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品川・保育園と「父母の会」行政が"切り離し圧力"保護者に文書配布自由な活動にブレーキ

「毎日新聞」2000年5月9日(火)付の記事

「保育園と『父母の会』の関係についてのお知らせ」−。こういうタイトルの品川区保育課長名の文書が、同区内の保育園に子供が入園すると配られる。「両者直接の関係はなく、保育園では入会は強制しない」と書かれている。保護者はどう受け止めるだろうか。「君子危うきに近寄らず」。多くは荷かありそうだか、ら父母の会とかかわるのをやめておこう、と思うだろう。行間に"圧力"が漂うような文書をなぜ行政が配るのだろうか。【本橋由紀】

父母の会は保育園ごとに親たちで作る任意団体で、互いの親ぼくを図ることなどを目的にしている。

品川区の中島憲二保育課長はこの文書を配る理由について、次のように語る。「父母の会の上部団体の『父母の会連絡会(父母連)』が、特定政党とつながりがある団体『品川保育問題協議会(保問協)』の下部団体になり、運動してきた歴史があるため、4、5年前から関係を整理している。父母の会に入らないと仲間はずれにされるという話もある。(他区の父母の会と比べても)特殊だから」

このため父母の会としては園舎を使うごともできないし、園が父母にお知らせなどを配るために部屋に設けている「ポケット」を使うことも禁止している。だが、区の配る文書に「政党とのつながりが考えられる」といった趣旨のことは書かれていない。

父母連会長で会社員の西本貴子さん(39)は、「政党とかかわりはないし、あったとしても昔のこと。だが、課長は私たぢに会いもしないし、話もしてくれない」という。ただ、現在も父母連は保問協と一緒に運動している。周辺を取材すると、十数年前、当時の保問協が間接的に選挙にかかわったという話も聞こえてきた。だが父母連や保問協は政党との関係を否定している。

こうした状況は、最近、子供を入園させた保護者を戸惑わせている。

30代の保護者は「親同士の連絡網の文書も配れないので、例えば、うっかり自分の子供がほかの子にけがをさせても、連絡先も分からないため電話で謝ることもできない」と話す。別の保護者は「私たちは地域での子育てを円滑にするためにも、純粋に父母の会活動をしたいのに、いろんな思惑が交錯して自由になれない」という声もある。

実際、ある保育園では「父母の会に入るのをやめよう」と、ほかの保護者を誘いかけるケースも出てきているという。また、父母の会の中には、上部団体の父母連から脱退しようという動きもある。

隣の大田区では、父母の会の活動はもっと自由だ。園舎を使うことや「ポケット」でニュースを配ることができるし、行政や議会との話し合いも持たれている。菅野司・大田区父母の会連合会事務局長(53)は「園舎を使わせない、脱会を促進させるというのは民主主義の根幹にかかわることで、行政がやるべきではない。ほかの区ではもっと自由に、父母の会が活動できている」と話す。

父母の会は、役員選出や行事の役割分担など面倒なことも多く、ない方が気楽という考え方もある。だが、「子育て困難」と言われる現代だからこその存在意義もある。同じ保育園に通い、同じ地域で暮らす者同士が親ぼくを深め、子供の成長を見守ることができる点だ。夏祭りや移動動物園などの行事を主催、あるいは保育園と共催することで、ほかのクラスの保護者、担任以外の保育士と接することもある。

中島課長は「それは別のセクションでやっている。保育園の目的は子供を預かること」という。だが「子育て支援」をうたう行政が、両者を切り離して考えることに意味があるとは思えない。父母の会がどのようなスタンスで活動するかは、父母自身が決めること。権力を使って、活動にブレーキをかけ、骨抜きにするような手法には疑間が残る。

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