前のページへ戻る           日本共産党品川区議団TOPへ

いいぬま雅子区議 「福祉施設・保育所の最低基準を維持し、保育所の直接契約方式を導入しないよう、国に対して意見書採択を求める請願」に対する賛成討論

2008年10月22日 いいぬま 雅子 区議

日本共産党品川区議団を代表して、平成20年請願第21号「福祉施設・保育所の最低基準を維持し、保育所の直接契約方式を導入しないよう、国に対して意見書採択を求める請願」に賛成の立場、委員長報告に反対の立場で討論を行います。

本請願は、地方分権改革推進委員会など政府の諮問機関が、国に対し「福祉施設、保育所などの最低基準見直しの提起、直接契約の導入」など更なる規制緩和を求めていることに対し、歯止めをかけるため「福祉施設・保育所の最低基準を維持し、保育所の直接契約を導入しないよう、品川区議会として国に意見書をあげてください」との請願です。

地方分権推進本部は、2008年6月20日決定した「地方分権改革推進要綱」で、“地方分権の拡大”を強調し保育所の直接契約の採用と国の最低基準の見直しを盛り込みました。委員会審査の中で、「分権という形をとれば、よりいい形に対応する可能性がでてくる」との意見がありましたが、分権と言いながら規制緩和を進めることが、いい保育につながるのでしょうか。

実態は大違いです。国は保育所運営費の一般財源化や補助金削減を進め、地方自治体の財政を圧迫。仕事は押し付けるが予算は付けず大変な状況です。この間“民間に任せればサービスは充実する”と官から民への構造改革を推し進め企業参入の障害になる規制をさらに緩和。財界の言いなりの政治を進めてきました。耐震偽装、汚染米問題に見られるように、規制緩和の拡大は、違法を生み、行政のチェックが機能せず責任放棄となります。国は子育て支援を口にしながら、保育の分野での規制緩和を更に進め、現行保育制度の解体を狙っているのは明らかです。

最低基準の引き下げや直接契約が導入されたらどうなるのでしょうか。

東京都が2001年導入した認証保育所A型を見ればわかりやすいと思います。認証A型は営利企業参入を促進する東京都の独自制度です。基準面積、有資格者の割合など認可保育所の基準を緩和し、保育料は上限があるものの各施設の自由設定であり、事業者と利用者の直接契約です。良い保育を求め努力している保育所もありますが、7割が企業経営であり、高い保育料、園庭がない、職員の待遇が悪く入れ替わりが激しいなど保育の質の低下が問題になっています。

中でも、今年じゃんぐる保育園の認証取り消し処分、小田急ムック成城園での補助金不正受給の疑いなど認証保育所A型での不祥事が続いています。

2か所ともに職員配置基準に違反し、実態のない名簿を使い職員数の水増し架空申請を行ってきました。元職員の女性は「資格や経験のない職員がほとんどで、保育ができる環境ではなかった」「人手が足りず、0歳児がおもちゃを誤飲しチアノーゼになる事故もあった」との証言にゾッとしました。

認証取り消しになったじゃんぐる保育園の経営者は「誰も教えてくれない保育所ビジネスの始め方、もうけ方」という本を執筆するなど利益第一の無責任な経営を続けていたにも関わらず、保育園の第三者評価はA評価B評価と高く深刻な保育士不足などの実態は見抜くことができませんでした。

2園だけの問題ではありません。すでに規制緩和によって起こっている実態を認識しなければ子どもたちは守れません。

最低基準は、施設や職員配置など、国が定める最低基準であり、自治体はこの基準以上の条件で保育を実施する責任があります。例えば職員配置の最低基準は、保育所の3歳児20人に対し保育士の配置は1人、4歳5歳児は30人に対し1人の配置です。とてもよい環境とは言えません。3歳児以上の場合ドイツでは10対1、イギリスは8対1、スウェーデンは5対1です。最低基準を見直すならば、世界のレベルに近づけるべきです。最低基準引き下げに対し、保育団体が「子ども一人一人を大切にする保育ができない」とこぞって反対したのも当然です。

次に直接契約導入についてです。

国と自治体は保育を必要とする子どもに保育を実施する責任があります。次代を担う子どもの成長と保護者の就労を保障し、保育所を整備し、保育を行い、保護者の負担にならない保育料を設定する責任です。保護者が業者から直接保育サービスを買う直接契約方式に変えれば、自治体の仕事は、保護者に補助金を出すだけになってしまい行政の責任が大幅に後退します。企業が保育料を自由に設定し、入所児を自由に選ぶのですから、保護者の経済力によって選ばれたり、手がかかる子どもは排除されるなど公平性が確保できません。保育は金次第となり、しわ寄せは子どもたちにふりかかります。

子どもは社会の宝物です。どの地域、どの家庭に生まれても、より良い保育を受け幸せに育つ権利があります。すべての子どもが安心して保育が受けられる公的保育制度の拡充こそ求められています。時代に逆行する改悪に歯止めをかけるために、区議会として、意見書をあげていくことを求め、賛成討論を終わります。

以上

ページトップへ

前のページへ戻る           日本共産党品川区議団TOPへ