2025年03月21日
のだて稔史区議が令和7年度予算特別委員会 総括質疑を行いました
2025.03.21 のだて稔史 区議
質問項目
区長の施政方針と再開発について
のだて委員
日本共産党品川区議団を代表して、石田ちひろ委員と共に総括質疑を行います。
まず私からは、区長の施政方針と再開発について伺います。森澤区長は施政方針で、国の抱える様々な構造的課題から決して目を背けることなく、問題の本質を見定めながら、為すべきことを為す。これこそが政治の責任とし、旧来型の「自己責任」の社会モデルから転換し、将来の不安を取り除く新しい社会モデルを示すことが求められていると述べています。区長の言う、国の抱える構造的課題とは何か、伺います。今後、自己責任の社会からの転換をどのように進めるのか伺います。
久保田企画経営部長
最初の2点の質問に、私よりお答え申し上げます。
区長が施政方針において申し上げましたのは、我が国を世界と比較して見ますと、1人当たりのGDPはこの30年間で順位を大きく下げ、相対的貧困率は主要7か国の中で最も高い結果という状況であります。所得格差の度合いを測る指標であるジニ係数はOECD加盟国中9番目、現役世代への教育や社会保障に係る財政支出の水準も諸外国に比べて圧倒的に低く、格差と貧困が広がっている状況にありますということをご説明したところでございます。また、貯蓄がないと生きていけない社会であるにもかかわらず、2人以上の世帯の約25%、単身世帯の約36%は貯蓄がなく、老後の備えとして貯金や資産が足りないと回答する高齢者の割合は欧米の2倍から3倍に達しているということもご説明させていただきました。全世帯当たりの平均所得金額は上がるどころか、30年前の水準すら下回っており、平均所得金額以下の世帯の割合は62.2%にも上っています。所得が増えず、貯蓄もできず、将来の見通しが立たない、自助による生存、生活ニーズの充足が困難であるということが、今日の今の日本社会の構造的な課題なのであり、その根底にあるものこそが社会責任という考え方であるという認識であるということをご説明させていただいたところでございます。
次に、自己責任の社会からの転換をどのように進めるかというご質問でございますけれども、区長の施政方針では、旧来型の「自己責任」の社会モデルからの転換、生活に困窮している人だけでなく、あらゆる人々の生活を保障し、将来の不安を取り除く、新たな社会モデルを今後の在り方としてお示しさせていただいたところであります。弱者を救うのではなく、弱者を生まない。こうした社会の仕組みを構築していくため、引き続き、誰もが自分らしく暮らしていく上で不可欠な生活の基礎となる行政サービスを、所得制限なく全ての人に権利として提供する。そういった取組をさらに進化させていくことを述べております。加えて、子育ての社会化はもとより、高齢者の支援、障害者の支援の社会化をより一層進めることで、分断ではなく、分かち合い満たしあう、そうした社会モデルの構築をしてまいります。その上で、こうした取組を他自治体、ひいては社会全体に広げていく。言わば、区民の幸せを全ての人の幸せへとつなげられるよう、ここ品川区から社会を変革するメッセージを力強く発信していきたいと。こうした取組を進めることで、「自己責任の社会」から転換を進めていくということを考えているところでございます。
のだて委員
答弁のあった構造的課題は自然現象ではなく、大企業優先で社会保障を切り捨ててきた自公政権がつくり出したものです。来年度以降も石破首相は、軍事費をGDP比3%、18兆円に増額することを否定せず、自民・公明・維新は、命を削る医療費の4兆円削減を進めようとしています。品川区でも、高橋・濱野区政は国の悪政を先取りし、福祉を削減して大型開発を推進してきました。これまでの自己責任の政治からの転換を歓迎いたします。救貧施策としてゆがめられてきた社会保障を、権利として位置づけて、所得制限なく無償化することも評価いたします。ぜひこの社会変革を進めていただきたいと思います。
この自己責任社会を転換していく上で、1つ、大きな懸念があります。区長が施政方針で紹介した井手英策氏は、著書で消費税を16%から20%に引き上げ、財源にすると言っています。加えて、区はさきの代表質問で、消費税は社会保障の安定財源と答弁しました。今、物価高騰が進む中で、区民の重い負担になっているのが消費税です。総務省の家計調査によると、年収900万円以下世帯で一番重い税金が消費税です。食料品など必要な生計費にも課税し、低所得者も大富豪も同じ税率のため、低所得者ほど負担率が大きくなる逆進性が強いのが消費税です。消費税は社会保障の財源というのは、低所得者への社会保障を、低所得者の重い税負担で支える自己責任論です。税の取り方は、直接税を中心に、生活費には課税しない生計費非課税。支払い能力に応じて負担する応能負担と累進課税。株取引なども含めて、全ての収入を合わせて課税する総合課税であるべきです。それでこそ格差と貧困の是正に向けた所得再分配が機能します。低所得者に重い負担となる消費税を社会保障の財源にすべきではありません。いかがでしょうか。これから福祉や教育を充実させるための財源をどう考えているのか、伺います。
久保田企画経営部長
