2008年10月22日 安藤 たい作 区議
日本共産党品川区議団を代表して、第62号議案「平成20年度品川区一般会計補正予算」に反対の立場から討論を行います。
本補正予算には、八潮特別養護老人ホーム整備基本設計委託費など、長年わが党が求め続けてきた施策の予算が含まれるなど、前進面もみられます。しかし、五輪開催を口実にした「都市再生」に8兆5千億円もつぎこむ石原都政に歩調を合わせたオリンピックムーブメント事業費、来年10月から予定されている住民税の年金天引きのためのシステム改修費など、区民からみて決して見過ごすことのできない予算も含まれているため、反対します。
以下、とりわけ重大な住民税の年金天引きの問題にしぼって、反対の理由を述べます。
補正予算に盛り込まれたシステム改修経費は、今年4月の地方税法改正に伴うものです。来年10月から、65歳以上の課税されている公的年金受給者を対象とし、区民税を公的年金から特別徴収する制度、いわゆる年金天引きを行うための改修費用です。6000万円をかけて電子システムを導入し、公的年金者の情報を社会保険庁と直接電子データでやりとりし、年金から住民税が天引きされます。
問題点を大きく2点、指摘します。
第一に、そもそも年金天引きは、納税者である国民の権利を侵害するものだという点です。納税者の意思や事情を無視し、本人の届出はおろか、事前の申請や本人同意も全く行わず、一方的に開始する天引きは、まさに強制徴収といえるものです。国民は納税の義務を負うとともに、主権者として自らの税額を申告し、確定し、どのような方法で納税するかを自らの意思で決められる「納税者としての権利」を持っています。また、このようなことを通して、税金の使途について監視し、発言し、是正する権利も保障されることになります。最低限、口座振替を含めた納付が選択できるようにすべきですが、その余地すら残されておりません。いやもおうもなく天引きし、納税方法の選択すらできない今回の措置はやめるべき。納税者の権利を擁護・発展させる立場に立つことが必要です。
委員会質疑の中で区は、「高齢者が窓口に出向き支払う手間が省ける」などと、「納税者の利便向上」を強調しました。「利便」というなら、「口座振替」で事足ります。このような態度は、二重三重に納税者を愚弄するものです。
第二の問題は、天引きにより、年金生活の高齢者の生活に直接打撃を与えるという問題です。
委員会では、区内の65歳以上の高齢者は約6万6000人、うち年金天引きの対象となる方は約3万人、との答弁がありました。年金のみ収入の単身者では、年間155万円、月額にすると12万9000円で課税対象となります。生活保護基準を下回る収入の方から区民税を強制徴収することは、健康で最低限度の生活を保障した憲法25条をもふみにじるものです。
また、これまで区民税は、納期通りの納付が困難な場合、納税相談をし、話し合いで分納などの措置が取られていました。しかし、天引きになれば、このような相談の機会が奪われることになります。さらに委員会質疑では、公的年金受給者で何らかの理由で区民税を滞納している469人のうち437人、93%もの方が年収200万円以下だということが明らかになりました。少ない年金額で「払いたくても払えない」方から相談の機会すら奪い、「命綱」ともいえる年金から問答無用で税金を徴収し、残った額を本人に渡す。こんなやり方が、所得の低い年金生活者に特に打撃を与えることは明らかです。高齢者の生存権すら侵害する今回の措置は認めることはできません。
麻生総理は今国会で、批判の大きい後期高齢者医療制度保険料の年金天引きについて「高齢者の心情にそぐわない」と言及。世論の大きな批判を受け、政府は天引き以外の選択肢を広げざるをえませんでした。また、歴代政府の怠慢により、国民が受け取るべき年金が不当に減らされたり、消失させられてしまっています。国民の命と暮らしをかえりみない政治が、徴収側の論理だけで、所得税、介護保険料に加えて、この10月からは国保料や後期高齢者医療保険料をあらたに天引き、更に住民税までも天引きすることは、言語道断であり、区民の理解は到底えられないもの。中止すべきです。
以上のことから、住民税の年金天引きのためのシステム回収のための予算は認められません。品川区は区民の立場に立って、天引きはやめるよう、国にはたらきかけることこそ行うべきです。
よって、このような大変重大な改悪内容を含んだ補正予算にあらためて反対を表明し、討論を終わります。
以上