2024年12月05日
鈴木ひろ子区議が賛成討論を行いました
「訪問介護の基本報酬引き下げの見直しを求める意見書提出を求める請願」に賛成の立場で討論を行いました。
2024.12.05 鈴木ひろ子 区議
日本共産党区議団を代表して、請願第16号「国に対して訪問介護の基本報酬引き下げの見直しを求める意見書の提出を求める請願」に対する賛成討論を行います。
この請願は、介護事業者の今年1月~10月の倒産件数が145件にのぼり過去最多、中でも訪問介護が過去最多の72件と半数を占めているとし、4月に実施された訪問介護報酬引き下げの見直しを求める意見書を国に対して提出するよう求めるものです。
同趣旨の陳情が第2回定例議会にかかり、最終本会議で賛成討論を行いました。今回の厚生委員会の審査を踏まえて、改めて皆さんに賛同を呼びかけたいと思います。
まず第1に、元々ギリギリで頑張ってきた訪問介護事業所が、今回の介護報酬引き下げによってどれほど追い詰められる状況となったか、現場の声に耳を傾け、寄り添うことが議会には求められているということです。
全国で訪問介護事業所を展開している全日本民医連では、8月に財務省と厚労省と懇談し要請。訪問介護基本報酬の引き下げの撤回と引き下げ分を補填するための今年度中の予算措置、来年度予算で介護報酬の臨時改定、介護職員給与の全産業平均水準への引き上げのための予算計上、有料紹介業者に対する社会的規制を求めるとともに介護事業所や利用者から寄せられた970件の意見・要望を合わせて提出しています。要請の中身はどれも当然のものです。970件の意見・要望はA4の用紙118㌻にわたり、読ませて頂きましたが、介護の現場が大変な実態、報酬引き下げへのヘルパーさんたちの怒りや失望がよくわかるものになっています。いくつか紹介します。
「日々ヘトヘト。それでもヘルパーを待っている利用者がいる。だから頑張れる。こんな思いを打ち砕く基本報酬引き下げがされ、このままでは若い人は他業種に行き、高齢の職員は辞めていく。人材不足どころか介護崩壊しかありません。」
「雨でも猛暑でも自転車で移動し、エアコンをつけていない利用者への訪問等、労働環境の悪さ、その上低賃金で新しい人がなかなか入ってこない。事業所閉鎖で依頼が来るが受けられない。さらに報酬引き下げとますます深刻です」「介護報酬の引き下げはヘルパー全員のモチベーションが下がります。」「報酬が下がり事業継続が困難です。経費が掛かり、利益が上がらず、加算をとってもこの5年くらい赤字でぎりぎりな状態です。報酬引き下げの撤回と引き上げの再改定を求めます」これらのコメントが970人から寄せられ、読み進めるにつけ、介護報酬を引き下げたことへの憤りとともに現場の実態に胸が痛む思いです。私たち区議会がこれらの声に応えることこそ求められているのではないでしょうか。
第2に、データや報道からも報酬引き下げが介護現場の倒産につながるような経営困難、人材不足の実態が明らかであり、速やかな対策が必要だからです。
委員会審査では、自民党から「介護報酬引き下げの影響で倒産が増えたとの根拠は何か」と紹介議員に対しての質問がありました。その根拠は現場にあふれています。4つ紹介します。
11月28日付毎日新聞では、「訪問介護・崩壊の危機、衝撃の基本報酬下げ、倒産最多。利用者にしわ寄せ」とのタイトルで、実態を報じています。
例えば、月1800人が訪問介護サービスを利用する「コープあいち」では、4月~9月の訪問介護の基本報酬は前年同期比で1040万円減収。物価や燃料費の高騰などで経費もかさみ、経常赤字は1400万円。増収に向け訪問件数を増やそうにも人手不足が壁。新たに雇うにも有効求人倍率は14倍。登録ヘルパーは14年前の6割に減少。など厳しい実例をあげ、「今回の改定は元々経営が厳しい訪問介護事業者に追い打ちをかける結果となった。業績悪化による倒産は後を絶たず、人手不足でヘルパーの成り手もいない。在宅介護が続けられるか業界は危機に直面している」と報じています。
様々な団体が訪問介護報酬引き下げの影響調査を行い、深刻な実態が示されています。
日本医療労働組合連合会(医労連)が訪問介護事業所182事業所を対象に行ったアンケートでは、報酬引き下げによる経営悪化68%、新規職員採用困難38%、夏のボーナス減額27%。今後はさらに悪化すると回答。「人が足りない、定着しない、若い人が働けない。訪問介護で働いている人は、利用者のため踏ん張って歯を食いしばって、一生懸命働いているが、もう耐えられないというところまで追いつめられている」と訴えています。
また、一般財団法人・長寿社会開発センターの調査では、介護報酬引き下げの影響について、事業所の閉鎖を考える、閉鎖・倒産が進むが22%。仕事への意欲・モチベーションが無くなったが67%、訪問介護事業の将来を期待しないが64%、期待できるは5.4%という深刻なデータが示されました。
一般社団法人・全国コープ福祉事業連帯機構も「緊急アンケート」を実施し結果を公表。具体的には、「11都府県・14社員法人で、4,5月の累計実績について、事業収入は前年同月比マイナス1.3%の悪化。14社員法人で合計4075万円の減益で黒字から赤字へ転落。直行直帰型ヘルパーが前年との比較で162人の減少(マイナス7.2%)」と述べています。このデータをもとに、立憲民主党は厚労省に対して「訪問介護の基本報酬引き下げの早急な見直し等を求める要請」を行っています。
また委員会審査では、自民党から「国がアンケート調査をしているから、意見書をあげるより、そちらを重視すべき」との趣旨の発言がありました。しかし、厚労省が現在行っているアンケート調査は分析・検証し委員会・分科会を通して結果が出るのは3月です。来年度の予算には間に合いません。令和6年度補正予算で、介護職への賃上げ支援や物価高への対応などが打ち出されましたが、報酬引き上げはなく、現場からはとても不十分との指摘です。小規模事業所も含めた介護事業所が安定して運営でき、介護職員給与を引き上げるためには来年度の基本報酬の引き上げこそ必要です。
最後に、自民党から出された意見で「報酬引き下げは、介護保険料を抑制するのに理解できる」との発言に対する提案です。介護の深刻な人材不足や事業所の廃業・倒産の根本には、低すぎる介護報酬とその連続削減があります。現場は危機的な状況です。これを解決するには介護報酬の引き上げや公的支援が必要です。今の仕組みでは自民党の委員の発言のように介護報酬引き上げが保険料・利用料の負担に跳ね返る仕組みです。日本共産党はこの矛盾を解決するために国の負担割合を現在の25%から35%に10%引き上げることを提案しています。この提案は以前、自民党や公明党もしていたことです。ご一緒に声をあげましょう。
介護崩壊を食い止め、住み慣れた品川で安心して暮らし続けられるよう、また介護の現場で働く方々が誇りをもって働き続けられるよう、区議会として意見書を出しましょう。請願への賛同を呼びかけ、日本共産党の賛成討論を終わります。