宅2万棟で20億円、マンション1000棟で10億円、改修助成では、木造で150億円、マンションで30億円となります」と答弁しています。
総額210億円になり、少ない財源ではありません。しかし、自力での改修、建て替えもあるでしょう。またマンションのでは、管理組合での総会の議決などを要するためタイムラグが生ずる問題を考えれば、数年の年度をまたがった事業となります。財政的裏づけは充分と思われます。
当区の基金残高が540億円に達していること。そればかりか大崎地区で続々と建ちあがる都市再生事業、大企業、大手ゼネコンの開発に品川区は一プロジェクト100億円以上の補助金を投入、街づくりのあり方を大企業の開発中心から、区民のいのち、環境中心に切り替えれば充分に可能であります。
委員会では、財政の効率化の点でも意見がありましたので述べます。
阪神淡路大震災では、倒壊した家屋の復旧等に一戸当たり3700万円かかったことを勘案すれば、発災以前に耐震への財政投入は財政効率の点からもその優位性は明らかであります。
なお、国において都道府県に耐震改修促進計画を義務付けた「耐震改修促進法」の制定、東京都は、緊急3カ年計画でマンションに対する診断、補強工事への助成制度を新設しています。しかし、品川区がマンションへの耐震助成を制度化しないためにその補助を受けられないのであります。
「国や都の制度の中で実施を待つべき」との意見がありますが、国、都よりも流れより品川区が遅れている、といわなければなりません。
第2は「細街路や木造密集地域の取り組みなど、災害に強い街づくりを優先すべきだ」「耐震診断、補強助成は根本的な解決にはならない」との意見です。
耐震化でもっとも優先させる課題はなんでしょうか。言うまでもなく地震から住民のいのちや財産を守ることです。現状では数万の区民のいのちが直下型地震による危機にさらされていることを直視すべきではないでしょうか。さらに住宅の倒壊は、発災時に火災の延焼を拡大し、また復旧の点でも大きな障害をもたらします。耐震診断、補強助成は地震対策のまさに核心であり、優先課題であります。
もちろん木造密集地域や細街路の整備など町全体を災害に強いものとする根本の取り組みは大事な課題であることは、言うまでもありません。問題は、緊急課題と根本対策を対立させてはならない、と思います。
第3は「我が党は区に実施を求めている。なぜ単独提案したのか」との意見です。
我が党は、これまでにも乳幼児医療無料化、保育料値下げなど、条例提案をおこなってきました。その際にいつも出されるのが「区長が出そうとしないのになぜ提案したのか」の議論でした。
私はあらためて「議会に条例制定権や予算修正権がなぜ付与されているのか」、この点を考えていただきたいと思います。
議会は「行政が住民の願いに背を向けたり、暴走した場合、住民の立場でチェックする任務に加え、条例や予算修正により、区民要求を実現させる、立法機能が与えられているのであります。議会は行政の協賛団体ではありません。
各党が「我が党ならこうする」と区民の声を条例案にまとめ提案権を行使、各党が切磋琢磨するならば、議会は活性化、区民の信頼性は高まることは間違いありません。
さて、我が党は阪神・淡路大震災後に現地を視察。私は、その被害の大きさに大変驚きました。とりわけ中小企業のまち長田区で、瓦礫の下に埋まっている人を何人も救出した方の話を忘れることはできません。
「死んだ人の多くは、家が壊れなかったら助かっただろう。柱の下敷きになった人、家具が倒れて負傷し、避難ができずに、数時間後に発生した火災に、逃げることができず焼死した。地震で壊れない頑丈な家を作ることこそ、地震に対する一番の備えだ」というものでした。
私は、阪神大震災直後に、一般質問をおこないました。「住宅、マンションの耐震診断・補強工事の助成制度の実施」「低所得者向けの家具転倒防止策」を講ずるよう提案しました。当時の高橋区長の答弁は「個人の財産は個人で管理するのが原則」との冷たい答弁でした。
その後、法律ができ、当区でも木造住宅の耐震診断と耐震助成制度ができるなど、現在は劇的な変化といわなければなりません。同時に「あれから10年間たち、新潟県中越地震であれだけの被害を受けながら、耐震改修制度が地域限定であり、マンションを対象にしていない」。これで直下型地震に間に合うのか、もし地震に見舞われたら、どうなるのかを考えると、あせりを感じます。
街づくり委員会の審議の議事録を読みましたが、種々の意見は出されながらも、耐震改修への取り組みでは大方、一致した意見でした。また近年の本会議場での一般質問では、自民、公明、民主など各党が、耐震改修助成制度を提案しております。
ぜひとも議員の皆さんが、我が党の提出した両案にご賛同いただきますようお願いを申し上げ、日本共産党を代表しての賛成討論といたします。