財源についてのお尋ねですが、今般の予算案における、所得制限によらない各種無償化の施策等につきましては、区政の全669事業を対象に実施しました事務事業評価により捻出した一般会計予算の1%、20億円を主な財源としているところでございます。こうした不断にわたる予算の無駄・削減の取組に加え、予算編成の考え方として、人を中心に予算を重点的に振り向ける予算のめり張りのつけ方いかんで、あくまでも消費税等に関する権限のない地方自治体ではありますが、必ずしも消費増税や住民負担を増やすことなく、財源の捻出は可能であると考えているところでございます。今後も、これまで築き上げてきた強固な財政基盤も活用しつつ、大胆かつ重点的に、区民の幸せ、ウェルビーイングにつながる施策に予算を振り向けていきたいと考えております。
のだて委員
消費税など住民負担なくできるということで、それは重要だと思います。
区長の言う「弱者を生まない社会」と逆行するのが消費税ですので、減税、廃止にこそすべきだと考えます。自己責任社会転換のためには、国にも意見を言っていただくよう要望いたします。
施策のさらなる前進へ、具体的に求めます。制服代や修学旅行費など、義務教育の無償化が拡大していることを評価いたします。共産党は、日本国憲法第26条の具体化へ、学校給食の無償化は14年前から求め、学用品等の無償化も求めてきました。請願審査では、自民党の「給食無償化は暴論だ」などの妨害もはねのけて実現しました。また、大学生への給付型奨学金も、実施を求める請願が区内大学生から2度出され、自民・公明などの反対で不採択でしたが、共産党は15年前から繰り返し実施を求め、ついに予算案に計上されました。さらに教育の無償化へ、修学旅行に続いて移動教室も無償化を求めます。いかがでしょうか。
高齢者福祉では、高齢者の補聴器購入費助成について、前区政は、まず普及啓発、正しい使用方法について、専門機関、業界団体が行うべきであり、区の役割ではないという姿勢でした。2019年から10回にわたり区民が請願・陳情を提出し、公明党からは数万円でインセンティブになるのかとの発言もあり、全て自民・公明などが不採択としましたが、区民の粘り強い運動が前進の力となり、共産党も国の提言なども紹介し、論戦し続けたことで、ついに助成の実施、所得制限撤廃、来年度予算案には助成額の2倍化が盛り込まれました。区民要望を取り入れ、施策を前進させてきたことを評価し、さらに拡充していただきたいと思います。高齢者の補聴器購入費助成を、港区や千代田区並みに14万4,900円まで引き上げることを求めます。いかがでしょうか。
米田教育次長
6年生・7年生で実施しております移動教室についてのお尋ねですが、既に宿泊費やバス代等を公費で負担しているものでございます。現在、各ご家庭には主に食事代をご負担いただいておりますが、その費用の無償化につきましては、他自治体の動向や財政面を考慮し、今後整理してまいります。
寺嶋福祉部長
ただいまご指摘いただきました、高齢者の補聴器助成ということでございますが、まず港区および千代田区が東京都の補助制度を活用して、来年度から非課税者への助成額を14万4,900円まで引き上げると聞いているところでございます。
一方、品川区ではこの間どのような取組をしてきたかといいますと、令和5年7月に補聴器助成を3万5,000円ということで開始しまして、そのときはまだ所得制限がございましたが、こういったほかの施策との、区の考え方も含めまして、今年度からまず所得制限を撤廃して対象者を拡大するという方向に行ったところでございます。こうした経緯から、来年度も引き続き所得制限を設けずにこの事業は実施していくというふうに考えておりまして、その中で、東京都の補助制度を活用できる最高額まで助成金を引き上げるということで、今回ご提案させていただくというところでございます。今後につきましても、ご利用者の声、それから他自治体の実施状況等も把握しながら、引き続き充実した支援に努めてまいりたいと考えております。
のだて委員
ぜひ、さらなる拡充をお願いしたいと思います。
地域包括支援センターの検討経費が予算案に盛り込まれ、23区で唯一、品川区だけが19年間、地域につくらなかったことについて、転換したことを歓迎します。これまで濱野前区政は、保健師と社会福祉士が配置されている他の自治体よりしっかりケアができていると説明してきましたが、区内の実態把握や、熱中症予防などの啓発、認知症ケアなどが不十分で、医師会からも、在宅医療のために相談窓口に保健師や社会福祉士は必須だと要望がありました。共産党は繰り返し、地域包括支援センターの拡充を求めてきました。検証・再構築に向けて、今から地域包括支援センター、直営とサブセンター、それぞれの事業実績と計画を毎年つくり、公表すべきです。いかがでしょうか。
これまでの高橋・濱野区政は、再開発や巨大道路造りを23区トップで推進し、福祉を抑制して、23区最低の状況を長期間続けてきました。23区最低の高齢者・障害者福祉からの改善を求めます。いかがでしょうか。
寺嶋福祉部長
