2007.07.04 鈴木ひろ子
日本共産党区議団を代表して、第52号議案「品川区立保育所条例の一部を改正する条例」、第53号議案「品川区保育の実施等に関する条例の一部を改正する条例」、第54号議案「品川区立保育所における延長夜間保育に関する条例の一部を改正する条例」に反対の立場で討論を行います。
これらの3つの条例案は、国会で2006年6月に成立した「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供に関する法律」東京都議会で同年12月に決定された「東京都認定こども園に関する条例」を根拠法とし、区立保育園のうち一本橋保育園、五反田保育園、旗の台保育園の3園を、品川区で初めて「認定子ども園」とするために改定するものです。その内容は、保護者の就労の有無に係わらず、4・5歳児を、各園5名ずつ定員枠を拡大、3〜5歳児童に対して幼児教育と保育を一体的に提供するとしています。
以下反対の理由を述べます。
ここでは2点問題点を指摘します。
その一つは、果たして需要があるのかという問題です。
厚生委員会で、今年度4・5歳児で保育園に入園を希望して入れなかった子どもは何人かの質問に、課長は、品川区全体で4月1日現在1人ずついたが、今は解消され、4・5才児の待機児は対応済みだと答弁しました。幼稚園でも定員に満たない園がある中で、なぜ今公立保育園で4・5歳児の定員枠を増やして認定子ども園をスタートしなければならないのか、根拠が示されていません。
2つ目には認定子ども園で教育・保育がどう変わるかが明らかになっていない問題です。
区は、保育園の中で幼児教育の強化を行うとしています。厚生委員会で具体的にどう変わるのかとの質問に、課長は「どういう違いがあるかは今すぐ見えるものではない」と幼児教育導入でどう変わるかを明確に答えることができませんでした。就学前乳幼児教育プログラムを策定するとしていますがその内容も明らかになっていません。
そもそも保育園と幼稚園で幼児教育に違いがあるのでしょうか。区は、幼児教育とは学校教育法78条各号に掲げる目標が達成されるよう行う保育だと説明します。しかし、学校教育法78条を達成するための幼稚園教育要領の内容と、保育所保育指針の内容はそっくり瓜二つです。つまり、これまでも保育園で、保育指針を通して、学校教育法78条で掲げる目標達成の幼児教育を行ってきたのではないでしょうか。
ここでは3点問題点を指摘します。
その一つは、一人の担任が保育する人数が増え、保育水準が低下するのではないかという問題です。4・5歳児をそれぞれ5名ずつ10名の定員枠を増やすにもかかわらず、子ども30人に保育士1人という職員配置基準を変えないため、一人で20数名の保育をすることになります。必要な場合は、専門的な知識を持っている非常勤職員の配置を検討するとしていますが、非常勤では継続的な保育は困難だし、安定した体制とはなりません。
そもそも、30:1の「最低基準」は、1947年の終戦直後に制定されたものです。国際的に見ても、イギリス8:1、ドイツ10:1などと比較しても日本は大きく立ち遅れ、改善は急務です。しかも、夜間保育園では朝7時30分〜夜10時までの14時間半もの長時間保育となっているわけですから、ひとり担任では半分以上担任が存在していないことになります。今こそ遅れた職員配置基準の改善が必要です。
2つ目には一人当たりの保育スペースがさらに狭くなることです。
幼児一人当たり1.98uという面積の基準は制定当初から変わっておらず、寝るところ、遊ぶところ、食べるところが一緒の狭いスペースに過ぎません。
保育の弾力化によって現在でも一本橋保育園では定員75名に対して82名、五反田保育園では80名に対して89名、旗の台保育園では82名に対して94名と、すでに定員よりかなりオーバーして入所させています。五反田、旗の台保育園は夜間保育園であり、一本橋、五反田保育園では一時保育を、旗の台保育園ではオアシスルームを行っています。幼児1人に対して現在でもゆとりない中に、さらに10名の定数枠の拡大でスペース的にゆとりがなくなることは明らかです。
区も子育て環境の充実を目的に掲げているのですから、今こそ「最低基準」を抜本的に見直し、職員配置基準や子供1人あたりの面積など施設の基準を改善すべきです。
3つ目に、幼児教育という名のもと、4・5才児の昼寝をなくす方向で検討されていると聞きました。これは長時間保育の子供に負担になる点で問題です。朝早くから夜遅くまでの長時間保育のこどもたちには、休息の保障が必要です。だからこそ保育園では寝たくないという子供にも横になって休ませてきたのではないでしょうか。幼児教育導入で保育に欠ける子の保育がなおざりにされたのでは本末転倒です。
短時間保育児童は、保護者が働いている、いないにかかわらず受け入れるとしていますが、その入園料・保育料は幼稚園に準じて応益負担になっています。親が同じように働きながら、同じ保育園で、同じ保育を受けながら、収入に応じての保育料と収入にかかわらず一律応益負担の保育料があっていいのかという問題です。保育料は収入に応じた応能負担とすべきと考えます。
今回の第53号議案の条例中、保育料の多子軽減を拡大し、保育園以外の幼稚園や認定こども園に入園している児童まで対象にする内容については賛成するものです。しかし同時に、保育料の応益負担が含まれているため、第52号議案、第54号議案と共に53号議案も反対とします。
認定こども園は、幼稚園、保育所の国基準を下回る認定基準を許容し、直接契約の導入で、保育を必要としている子供たちへの公的責任が明確にされておらず、公的保育を崩すことになりかねないものです。今国や自治体に求められているのは、保育・子育て支援の予算を増やして、待機児解消のために認可保育園を増設すること、国民の声に応える子育て施策の拡充であることを指摘し、反対討論とします。