2008.03.27 いいぬま 雅子 区議
日本共産党品川区議団を代表して、第19号議案「品川区後期高齢者医療に関する条例」の反対討論を行います。
本条例は、高齢者の医療の確保に関する法律並びに東京都後期高齢者医療広域連合の条例で規定されている事項などを品川区として条例に定めるものです。区において行う事務、保険料を徴収すべき被保険者、延滞金、罰則など全11条から構成されています。
後期高齢者医療制度とは、75歳以上という特定の年齢だけを対象にした医療保険制度であり、世界の国民皆保険制度の国の中で文字通り日本だけの特異な保険制度です。
現行制度との大きなちがいを4点述べます。
1点目は、年齢だけで家族と引き離し、低所得者も含め、全ての「後期高齢者」から保険料を取り立てる点です。
2008年4月以降、75歳以上の高齢者は、それまで加入していた国保や健保を脱退させられ、「後期高齢者だけの医療保険」に強制的に組み入れられます。現在「扶養家族」として被用者保険に加入している人は、家族と引き離され、また夫婦も75歳を境に別々の保険となり、一人ひとりが保険料を払うしくみになります。
2点目は、保険料の「年金天引き」です。
1万5千円以上の年金から介護保険料と合わせて「後期高齢者医療保険料」が天引きされます。いま異常に高い国保料が加入者を苦しめていますが、命綱である年金から問答無用の天引き。「分納」など相談の機会を奪う「年金天引き」は、高齢者の生存権を脅かすものです。
3点目は、際限なく値上げされる保険料です。
東京都の保険料は、年間平均9万円ですが、年金収入が400万円以下の人は現在の国民健康保険料より高くなります。また75歳以上の人口増に伴って自動的に引き上がるうえ、後期高齢者医療の給付費が増大した分も保険料に跳ね返り、2年ごとに改定され大幅な値上げが将来にわたり続いていく仕組みになっています。払えなければ保険証を取り上げる残酷な制度です。
4点目は、高齢者に持ち込まれる差別医療です。
75歳以上の後期高齢者の診療報酬が別建てにされ、「包括払い(定額制)」となり、保健医療に上限が設けられます。よって、手厚い治療を行う病院は赤字となり、検査・投薬・手術の制限、入院の短縮、早期退院の促進など進められることは明らかです。新しくできる健康診断制度では「特定健診・特定保健指導」は、対象年齢を40歳から74歳までと限定し、75歳以上は対象から外されています。また「終末期医療」に「後期高齢者終末期相談支援料」という特別な診療報酬体系を持ち込み、患者や家族から「過剰な延命治療を行わない」という誓約書をとる、「在宅死」を選択させ退院させた病院には報酬を上乗せするなど、医療制限、病院追い出しをねらっています。元厚生労働省局長堤修三大阪大大学院教授は、後期高齢者医療制度を「姥捨て山」と呼びましたが、まさにそういうものに向かう危険性をはらんでいます。
2月25日の厚生委員会審査において、本制度の導入の理由として、少子高齢化の流れの中、国民皆保険制度を「持続可能」なものにしていくために行われた改革であり、世代間の公平が述べられていました。「持続可能」なものにすると言っていますが、現状は、すでに医療崩壊が起こっています。
そもそもこの制度は、2006年6月に自民、公明両党が強行した医療改悪法で決められたものですが、おおもとにあるのは、小泉内閣以来の社会保障の削減路線です。社会保障予算の自然増さえ認めず2002年度には3,000億円、03年から07年まで毎年2,200億円ずつ削減し、すでに1兆4千億円削減されました。その結果、医療、年金、介護などの社会保障のあらゆる分野で、負担増と給付減が押し付けられ、「医療難民」「介護難民」という言葉に象徴されるように、社会保障から排除される多くの人々を生み出しています。年金課税の強化、住民税非課税措置の廃止など税制改悪後の更なる改悪が後期高齢者医療制度です。後期高齢者の医療費を30兆円から25兆円へと5兆円も減らそうとしていますが、まさにここに後期高齢者制度創設の狙いがあります。こんなやり方はもう限界です。「持続可能」というならば、減らし続けた財源を元に戻し、崩壊した医療を立て直すべきです。
日本の総医療費は国内総生産の8%、OECD加盟国30カ国中22位、G7参加国で最下位です。国の負担が少ないばかりか、事業主負担も,ヨーロッパ諸国の4割から6割と低水準です。反面、日本の被保険者負担は、スウェーデンより重く、イギリスやフランスとほぼ同水準。つまり国と大企業の負担が少ないため、日本の医療・社会保障は貧しい水準にとどまっているが、国民の負担だけは既にヨーロッパ並みの「高負担」になっているのです。国民だましの宣伝はやめるべきです。
米軍への思いやり予算2080億円、大企業への優遇税制を10年前の水準に戻すだけで7兆円もの財源を生み出すことができます。高齢者の命を守るために税金をしっかりと投入することこそ政治の責任です。
区が行った説明会では「年寄りは、何十年も保険料を払ってきたのにまた払えというのか」「戦中戦後を生きのびて来た年寄りにあまりにも冷たい」「国と家族から捨てられるような制度だ」と怒りの声が続いていました。長生きを祝えない社会でいいのでしょうか。高齢者の命を大切にしない国に未来はありません。
この制度の内容が明らかになるにつれ、反対の動きが広がり、制度の「中止・撤回」「見直し」を求める地方自治体の決議は、530自治体、反対署名は500万筆に及んでいます。3月23日、井の頭公園では、後期高齢者医療制度中止を求める東京大集会が行われ、1万2千人の人々が、「いのちは平等、年齢による差別は許されない」と訴えました。国会においては、日本共産党、民主党、社民党、国民新党の野党4党が、2月28日、後期高齢者医療制度の廃止法案を衆議院にて提出しました。これが国民の声です。後期高齢者医療制度の撤回・中止を求め、本条例に反対の意思を表明し討論を終わります。