まず計画をということですけれども、こちらにつきましては、介護保険事業計画の中には地域包括支援のことも網羅されておりますので、その中で方向性を示しているという形を取っているところでございます。それから、23区の最低の福祉の改善という厳しいご指摘でございますけれども、本予算案の中におきましては、まず基本的な考え方として、日常的生活を支える基礎的な行政サービスがあればこそ、全ての人がひとしく権利として利用できる社会を構築するといった軸があります。先ほど事例として挙がっておりましたけれども、例えば子育て支援におきましては、中学校標準服、それから修学旅行にかかる費用の無償化や、所得制限によらない給付型奨学金の創設といったものが盛り込まれております。一方、福祉施策につきましても、同じ考え方に基づきまして、例えば障害者支援におきましては、通所支援施設に係る利用者負担の無償化や介護タクシー利用等に発する予約手数料への助成を。一方、高齢者福祉におきましては、入院中の紙おむつ代助成における所得制限の撤廃や、それから、今お話が出ました地域包括支援センターの在り方検討に取り組むとしたところでございます。今後もご利用者の声や他自治体の状況も把握しながら、引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
のだて委員
地域包括支援については、実績をつかむことが課題抽出につながり、次につながってくると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。そして、様々、23区最低の福祉改善を、ぜひしっかりと進めていっていただきたいと思います。この間の高橋・濱野区政によって、23区最低の福祉がずっと続けられてきました。やはりここを改善していくということが、区民の幸せ、ウェルビーイングにもつながってくると思いますので、よろしくお願いいたします。
そして、前進面がある一方で、変えるべきこともあります。大崎や五反田、大井町、戸越公園、品川浦など、区内各地で進む超高層再開発によって、区民の生活が脅かされています。中でも武蔵小山の再開発では、毎回、区民から請願・陳情が出され、「ついの住みかを奪われる。どうしたらよいのか」と、切実な声が上げられています。高齢者を不安にし、生活を壊しているのが再開発です。武蔵小山の再開発、小山三丁目第一・第二地区に住む世帯数と、要介護認定を受けている人は何人いるのか伺います。資材高騰や労働環境の改善等で総事業費が上がり、それに合わせて補助金額が上がっています。先行したパルム駅前地区と駅前通り地区の補助金額は109億円と62億円でしたが、小山三丁目第一・第二地区は、221億円、237億円と、2倍以上になっています。施行区域面積当たりで見ても、第一・第二地区のほうが高額です。事業費が膨らむことに伴い、どんどん投入される税金が膨れ上がることが明らかになりました。しかも、再開発ができると地価が上がり、周辺住民の固定資産税が上がって暮らしを圧迫。これまで区は、23区でトップクラスの1,500億円超の税金を投入して再開発を推進してきました。これ以上の超高層再開発はやめるべきです。今回区長は、再開発に反対する住民の申出で昨年末に懇談しました。これまでの区政ではあり得ないことであり、重要な一歩です。一般質問の答弁でも、区長は、「将来に不安を感じる地域住民の切実な声を聞きました。今後もまちづくりに関する住民の様々な声に耳を傾けていく」としており、住民の声を聞く姿勢は重要です。区長は施政方針で、「ここで生きたいと思える社会と未来をともにつくってまいりましょう」と述べており、住み続けたいと願う住民を追い出す再開発はやめ、新たなまちづくりに踏み出すことが求められます。ここで生きたいという地域住民が住み続けられるまちづくりを、どう進めていくのか、伺います。
鴇田都市整備推進担当部長
まず初めに、小山三丁目第一・第二地区の再開発地区内の世帯数でございます。世帯数そのものは把握しておりませんが、住居の戸数につきましては、現時点の概算ということではありますが小山三丁目第一地区では約150戸、小山三丁目第二地区では約200戸と聞いております。また、要介護者認定についてですが、準備組合からは、地区内に介護が必要な権利者もおり、個別の事情などの相談に対応しておりますが、要介護者認定が何人いるかまでは把握していないと聞いております。区としましては、介護が必要な方々も含めまして、地域住民の声に耳を傾け、準備組合に対しては丁寧な対応を行うよう、引き続き指導してまいります。
続きまして、地域住民が住み続けられるまちづくりについてでありますが、先般の本会議にて区長が答弁したとおり、まちづくりの主体はそこに住む地域住民である。そのことが、まず、まちづくりの大前提であると考えております。その上で、昨年末、区長自らがまちづくりに関して、地域住民の方と対話し、その切実な声を直接お聞きする場を持ったところですが、今後もまちづくりの主体である地域住民の声にしっかりと耳を傾け、真摯に受け止めること。それを区政の基本スタンスとして、まちづくりに取り組んでまいります。
のだて委員
介護認定については、人数は答弁がありませんでしたけれども、80代の方、あるいは介護を受けている方がいらっしゃるというお話もありました。やはり、こうした高齢者を追い出すのが再開発です。今後も住民の声を聞くということですので、それならば、住民を追い出し、開発企業のもうけを生み出す再開発推進をやめるよう、強く要望して、私の質問を終わります。
