2011.3.29 安藤 たい作 区議
日本共産党品川区議団を代表して、第21号議案「品川区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について反対討論を行ないます。
同条例には、時限措置だった出産育児一時金の上乗せ分の恒久化など改善点も含まれていますが、問題は、保険料算定の住民税方式から旧ただし書き方式への変更など、加入者への深刻な影響です。以下、反対理由を述べます。
1点目は社会的弱者を狙い撃ちにする国保料値上げです。
旧ただし書き方式とは、保険料算定で、従来は考慮してきた扶養控除、障害者控除、寡婦控除さらに医療費や保険料控除などを一切認めず、基礎控除の33万円のみ認める方式。高齢者夫婦や障害者、所得の少なく扶養家族が多い世帯などの保険料が上がります。社会的弱者を狙い撃ちにする国保料値上げは間違っています。この変更だけで、住民税非課税世帯である年金収入200万円65才以上2人世帯では、1年間の国保料が6万3840円から10万1863円の1.6倍に。実際には、これ以外にも医療費増等の影響で基礎分や支援分などが上乗せされ、国保料はさらに値上がりします。
今回の値上げは、国庫負担の引き上げや、一般会計からの繰入金の増額で防ぐことができます。しかし品川区は「国保加入者は品川区民の3割以下。7割の方は他の医療保険に入っている」事を理由に挙げ、これを拒否。社会的弱者の医療保険を支えるために税金を使う事は当然のこと。それこそ政治の使命ではありませんか。
2点目は激変緩和措置の財源づくりについてです。
今回の改正にともない激変緩和措置が取られましたが、その対象は値上げとなる加入者の一部であり、2年後には上げるというものです。しかも、その財源は、23区が独自に行ってきた高額療養費に対する一般財源投入分の一部を充当。その分を保険料上乗せとし、激変緩和措置の財源を、加入者同士でまかなわさせるものです。品川区はこの方法を「保険制度の趣旨にあった財源確保策」と述べ、国保は加入者同士の助け合い、相互扶助の制度だと説明しました。しかし、国保は国保法第一条の目的に「社会保障及び国民保健の向上」とうたっているように、明確な社会保障の制度です。「相互扶助」を強調するこの考えは、今後の国保料値上げに新たな道を開くだけでなく、社会保障である国保を戦前の救貧対策に後退させるもので、認められません。
3点目は政府が狙う「広域化」についてです。
今回の算定方式の変更について、品川区は、政府が狙う医療保険制度の広域化への対応とも説明します。民主党政権は「国保の広域化」「医療保険の一元化」を掲げ、その内容は自公政権時代の小泉構造改革による社会保障削減路線をそのまま踏襲するもの。昨年5月19日厚労省通達「広域化等支援方針の策定について」は、自治体による一般財源の繰り入れ解消を迫り、保険料値上げに転嫁させる内容です。政府が狙っている「広域化」は、社会保障における国の責任を棚上げし、区民には、さらなる国保料値上げか、それが嫌なら医療を制限、と最悪の医療改悪につながります。国庫負担を計画的に復元し、安心できる国保制度を築く事こそ求められています。
4点目はこれだけの変更に関わらず、新年度の国保料がいくらになるのか、条例改正に伴う全体シミュレーションが示されていない問題です。質疑の中で、加入者が品川区に問い合わせれば、自分の保険料がいくらになるのか説明する事になりましたが、厚生委員会で示された資料には、旧ただし書き方式に伴う変更による試算のみで、医療費増や介護分の引き上げなど実際の負担増は示されませんでした。区民への影響を示さないまま、国保料値上げの条例改正を提案するのは問題です。
最後に、3月11日に発生した東日本大震災が、区民の生活にも影響を及ぼしています。とりわけ影響が大きいのは所得が少ない方々、社会的弱者の方々です。非正規労働者は「自宅待機」などの雇い止めや収入が途絶える事態も。原発問題など将来不安が広がり、消費も低迷。客足も減り、まちの飲食店や商店は売上げ減。計画停電の影響は、街場の零細企業へ営業継続の不安を広げています。国保の加入者の多くはこれらの所得が少ない方々であり、震災で最も深刻な生活への影響を受けている方々に、更に追い討ちをかけるような国保料値上げはやめるべきです。今からでも区として一般財政の投入で値上げとならない対策をとること、国保法第44条に基づく自治体独自の一般減免制度の思いきった活用など、あらゆる対策を講じるよう求めます。
安心の国保制度にするには、高すぎる保険料が滞納を増加させ、国保財政の悪化が更なる国保料の値上げという悪循環を断ち切ることが必要。政府が狙う「広域化」方針は撤回させ、国が減らし続けてきた国庫負担をもとに戻して、国保財政を抜本的に強化することが不可欠です。
以上で、反対討論を終わります。